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sutero choice sound selection

Shigeo Maruyama / A Young Father's Song

368.jpg ヴォーカリスト丸山繁雄の81年の作品。
 さすがに全然知りませんでした。80年代の日本人ジャズヴォーカリストって方面からはチェックしようとも思っていなかったし(笑)。90年代後半に一部クラブ系でこのアルバム収録の「I Sing Samba」を回してたDJが居たらしく、そこからちょっとした話題になって再発というか初CD化が決まって今年の1月にリリースという運び。
 知ったのは正確には覚えていないのだけれど、いくつか取ってるレコ屋系のメルマガのどれかで紹介されてて試聴してみたのがきっかけ。アルバム最初の曲である「Spring Bargain-Introduction」を聴いて、超カッコエエじゃん、と。この曲がこれまた超ファンキースキャットサンバな具合で聴いててとっても心地良い。購入以来、すぐにiPod nanoに仕込んで既に定番ナンバーとなっておる位です。
 音は81年のといえど、とっても新鮮ですんごく好きなんであるが一点だけ、微妙な部分があるとすればそれはジャケ。70年代の四畳半フォークみたいなジャケは何とかならなかったのか、と(笑)。しかし、この2006年に眺めてみれば、これはこれで味があって渋いとも取れるのかも知れない。いや、取れないか。。。
 アルバム全体を通して聴くとジャズのヴォーカリストな作品というよりもブラジルやアフリカの影響も強いし、ビートルズのカヴァーもあったりと、ポップさも兼ね備えてたりもするのでジャンル云々じゃなくて、丸山繁雄のアルバム!ってのが一番いいのかもね。
 好きなのはさっきも書いた一番最初の試聴時からお気に入りの「Spring Bargain-Introduction」から次のタイトル曲である「A Young Fathers Song-For My Two Sons」の流れと、アフリカンなインプロヴィゼーションっぽいヴォーカルの凄みが効いてる「Malaika」かな。
 丸山繁雄というヴォーカリストをご存知の方には待望の初CD化であり、自分を含めた知らなかった人々にとっては80年代のここ日本にこんな素晴らしい作品があったのか!って嬉し泣きな1枚であるのは間違いなし。

Moacir Santos / Saudade

366.jpg ブラジル出身のサックスをはじめとするマルチプレーヤーでありコンポーザーやアレンジャーの奇才としても知られるモアシル=サントスがジャズの名門ブルーノートに残した2枚目の作品となる72年のこの「サウダージ」。
 ここ数年に渡って、ブルーノート作品が1500円という低価格で決定盤として次々とリリースされていましたが、1500番台や4000番台を始め、この「サウダージ」を含めたLAシリーズなど、数百タイトルがリリースされた中でその低価格からいくつか買い直したりもしてたんですが、このアルバムがこの決定盤シリーズで一番嬉しい買物だったかも。
 モアシル=サントス本人曰く、「アフロ・ブラジリアン・ソウル」って雰囲気たっぷりでありつつ、心地良いジャズテイストがたまらないアルバムとなっております。プレーヤーとしてはもちろんなのだけれど、アレンジが素晴らしい。とっても様々なタイプの楽曲がありつつも絶妙なバランスで1枚のアルバムとしてすごくまとまっているし、ホーンとエレピやピアノの絡みが壮大感で溢れ大人な雰囲気というか、とっても贅沢なサウンドなんである。
 歌モノや高音フワフワ系なフルートも満載でここのところの、アルバム通して聴く作品としては唯一と言っていい程のヘヴィーローテーションとなっております。
 定番な「Early Morning Love」と「A Saudade Matta A Gente」はもちろんイイのだけれど、個人的イチ押しな曲は「Kathy」。泣きのフルートにリズムの要的に裏でしっかり響いているコンガ、そしてスキャットというかハミングのような声のハーモニーにヤられてしまいます。
 何か、こういう作品ってこれまでも普通にリリースされてはいたけれど、ある種の知る人ぞ知るって感じになってたのが決定盤シリーズとして安価で誰でも入手しやすい状況になったというのはええことですわい。一応、限定盤って謳われていたりもするんで、是非明日にでもチェックしてみて下さいな。

The Jazz Messengers / At The Cafe Bohemia Vol.2

The Jazz Messengers / At The Cafe Bohemia Vol.2 久々にガツンと来る超定番的作品をご紹介しましょう。メッセンジャーズの55年録音の作品。ブルーノートNo.1508。
 いわゆる、カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズのVol.2ってやつです。まあ、タイトルまんまなのだけれど。。。ずっとメッセンジャーズと言うと、Art Blakey & The Jazz Messengersって呼ばれ方をしますが、元々はThe Jazz Messengersってだけで、全員、「ワシがリーダーじゃけーのぉー!」みたいなとっても我の強いメンツが鬼のような個性となってぶつかり合っていたグループなんですね、はい。
 ここのところずっとiTunesでばかり音を聴いていたので、たまにはアナログでジャズを聴こう、と手にしたのがこの作品と、同じくカフェ・ボヘミアのVol.1。で、普段ならこういう場合、多分素直に1から聴くところを何となく、「2だな。」ってこちらにしてみました。
 ライヴ録音らしく、曲紹介のMCから入るのをすっかり忘れていて、聴いた途端に思い出して、それだけで鳥肌もんですわい。久々のアナログでこの作品自体を聴くのも何年かぶりで、アナログ独特の音のウォーム感と演奏のエッジの効きまくった激しさが、「これだからジャズは止められんですわい。」と思ってしまい、久々に興奮しております。
 曲の構成的にはビバップ的な激しい感じと、バラード系の優しい感じが交互に現れ、バランス的にもイイ感じであります。とはいえ5曲しかないんですが。あ、iTMSで売ってるヤツは9曲入ってます。
 激しい系で好きなのはB面最初の「Avila And Tequila」。出だしから3分位続くブレーキーのドラムソロがすんごいです。このソロ聴くと、ブレーキーとメッセンジャーズって言われるのも納得だなぁ、と、感じたりもしますな。
 バラード系だと、「Like Someone In Love」。これは元々好きな曲でもあるし、このアルバムでの演奏はドゥーハムのペットが至極素晴らしいんであります。最近の人だと、これまた大好きでこのブログでも紹介している手のキレイな土岐麻子嬢も歌っております
 たまにはド定番なジャズをアナログで、しかも大音量で聴く。これもイイもんです。この後、せっかくだからVol.1も聴くとしよう。

Art Blakey: At the Cafe Bohemia, Vol. 2 (The Rudy Van Gelder Edition)

Asako Toki / Standards Gift

359.jpg 土岐麻子、今月9日リリースのジャズを歌うシリーズの第3段。
 当然のように発売日、いや、入荷日である8日の朝にはゲットしてずっと聴いておったのですが、これが昨日までどことなくしっくり来なくて、微妙な違和感を抱きながら聴いていたんであります。
 何が?かというと、全然ジャズな作品に聴こえなかった、と。超ポップスなアルバムじゃんか〜って、逆にそういう呪縛から抜け出せなかったという感じですかな。
 それで、これまでのジャズシリーズはもちろん、シンバルズ時代の作品も含めて、分析するようにここひと月近く聴いてみたりして考えてました。楽曲のバランスだったりアレンジだったりも凄く細かく、ああだこうだと自分なりに考えれば考える程、頭での結論はジャズな作品だなぁー、ということになるのだけれど、耳とカラダの感覚ではポップスだと。
 で、さっき、iPod nanoにてヘッドフォンで繰り返し聴くこと4回、「あ、ジャズじゃん」という感じにようやくなってくれたという訳です。。。ホントはジャズだろうとポップスだろうと、好きな音は好き、これでええんですが、好き故に徹底的に考え過ぎているというのもあったりで、この勝手に色々悩んでしまう程聴いて聴いて聴きまくる、という行為もオモロイということですわな。
 さて、このアルバムの説明というのをいつもなら展開していくのだけれど、iTMSで試聴出来るし、とっても良くダウンロードされてもいるみたいで、説明するより聴いてくれ!というのが本音ですな。
 あ、ジャズじゃない〜って感じてた大きな理由として、今回はリズムがやっぱり違うんですわい。アレンジが。微妙なロック感があるんです。それがこの第3弾の面白さでもあるんですね。
 今回、一番好きなのは中ジャケ(笑)。ドレッシーな格好をした彼女がダラーッと腰掛けている写真がグッときます。これはダウンロードではゲット出来ない、CDを買った者のみのお楽しみでもありますな。
 楽しみといえば、今週土曜に彼女のライヴ行きます。

Standards Gift - Asako Toki Singin' In Jazz - EP

V.A. / Blue Juice

353.gif ブルーノートの90年代半ばにシリーズ的にたくさんリリースされていた中の1つである、「Blue Juice」のご紹介。96年のリリース。
 今シリーズの中で一番有名なのはボッサテイスト全開な「Blue Brazil」だと思うけれど、この「Blue Juice」はジャズファンク的なグルーヴ全開なサウンドがライヴ音源も交えつつ集められた、とってもファンキーなコンピ。
 Vol.2Vol.3もリリースされていて、こういう感じのサウンドがブルーノート系にいかにたくさんあるのかって言うのを実感させてくれるシリーズであります。しかも、このシリーズに収録されてる曲で結構CD化されてないモノも多いんで、そういう意味でも貴重なシリーズとも言えるかも。
 CDとアナログ、両方で持ってて、随分と聴いていなかったのだけれど、今年の5月に神戸に行った際に立ち寄ったカフェにてこの中に収録されている、Benny Gordonによる超定番なファンキーナンバーである、「Tighten Up」が流れていたのを聴き、カッコエエのぉ〜と思いつつ、よく考えたらこのアルバム持ってたなぁーってことで、また聴き始めたという流れ。
 最近ではiPod nanoにも入れてたりして、シャッフルで聴いてると、こういうジャズファンクな感じというのは鬼のように新鮮に聴こえて来て、心も弾む気分になれたりして、面白かったりもする。
 アルバムとして、通して聴いてても懐かしさと新鮮さが交じり合う感じもあるし、さっきのようなシャッフルで聴くと驚きと高揚感が楽しめて、ブルーノートコンピ万歳な嬉しい微笑み感というか、そんな気分にさせてもらえるのがイイ。
 1曲あげるとするなら、やっぱりというか、高音フワフワグルーヴ系になってしまうのだけれど、Jerome Richardsonによる「No Problema」かな。フルートとエレビの大好きな高音が堪能出来て幸せになれます、ハイ。

Al Jarreau / Tenderness

352.jpg ヴォーカリスト、アル=ジャロウの94年にリリースされたスタジオライヴアルバム。
 一番最初に聴いた発売当初、凄く音がキレイなのになんで歓声が聴こえてくるのかいな!?って不思議に思った記憶がある。デッカいスタジオでレコーディングメンバーから関係者、友人、知人を招いてレコーディングした作品だったという訳です。
 プロデューサーがマーカス=ミラーということで、それだけれも安心出来る作品だって思われる方もいるとは思いますが、このアルバムの参加メンバーの豪華さといったらもう、70年代以降のフュージョン好きにはたまらないメンツが揃ってます。
 曲の方もジャズなスタンダード、ボッサの定番、ビートルズにエルトン=ジョンととっても幅広く収録されてて、それがライヴの臨場感で一体になった雰囲気もあって、とっても楽しい作品にもなってるのがイイ。
 まず好きなのはオープニングナンバーでありボッサな定番でもある「Mas Que Nada」。スピード感というか疾走感があって、コーラスと歌の掛けあいがいわゆるボッサな雰囲気とは全然違いつつも、しっかりボッサしているって具合はとても面白い。
 次はエルトン=ジョンの曲であり、超有名な「Your Song」。個人的にはエルトン=ジョン自体はほぼまともに聴いたことはなくて、それでもこの曲は知ってる、といった程度。しかし、ここでのこの曲はバラードらしいゆったり感があるのはもちろん、アルのヴォーカルアレンジ具合がとっても好き。
 もう一つ、ジャズの定番で、特にコルトレーンのやってるのが好きと前も書いたことのある、「My Favorite Things」。キャサリーン=バトルと一緒に歌ってるのですが、この2人の声のバランスが心地良くて、歌モノの「My Favorite Things」としては、今作のこの曲が一番良く聴いているし、大好きでもある。
 全体を通して聴くと、やっぱりアル=ジャロウの声がエエのぅ、って感じるのと、最初にも書いたスタジオライヴというレコーディング方法って面白くて楽しいなぁ、って感じですかな。

Louis Armstrong / What A Wonderful World

349.jpg トランペッターでありヴォーカリストなエンターティナー、サッチモことルイ=アームストロングの67年と68年に録音されたヴォーカル作品を集めたベスト的なアルバム。
 サッチモこの1枚と言えば、確実にこのアルバムでしょう、って位に定番で名盤な作品でもある。彼の黄金期というのは実は40年代で、今作が制作された60年代後半というのは、いわば晩年になる訳ではあるが、アルバムタイトルであり、CMなどでも使用された超有名曲の「Waht A Wonderful World」や「The Home Fire」なんかはこのアルバムのリリース時点で新曲だったりもする。
 オーケストラをバックに歌ったモノとスィングなスモールコンボをバックに歌ったモノがほぼ半分ずつ収録されていて、とっても豪華でキラキラした感じがありつつ、サッチモの艶のあるダミ声がとても心地良く耳に染み込んで来る。
 先程、このアルバムはサッチモ的には晩年だって記したけれど、事実、この録音時は彼は60代後半。でも、ノスタルジーに浸った感じの作品では全然なくて、イイ意味でゆとりがあって懐の広い声と音が優しい気持ちにしてくれる。
 30年代や40年代のヒット曲なナンバーはディキシーランドなスタイルの楽曲なのだけれど、モロにそういう雰囲気にはなってなくて、60年代後半に録音しているだけあって、とっても落ち着いて聴けてしまうのである。
 まあ、何だかんだ言ったところで、とにかくサッチモが素晴らしい!以外の何者でも無いというのが正確というか正直な部分だ。ジャズマンとして、トランペッターとして、ヴォーカリストとして、エンターティナーとして、とにかく凄いから、このアルバム位は聴いておいて損はないよ〜という作品。
 全曲3分前後という、昔の作品らしい尺の長さで、最近の楽曲に慣れてる方には物足りない部分もあるかも知れないけれど、この尺のほど良さもなかなか気持ちのいいものである。全部聴かなくとも、「Waht A Wonderful World」だけでも、というのでも全然構わないと思うし。クセになりますわい。

What a Wonderful World

Pete La Roca / Basra

343.jpg 久々のブルーノート、ドラマーであるピート=ラ=ロカの65年のリーダー作。ブルーノートNo.4205。
 ジャケの雰囲気から、通称「ブルーゼブラ」と個人的に勝手に命名しているアルバム。多分、誰もこんな呼び方してないと思うが。。。
 60年代に様々なコンボでプレイしてて、色んなアルバムにて彼のプレイを知ってる方もいるとは思うけれど、このリーダー作品は、ブルーノートでも人気盤ということになっているみたいだ。みたいだって表現を使ったのは、ジャズ好きにはよく知られているのは分かってるんだけど、実際、ちょっとだけジャズ好きって人にこのアルバムの話題を振っても?な表情をされたことしかないので(笑)。
 さて、音の方を。本日ここに書くにあたって、久々にアナログを取り出して聴いたんであるが、こんなに聴きやすかったっけ!?ってちょっとビックリした。10年位前にたまに聴いてた頃には、凄く激しいタイコ叩く人ですのぉ〜って思ってて、すぐにお腹一杯になっていたのに。今は割ときっちりリズムを刻んでますなぁ、と思ってしまった。ただ、ちょっと手数多過ぎない!?って思う部分もある。
 カルテットな演奏で、テナーサックスが大好きなジョー=ヘンダーソンなんであるが、オープニングナンバーである「Malaguena」のヘンダーソンのテナープレイはバリトンではないんかい!?ってな位、鬼のように図太くて嬉しいブロウが聴けます。キューバの作曲家の楽曲なので、ラテンっぽさもあり、それがまたテナーを強烈にさせている雰囲気もある。
 アルバムの半分がピート自身による曲で、きっちりモダンジャズなモノ、ちょいとエキゾチックなバラード、そして、タイトル曲である「Basra」はミステリアスな雰囲気を持ったアヴァンギャルドっぽい楽曲と、コンポーザーとしても幅広い音を繰り広げております。
 このピートさん、一時期ジャズマンから引退して弁護士やってた時代もあったそうです。最後に、トータルではジャケが好きですな。

Monday Michiru / Free Soul Collection

338.jpg SUBURBIA、橋本徹監修によるMonday満ちるの1994年から2001年までの作品からセレクトされた、フリーソウルテイストなコンピ。先月21日のリリース。
 最初店頭で目にした時、ジャケにデカデカと「free soul」の文字があって、Mondayのポートレートが写っているんで、Mondayセレクトのフリーソウルコンピかと思ってしまった。それなら凄く気になる!って思って手に取ると、文頭に書いた通りの一種のMondayベストな感じのアルバムで、彼女の作品はほぼ全て持ってるし、要らないかぁ〜って思ったのだけれど、全部持ってるからそこ欲しい!となったのでした。
 まあ、初期の作品は全てアナログでしか持ってないのもあったんで、ほど良い選曲で初期の作品がCDやMac、iPod系で聴けるのはいいじゃん、と思ったのもあったりもしますが。。。
 さてと、音の方なんですが、現在の彼女はアコースティックな楽器とのジャズっぽいテイストが多く、ここに収められた楽曲とは雰囲気が違う部分もあったりしますが、Monday初心者な方にはピッタリなアルバムではないかなぁと思います。タイトルのフリーソウルというのにとらわれることなく、心地良くゆったりと聴けてしまう約80分の世界が楽しめます。
 1曲目に「Lovin' You」のカヴァーがアコースティックライヴヴァージョンで持ってきてあるのはフリーソウルってのを狙い過ぎた感じもあるけど、抜群によろし!です。この中で好きというか、思い入れたっぷりなのは5曲目の「Sunshine After The Rain」ですかね。10年前の個人的なテーマ曲でした。一番有名なのはとってもハウスな「You Make Me」。結構聴いたことある方も多いはず。
 全体を通すと、改めてジャズ〜ラテンフレーバーに満ちた楽曲が多いことにも気付きます。だからこそ好きだってのもあるかな。でも、楽曲云々の違いに関係なく、Monday満ちるというアーティストが大好き!ってことです。とってもジャンル分けするのは難しいし、あんまりする気もないけれど、今回はJazzとしておきます。

Monday Michiru: Free Soul Collection

Miles Davis / Kind of Blue

334.jpg トランペットの巨人、マイルス=デイヴィスの名盤と言われまず聴くならコレ!とも言われている59年の作品。
 個人的にはマイルスは嫌いじゃないんだけど、なぜかそんなに聴いて来ていなかったりする。一通りのアルバムは一応聴いてはいるし分かるのだが、何かグッと来るものが無くて。。。それでも凄いアーティストだとはずっと思ってて、アルバムの所持率で言うとコルトレーンの次にたくさん持ってたりもする。
 それでも持つだけ持ってるといった感じでほとんど聴いてなかったのだけれども、ようやく自叙伝(1)(2)を読んだというのを機に聴くようになった。
 そんな流れで最初に紹介するのであればベタ過ぎるがやはり、の定番的「Kind of Blue」かなーと。まあ、本日よりこのブログのテンプレ変更をし、気分的にも青な感じでもあるので、そういう事も含めてこれです。
 改めて、まずメンバーを眺めてみれば、コルトレーンにエヴァンス、アダレイ、チェンバースと、好きなアーティストだらけなんですな、これが。もちろん知ってはいたけれど、こんだけ好きなメンツでよくもまあずっと聴かなかったなぁって方が不思議(笑)。
 というか、だね、この作品はこれによってモード奏法の誕生とする、ってな位の歴史的にも重要盤でそりゃすげぇぜ!なアルバムというのは昔からの定説ではあるが、何せ音が地味ですけーのぉー。だから、マイルス作品としては実はエレクトリック導入後とかの方が好きなんですね。
 そんな地味具合が、自叙伝を読了したせいなのか、年齢的にオッサンになっていってるせいなのか、夜中とかに聴いたりすると、とてつもなくしっくり来てしまうようになったんですわぃ。マイルスの言うところの、リズムキープさえきちんとしていれば、思いっきり自由に演奏出来る、っていうのもホント納得していまいました。
 オープニングナンバーの「So What」は大抵の人なら聴いたことある定番な曲であるし、真夜中の静寂の中でじっくり聴いてみていただきたい。好きなのはですね、「All Blues」。ピアノがクールでエエです。

Ornette Coleman / The Shape of Jazz to Come

332.jpg サックスプレーヤー、オーネット=コールマンのアトランティック第一弾となる、59年ハリウッド録音作品。
 まず、オーネットを語る場合に、それはそれは多彩なうんちくが用意され、生き方・理論・プレイ・その他諸々に至るまで、本が何冊か出版されてもおかしくないって人ではあるけれど、そんなことスッ飛ばしてとにかく好きなミュージシャンであります。
 彼の作品としては70年代のマイナー系を中心に結構な枚数持ってたりもするんですが、好きなミュージシャンとはいえ、よく聴いているのか!?と問われれば、ほとんど聴いてません(笑)。じゃあ何なんだ?ということになりますが、お答えしましょう。ホントに稀なことなんだけれど、突如として、「オーネット聴きたい!」って衝動に駆られる瞬間があるんですねー、これが。その衝動待ちの為のオーネットさんです。
 三度の飯よりオーネット!って方からすれば、そんな扱いダメじゃと、怒鳴られてしまう感じですが、やっぱりヘヴィーローテにはしんどい音です、正直。その位、神経を磨減らしてでも必死に聴いて浸るのがよろしと思っているからこそのオーネットさんなんですね。もっと言うなら嗜好な時、贅沢な時を過ごそう一緒に、なミュージシャン、という感じかな。
 さて、今作の音な感じですが、アルバムタイトルが邦題で「ジャズ来るべきもの」となってまして、59年にこの音は衝撃以外の何者でもなかっただろうなーって具合で。もちろん、現在でも初オーネットな方には確実に衝撃が走ると思われます。スピード感だったり、不協和音的な部分だったり、一瞬頭に「?」が浮かんで来そうなんだけど、実はえらく計算してある音でもあり、ピタッとハマるとそれはそれはツボになってしまいます。
 ジャケで彼が抱えてるサックスというのがプラステックで出来た安物のアルトサックスなんだけど、これでこのアルバムは吹き込まれてます。当時貧乏だったからしょうがなしにって意見と、あえて、このサックスの音が欲しかったからだろうって意見もあったりするみたいです。
 好きなのはタイトル通りの平和な不協和音が個人的には心地よい「Peace」かな。オーネットとドン=チェリーのゆったりとしつつも絶妙に緊張感のあるソロの駆け引きがゾクゾクします。

Lee Morgan / Vol.3

331.jpg トランペッター、リー=モーガンのブルーノート3枚目のリーダー作となる57年の作品。ブルーノートNo.1557。
 ペット吹きとしてまず思い浮かぶ名前であるし、大好きな人。そのパッシブなプレイが特にお気に入りではあるけれど、そういう面からするとこのアルバムのプレイは地味というかあまりに堅実でキッチリし過ぎてる感はある。でも、よーく聴くとやっぱりモーガンじゃのぉーって部分は随所にあって、好きな作品でもある。
 何だかんだで一番のお気に入りはジャケだったりもするんだけどね(笑)。写真のバランスと黄色さが好きなのであった。とってもブルーノートらしい雰囲気でもあるしね。
 さて、細かい楽曲については全て今作でテナーをプレイしているベニー=ゴルソンの曲となってます。だからって、実質ゴルソンのリーダー作的な作りなんかでは決してなくて、モーガンがリーダーだからこそのアレンジになってるというか、ペットが際立つ演奏になっております。
 このアルバムでいつでもどこでも注目されてるのは「I Remember Clifford」っていうクリフォード=ブラウンへの追悼的な曲なんだけれど、確かに、この曲は今ではバラードのスタンダード的ナンバーになっているのと、この作品での演奏が初という面で、そして素晴らしい演奏だってはよくわかるんだけど、このアルバムはこの曲でオッケー!みたいなのはちょっと違うと思う。
 まあ、自分の中でのモーガンのプレイ像とちょっと違ってるというか、この曲自体がとてもゆったりとしたバラードで、しっとり聴かせる系ナンバーだからってのもあり、地味過ぎます。。。もちろん、名曲の部類に入るのは間違いないと思っていつつも、です。
 じゃあ、どの曲がエエんかいのぉ〜って聞かれれば、このアルバムは作曲者が全て同じということで、アルバムとしてのバランスがとってもイイ!って言っておくのと、1曲あげろという観点では最初の「Hasaan's Dream」が特に好きかな。ジジ=クライスのフルートとモーガンのペットの絡み具合がツボ。あと、チェンバースのゆったりしつつも起伏のあるベースラインもイイ。

Dave Brubeck / Time Out

330.jpg ピアニスト、デイヴ=ブルーベックの59年のカルテット作品。定番で名盤。
 言うまでも無く、「Take Five」の入ったアルバムとして有名でございます。5拍子でジャズなんて、その言葉だけ聞くと、今でもまさか〜って思ってしまったりもするけれど、紛れも無くジャズなんですな、これが。と、当たり前な表現をしてみた所で、このアルバムはこの「Take Five」に限らず、変拍子満載の作品と言っていいと思います。
 個人的にはキレイ、スタイリッシュ、クール、白い、東海岸、こういうキーワードで連想するのがこのアルバム。ジャズ的なラインで好きなのがこの真逆な感じの黒い、濃い、エネルギッシュ、魂、みたいな方面が多く、このアルバムは好きは好きだし、いい曲たくさん入ってるとは思うんだけれど、いつでも聴けるわ〜って思ってたりしたのもあって、実は本日ようやく購入したのでありました。とはいえ、昔から聴いてはいたんだけどね。
 さて、最初に書いたように、「Take Five」ばかり注目されてしまいますが、好きなのは「Blue Round A La Turk」かな。こっちのリズムの方が面白いし、ポール=デスモンドのサックスもこの曲がイイ。というか、このアルバムはポール=デスモンド抜きには語れない程、彼の貢献度は高く、このアルトの音無しでは到底成立しないサウンドであることは間違いない。「Take Five」もデスモンド作曲だしね。
 まあ、色々語ってしまうよりも聴くのが一番であることには変わりません。白人の生み出した、とってもクールなジャズアルバムとして、ハズシの無いとってもオススメできる作品となっております。ようやく購入して、ホント何年かぶりにアルバム通して聴いたんだけど、気持ち良いし、落ち着いた気分になれます。

Hugh Masekela / Reconstruction

329.jpg 南アフリカ出身のトランペッター、ヒュー=マセケラ、70年の作品。モータウン傘下のチセ・レーベルからのリリース。
 来週からブルーノート東京でライヴがあるというのを知り、しかもメインというか、リーダーとしては国内初公演ということでビックリしていたのもあって、久々に聴いてみることとした。
 このアルバムともう一枚、チセからリリースされた2作品がとにかく大好き。94年には日本盤もリリースされていたけれど、現在は廃盤だし、きっと入手困難なんだと思う。アメリカでは結構メジャーなアーティストとして現在も活動を続けてて、日本にも微妙に好きな人いるとは思うんだけど、彼のリーダー作というのはどうしたことか、手に入れにくいのが現実なんですね〜。逆に中古のアナログの方が特価的に売られているんだと思う。
 彼の音というか、楽曲というのは、ジャズであるのはもちろんのこと、出身であるアフリカっぽさ、そしてアメリカではフュージョンの代表選手って認知のされ方からも分かるようなフュージョン具合に、独特のグルーヴ感を物凄く感じるアーティストであります。
 このアルバムに関しては、モータウン傘下というレーベル柄もあって、ソウルフルでもある。ジョー=サンプルをはじめとして、クルセイダーズメンバーの参加からもおわかりかと。1曲目はシュープリームスのヒットナンバーのカヴァーが収録されてたりするのもそう。
 トランペッターなのだけれど、個人的には彼はヴォーカリストだ!って凄く思っております。節回しはアフリカンなんだなーって思えます。とにかく超好きな雰囲気の声をしておられます。
 この1曲!というか、一番思い入れのある曲はというと「I can't Dance」。鬼のグルーヴ感が強烈にダンサブルでよく回しておりました。もちろん彼のヴォーカル入りです。この曲だけでもダウンロード販売とかで手軽に聴ける状況できれば嬉しいのぉー。

John Coltrane / John Coltrane And Johnny Hartman

314.jpg ジョン=コルトレーン、ジョニー=ハートマンと共演のヴォーカルアルバム。63年、インパルス作品。
 インパルスでの吹き込みの中で趣の違う「バラード」、「&エリントン」そしてこの作品の3つがあるけれど、その中でも群を抜いて一番好きなアルバムだ。
 この3作品はコルトレーンの本意ではなく制作されたということは昔から知っていたけれど、今回もう一度よく調べてみると、サックスのマウスピースの具合が悪く、落ち込んでいたコルトレーンにプロデューサーの提案で、これまでとは違った作品を制作しようという流れだったみたい。後にコルトレーン本人も聴き返してみて、録ってよかったとコメントもしていた。
 さて、そんな経緯もありつつ、この大好きなアルバムでありますが、とにかくカッコイイのと優しさ一杯であります。嬉し泣きを通り越した、嬉し過ぎて号泣!ってなぐらいに素晴らしい作品。
 サックスはもちろん優しくてキレイなのだけれど、ハートマンの声がこれまた、主張し過ぎてなくてスタンダードナンバーの数々をサラッと歌っている雰囲気がまたイイ。声質も低音なのにツヤがあるというか、とにかくとっても心地よくそしてしっかり響く歌声であります。
 このアルバムばかりは好きな曲はこれ!というのは決めるまでもなく、全部好きだし、通して聴いていたい作品。
 普通、ジャズのアルバムに限らず、大抵の場合、レコーディングでは何テイクも録ってその中からベストテイクをアルバムに収めるってことをするのが当たり前で、その為に近年再発されてる色んなアルバムにはボーナストラック的にボツになってたテイクが収録されてたりするのだけれど、このアルバムに限っては全曲ワンテイクずつしか録ってない。それでこの出来とは凄過ぎる。ホント何度も言いますが、素晴らしいです。

John Coltrane and Johnny Hartman

Clifford Brown / Study In Brown

308.jpg トランペッター、クリフォード=ブラウンの55年の作品。言うまでもく名盤であり定番なアルバム。
 とっても好きなペット吹きさんです。音が元気がいいというか歯切れが良いというか、ハッキリした印象をのこしつつもとってもメロディアスなフレーズも得意というのが好きなのかな。
 さて、このアルバムではやはり最初の曲である「チェロキー」が思いっきり好きですな。スピード感とうねりがイイ。ブラウニーなペットはもちろんなのだけれど、ジョージ=モロウのマシンガンなベースラインにヤられます。
 この作品、一応ブラウニーのリーダー作ってことになっているのだけれど、正確にはクリフォード=ブラウンとマックス=ローチの五重奏団ということで、マックス=ローチの存在も忘れてはいけません、というかとってもデカいんですな。ローチの堅実でありながらアドリブに富んだそのプレイはどんなコンボでも目立つというか、ローチだ!って分かるのだけれど、ブラウニーとのコンビネーションは久々に聴いてみたけれど、やっぱり気持ちイイし渋い。
 アルバム全体通して聴くと、心地よくもテンポのいい曲が目立つし、ラストでこれまた定番の「A列車で行こう」なんかもとってもアグレッシブな感じさえするのだけれど、ちょうど中盤あたりにある「George's Dilemma」はちょっとアフロキューバンなリズムが入ってたりして、ムーディーで渋く、これまたクセになる雰囲気を持ちつつなお気に入りのナンバーだったりもする。

John Coltrane / My Favorite Things

299.jpg サックス奏者、ジョン=コルトレーンの1960年の作品。
 コルトレーン作品として、現在も「Ballads」と並びよく売れている盤であるし、言うまでもない名盤。付け加えるならば、大好きだ、ということ。
 数年前まではアナログしか持っていないにもかかわらず、鬼のように激聴盤となっていたので、盤自体がボロボロになりかけていた位で、それは友人に譲ってしまい、現在はこれまた数年前に新品のアナログを入手したので、そちらをたまに聴く感じ。
 特に意識してはいないのだけれど、この作品を聴く時は何となく初心に帰るというか、シンプルな気分になりたい時に取り出して聴いているという気がする。コルトレーン作品の中で一番スーッと入ってきて鳴り響いてくれる感じがとっても好きなのだと思う。キレイさもピカイチだし。
 アルバムタイトルでもある「My Favorite Things」はこれまた言うまでも無くミュージカルのド級の有名ナンバーであるけれど、その本家のナンバーを凌ぐ程素晴らしい出来だと思うし、「My Favorite Things」と聞けばコルトレーンのこのアルバムのヴァージョンしか浮かばない位に好きだ。もちろん、ソプラノサックスで演奏されているというのも含め。コルトレーン自身もたぶんお気に入りだったと思われ、ライブヴァージョンも多数存在するし、長い演奏だと、「Live In Japan」の九段会館での演奏なんて、この1曲で60分以上あるし。
 しかし、13分44秒のこのアルバムに入ってる「My Favorite Things」が好き。よく聴くのでCDも欲しかったり、iPodとかにも入れておこうとも思うけれど、このアルバムは思いっきりアナログで聴いていたい音と雰囲気を持っている。
John Coltrane - My Favorite Things

John Patton / Let 'em Roll

295.jpg オルガンプレーヤー、ジョン=パットンの65年の作品。ブルーノートNo.4239。音的にもジャケ的にもパットンの作品で1番好きなアルバム。
 カルテット編成なのだけれど、ベースレスのオルガン、ギター、ヴィブラフォン、ドラムという構成で、ギターはグラント=グリーンだし、ヴィブラフォンはボビー=ハッチャーソンという、好きなメンツで構成されているから、尚更好きというのもある。
 最近、ブルーノートばかり紹介していますが、これはレコード棚の同じ一角にあったんではなくて、ちょっと別の棚のブルーノートも聴いてみようと、色んな場所を眺めていたところに、飛び込んできたアルバム。偶然にも前回紹介した「Lou Donaldson / Mr. Shing-A-Ling」と同じくスタンダードの「The Shadow Of Your Smile」が収録されていて、聴き比べたりもしてみたのだけれど、これがまた面白い。こちらはモロにオルガンジャズな雰囲気プラス、ヴィブラフォンがとてつもなく効果的にサイドで鳴ってて心地よさ倍増な音です。
 ジャズにしてもその他いろんなサウンドを聴く時にリズム隊をメインにして聴くタイプだってことはこのブログでも何度も言っているのだけれど、このベースレスな作品について、「ドラムだけでどうなの!?」って思う方もいらっしゃるかもしれないんで、一応触れておくと、ベースレスだけれども、ベースラインはきちんとあるんです。何で鳴らしてるかというと、オルガンジャズ好きな人には当たり前なことですが、そう、オルガンのペダル部分がベースラインを奏でてます。
 パットンさんは両手足4本を巧みに使いこなして演奏しておるということです。とにかく、オルガンジャズ作品としてもかなり好きな作品です。

Let 'Em Roll

Lou Donaldson / Mr. Shing-A-Ling

294.jpg アルトサックス奏者、ルー=ドナルドソンの67年録音作品。ブルーノートNo.4271。
 つい先日も1500番台の彼の作品を紹介したばかりではあるけれど、ここのところ、レコード棚の60年代後半から70年代前半にかけてのブルーノート作品が固まってある一角からばかり聴いていたりするので、最近もブルーノートばかり紹介したりということになってます。
 この作品は彼の代表作である、「アリゲーター・ブーガルー」のちょうど半年後に録音されてて、メンバーも大体一緒で、サウンド的にも続編のような感じ。こっちの方がちょっと上品な感じがあるかなーって具合かな。
 ルー=ドナのサックスはもちろんなのだけれど、ロニー=スミスのオルガンが「アリゲーター・ブーガルー」と同じくとっても印象的な作品。スタンダードナンバーである「The Shadow Of Your Smile」も収録されているのだけれど、ビートがちょっぴりボッサ調でこれまたなかなかよろし。
 4000番台黄金期と言われる4200番台までのギリギリラインの作品だけれど、ここ数日で紹介している、それ以降の作品と比べると明らかにジャズしているなぁと感じとれます。個人的には68年という年がジャズにしてもロックやソウル、もっというとアメリカの歴史的に変革期の頂点で、それ以前と以後では様々な意味で音が違うって思うのだけれど、そういう視点から見ても、健全なジャズという感じさえする(笑)。まあ、68年が変革の年とはいえ、それ以前にも以後にも、それぞれ好きであり、もちろん素晴らしい作品はたくさんある。でも、この年をポイントにアメリカ現代史を読み取りながら音を聴くというのもなかなか面白いことである。

Jimmy McGriff / Electric Funk

293.jpg オルガンプレーヤー、ジミー=マクグリフの69年の作品。ブルーノートNo.4350。
 前回紹介したバードのアルバム同様にブルーノートの末期というか、低迷な時代の作品。かろうじて4000番台ですが、このジャケの雰囲気といい、メンバーもunknownがあったりと、かなり大ざっぱなリリースだったことが想像される1枚。しかし、こういうジャケもまた好きですが(笑)。
 さて、この作品、オルガンジャズとして聴くにはリズムもアレンジも全然そういう感じがしないし、実際、ジャズファンには不評な作品であったりもする。しかし、この作品の良さはタイトル通りファンクなんだーって聴いてもらうと実感できると、個人的には思う。
 全体の雰囲気としては70年代の日本の刑事・探偵モノなドラマでよくかかってそうなサウンド。インストだけど、歌が乗るとするなら、デビューしたてな頃の和田アキ子がこの音をバックに歌ってても全然違和感が無さそう、って感じでもある。
 要はこの頃のブルーノート作品の大抵のモノに言えることでもあるのだけれど、低迷しているジャズシーンから、よりマスな方面へ向けて、少しでもセールスを上げる為にロックやファンク、ソウルやフュージョンなど、何でもアリなサウンドにしてとにかく録って売ってしまえ!的な部分がかなりあるのは否めない。しかし、その何でもアリってごった煮感がとっても面白いサウンドを生んでたりもするし、特に70年代初期〜中期のソウルはこんな感じの延長のラインが一部あったりするんで、やっぱり腐ってもブルーノートだとも思ったり。
 好きなのはこの作品唯一の自分達以外の曲であり、今となってはある意味定番な「Spinning Wheel」。久々に聴いたけど、カラダは覚えてました。

Electric Funk

Donald Byrd / Street Lady

292.jpg トランペッター、ドナルド=バードの73年の作品。
 ブルーノート作品です。しかし、年代からもわかるように、70年代になってジャズ自体が益々低迷していく中、当然のようにブルーノートもそういう流れの真っ只中にいた訳で、この当時は「そんな作品あったの?」程度な扱いだったりするんですなぁ。しかし、だからこそ、こういうジャズともフュージョンともソウルとも言えるようなユニークな作品が生み出されたのだろうなぁ、とも思えたりする。
 この作品はバードの弟子というか教え子でもあったLarryとFonceのMizell兄弟による制作で、モータウンでも活躍した彼らが絡んでいるからこその、とってもグルーヴィーなサウンドが堪能できる作品であります。
 思いっきり注目され始めたのは90年代になってからのことで、クラブでのレア・グルーヴなブームの中の代表曲的な「Lansana's Priestess」が入っております。国内盤はMuro監修ってことでリリースもされてましたな。最近ではこの「Lansana's Priestess」はここでも紹介したブルーノートなコンピ「Blue Note Revisited」にも入ってますね。
 ホント久々にアナログを聴いてみたのだけれど、色んなテイストが詰め込まれてて、面白いアルバムです。久々で全体の雰囲気を忘れていたのだけれど、いい意味で思いっきり裏切ってくれました。飛び道具のように、オモチャ箱のようにこれでもか!って具合に色んな音色とリズムが飛び込んで来ます。しかし、バードのペットはバード!ってモロな感じで嬉しくもなれて。

Marco Di Marco / At the Living Room

291.jpg イタリアのピアニスト、マルコ=ジ=マルコのトリオによる73年のパリでの録音作品。
 つい先日、試聴機ツアーを試みた時に偶然聴いたのがきっかけで購入。なんと言っても1曲目の「I Miei Ricordi」が大好きなエレピで奏でられていて、この曲だけで買ったようなもんです。イントロはベースがとってもカッコよく、伴奏なエレピが「ストールン・モメンツ」を連想させてくれるのもデカい。
 で、エレピばっかりな音となっているのかと思って楽しみに買って帰ったのではあるけれど、2曲目以降は全面ピアノであった。実はちょっとガッカリもしたのだけれど、よくよく聴いていくうちに、ピアノはピアノで素晴らしいし、ハードな曲からバラードまで、とっても美しい音色が詰まった全8曲だなぁ、と。
 大体、そのハードめな曲とバラードっぽいしっとり系の曲が交互にある感じでバランスもとってもイイ。ピアノの方で好きな曲は「Valse」かな。しっとりしていながら、淡々と地味な曲なようでありつつ、ピアノのアドリブ的なメロディがとっても気持ちいい。これに大きく関わってるのが、ベースライン。結構な部分でかなりの高音なベースが展開されていて、ウッドベースの高音というのがまたたまらなく心地よいのである。曲として、ちょっと短いのが残念な位もっと聴いていたいナンバーだ。
 やはり、最初のエレピの印象がとてつもなく強いけれど、ピアノトリオの作品として、ゆったり、そして長い間聴いていられそうな作品。ホント気持ちイイですよ。

Thelonious Monk / Solo Monk

290.jpg ピアニストであり、作曲家でもあるジャズマン、セロニアス=モンクの64年から66年にかけてレコーディングされた、アルバムタイトル通りのソロ作品。
 このソロ、アルバムとしてはそんなに評価された作品ではなかったと思うんだけれど、個人的にはとっても好きなモンクの1枚、と言っていいと思う。まず、モンクのスタイルとして、他の楽器と全くぶつかることのないソロというのは一番合っているのではないか、と。もちろん色んなコンボでの傑作とも言える演奏も多々あるけれど、やっぱりソロだ。
 メロディの難解さというか、リズムの不規則性とか、色々とモンク独特の奏法として、確立されてはいるのだけれど、ソロでじっくり聴くと、ホント単純な音の組み合わせでいたってシンプルだなって思う。しかし、その組み合わせ方こそがモンクのそれ、独特さを生んでいるのも確かなんだけれど。そこがとてつもなく聴いてて気持ちがイイんである。
 元々、ディキシーランドやラグタイム系の20年代頃の音が好きというのもあるんで、モンクのスタイルにはそういう部分が多々見受けられるからより惹きつけられているような気もする。
 ちょっと聴いてると、自分でも弾けそうな気にもなってしまうから面白い。そんな簡単に弾けてしまう訳は絶対ないのだけれど・・・。軽快なテンポの曲からしっとりバラード系まで、どれをとってもやっぱりモンクなテイストで溢れているこのソロ、夜中にしっとり聴くには最適でございます。そして、ますますモンク好きになっていくのであった。

Lou Donaldson / Quartet,Quintet,Sextet

286.gif アルトサックス奏者、ルー=ドナルドソンの52&54年録音の一応最初のリーダー作。ブルーノートNo.1537。
 この作品、最初のリリースは5000番台シリーズの10インチ2種だったそうで、それをセレクトして1枚にまとめたものだそうで、詳しくはよく知らないんですが・・・。
 さて、ここのところ、ジャズ系のアナログでずっと前から持っていながら、全然もしくはかなり長い間聴いてない作品を夜中にゆったりと読書でもしながら聴くというのにハマっていて、このアルバムもそういう流れで久々に聴いてみている1枚。
 ルー=ドナといえば、やっぱり「アリゲーター・ブーガルー」とか、60年代後半のソウルフル系のジャズなイメージがあるのだけれど、このアルバムの頃のとってもバップでファンキーなのも悪くないというか、今思えば、こっちの初期の頃の方がカッコイイ。ライナーによると、チャーリー=パーカー直系ということなのだが、まさにバードのアルバムを聴いているかのように、跳ねるサックスが堪能出来る1枚である。
 そういえば、94年のマウント・フジ・ジャズ・フェスティバルでの演奏を観たのを思い出した。やってたのは「アリゲーター・ブーガルー」の方だったんだけど(笑)。とにかく、アルトはそんな好きではないのだけれど、彼の演奏は大好きなのであった。
 最後に、この一瞬適当に見えるジャケのイラストもイイ。

Dexter Gordon / Go

284.gif テナーサックス奏者、デクスター=ゴードンの自らも傑作だと言っていた62年の作品。ブルーノートNo.4112。
 デックスのテナープレイというのはとにかくキッチリ吹くし上手い、そういう印象が強くて結構作品としては持っているものの、そんな聴いてはいなかったのであった。やはりコルトレーンとか好きなのもあって、堅実過ぎるのはつまらん!みたいに考えてしまいがちだったので・・・。
 さて、そんなイメージのまま月日は流れ、久々に聴いてみようではないか、と、ターンテーブルに載せてみた。やっぱり堅実である。しかし、悪くはない。というかイイじゃんこれ、と思えた。元々名盤であるし、悪い訳はないのだけれど、堅実過ぎるというイメージも渋くて上手いということであったのだなぁ、と。
 このアルバムはデックスとソニー=クラークのトリオがやってるワンホーンな仕様で、やっぱりソニー=クラーク・トリオが素晴らしいというのもかなりある。ピアノソロはとっても嬉し泣きな感じだし。
 好きなのはB面側ですな。ボッサ調の「Love For Sale」、エロいくらいにムーディーな「Where Are You」、ピアノなチャイムで始まりほのぼのとした「Three O'clock In The Morning」というこの流れは心地よろし。
 ド定番的作品などを含め、ジャズって音は聴く側の時期やタイミングによってもホント様々な聞こえ方をしてくるものだなぁーってますます楽しくなれたのであった。

Go!

Ahmad Jamal / The Awakening

283.jpg ピアニスト、アーマッド=ジャマルの70年インパルスからのトリオ作品。
 とっても地味でありつつも美しいピアノを弾く人だなぁーって印象で、このインパルス盤はジャケとレーベルからフリーっぽいんだろうと、これまでずっと持ってたのにもかかわらず、聴いたことが無かった作品。先程初めて新品のアナログのパッケージを破り聴いてみたところ、抜群に嬉し泣きな作品ではないか!とビックリしつつも心地よく聴いておりました。
 オリジナルにスタンダード、ハンコックの「Dolphin Dance」、オリヴァー=ネルソンの名曲「Stolen Moments」、そしてジョビンの「Wave」とヴァラエティに富んだ楽曲をジャマル独特の絶妙な間によって美しい調べへと誘ってくれております。
 トリオ作品で当然のようにピアノがメインだし、楽器も3つだけなのであるが、音的にとても美しく心地よいのと同時にとってもポップなアルバムでもある。リズム隊はとてつもなく堅実にビートを刻み続ける感じなのであるが、それがジャマルのプレイをよりアグレッシブにしているんだなぁーって思える。
 お気に入りとなったのはタイトルが好きで、プレイ的にも一番美しく感じられた「I Love Music」、そして上にも書いたオリヴァーの曲であり、オリジナルのホーンの絡んだ重厚感とはまた一味違った重みを聴かせてくれる「Stolen Moments」かな。
 これまで聴いてなかったのがウソのように、いきなりピアノトリオ作品としてフェイバリットなモノに急浮上して来る程に素晴らしいアルバムでございます。

The Awakening (Impulse Master Sessions)

Lonnie Smith / Live at Club Mozambique

280.jpg オルガンプレーヤー、ロニー=スミスの70年のデトロイトはクラブ・モザンビークでのライヴ、ブルーノート作品。
 95年に初めてリリースされたもので、この時同時に何枚か70年代のレア・グルーヴ系作品でお蔵入りしてたものがザッとリリースされたのでビックリというか、嬉しかったのを覚えている。
 さて、音であるが、限りなく上品なファンキーさのある、スラーッとウキウキ出来る感じだと思うのだけれど、この表現でご理解頂けるだろうか!?とにかく極上のスピーディーファンク作品であるのは間違いない。
 この作品で好きなのは音ばかりではなく、ジャケもである。真っ黒なバックにキレイに浮かび上がっているロニー=スミス。この構図がハッと目を引くし、臨場感もある。しかし、こういう手法はブルーノートの流れではやはりちょっと違う。そこら辺は95年初リリースというのが大いに関係してるからだろうけれど、とにかく経緯がどうであれ好きなジャケだ。アナログなんで特に大きくてイイし。
 オルガンジャズ好きな人で聴いたことない方がいれば、是非聴いてみて頂きたい、アンダーグランドな名盤。特に好きなのはアルバムの中でも特にスピーディーな展開溢れる「Expressions」。オルガンはもちろんだけれど、ベースラインの速さが尋常じゃない。メタラーもビックリなラインをしております。プラス、ギターのジョージ=ベンソンとのアドリブの駆け引きがイイ感じ。ここでも以前紹介したアルバムと同じ感じでベンソンのスピード感溢れる奏法も堪能出来ます。

Sun Ra / Space Is the Place

279.jpg サン=ラ、72年の作品。アルバムタイトルでもある「Space Is The Place」は名曲であるし、言うことない!ってナンバーだ。
 さて、このブログを移転するにあたって、徹夜で色々やってたのだけれど、その間iTunesをかけっぱなしにしてて、ちょっとウトウト気味になった今朝方、スピーカーからこのアルバムが流れ始めたのであった。日の出と共に朝からサン=ラって(笑)。
 このアルバムは彼の作品の中でも比較的聴いているモノなんだけれど、今朝ほど心地よく聴けたことは無かった。睡魔と変態ジャズの融合とでも言いましょうか!?とにかく、普段はこのタイトルナンバーにしても20分を超える大作で、途中からお腹一杯な感じになってしまうのだけれど、今日ばっかりは、もう終わってしまうの?という、たまらなく覚醒出来た。
 フリー系だとかインプロヴィゼーション系の、ほとんどの人にとっては雑音のような音もこんな感じである種の極限状態では思いっきりハマるものである。まあ、元々フリー系好きだからもっともではあるけれど。
 しかし、彼の作品の中にはとんでもない感じのさっきも書いた変態ジャズモノがメインなのだけれど、たまーにディキシーランドっぽいのとか、ラグタイム、スィングを感じさせてくれる、古き良きみたいなスタンダードっぽい作品で、普通にとってもキレイなピアノを聴かせてくれるアルバムもあったりで、そっちも実は良く聴くし大好きだったりする。こういう幅の広さが魅力な人でもある。

Space Is the Place (Impulse Master Sessions)

Torun Eriksen / Glittercard

 ノルウェーのシンガー、Torun Eriksenによる2003年の1stアルバム。名前の読みが分かりません(笑)。JazzLandレーベルより。
 JazzLandといえば、フューチャージャズ系の作品が有名ですが、彼女の作品は全然知りませんでした。まあ、最近はこういう方面の音チェックは全然だったのもあるし・・・。
 知ったのは最近よく聴いているネットラジオのRadio42から流れて来るのを聴いて。このアルバムの4曲目に収録されている「Fever Skin」がその曲。仕事しながらサラーッと聴いてたんだけど、思わず動きを止めて必死に曲名チェックをしてました。
 さっき書いたレーベルカラー的な音ではなくて、しんみりじっくり聴きたくなる作品でございます。ジャジーなポップスって感じかな。声も好きなラインのちょっぴり低音の効いたハスキー系で、「大人じゃのぉ〜」的心地よさが漂っております。
 アルバムを一通りザッと聴いて、全体的に好きなんだけれど、あえてこれから聴こうかなーという人の為に一言とすれば、盛り上がり感みたいなのは無いです。淡々と歌われているという部分もありますな、正直。
 しかし、この波の無さが夜中に聴いてると、ジワジワ体内まで染み込んでいい気分になれます。やっぱり最初に聴いて必死にメモった「Fever Skin」が大好き。

Jamie Cullum / Twenty Something

 ピアニストであり、ヴォーカリストのジェイミー=カラム、2004年のメジャー1stとなる通算3枚目のアルバム。
 昨年からUKで、そして今年の頭には日本でも結構ジャズシーンでは騒がれていたらしいけれど、さっぱりノーマークでした。ジャケだけはかろうじて知ってたのだが。
 先日、テレビでこのアルバムの曲が流れて来たのを聴いて、震えてしまい、ちょっとでも知ってただけにノーマークだったのが残念でしょうがなかったけれど、焦らずについ最近購入。
 まだ24か5歳ということで、音に年齢関係無いとはいえ、凄い兄ちゃんじゃのー、と思いつつ、すっかりフェイバリットでございます。
 ジャズ界のベン=フォールズなどとレコ屋のコメントやライナーにも載ってたけれど、確かに弾ける感じはあるし、ジミヘンやレディオヘッドの曲とかもサラッとジャジーにカヴァーしてしまってる部分も凄い。
 しかし、このアルバムで一番好きであり、震えまくったのは1曲目に収録されている、スタンダードナンバーの「What A Difference A Day Made」、邦題で「緑は異なもの」である。しっとりと極上のモダンナンバーとして今まで聴いたどの「緑は異なもの」よりも素晴らしい演奏なんである。
 15歳の頃から好きでライヴハウスに通い、ステージに上がってたという彼の、その現場で培ってきたというか、好きだからこそ楽しく音楽やってます、っていうのが素直に音に出てて、クラシックなんかの小さい頃から英才教育みたいなモノとは対極な感じのどちらかというとロックに近い雰囲気を持ってる所も好きなのだと思う。
 とにかく、今後はしっかり注目していきましょう、という次第です。
Twentysomething (Special Edition)

Asako Toki / Standards On The Sofa

 思いっきりお久しぶりの、再開第一段として紹介するのは、前作も紹介した土岐麻子のジャズを歌うシリーズ第2段。先月のリリース。
 ずっと耳の調子が悪く、音チェックなんてホント全然してなかったものだから、この作品も出るらしいって時点まで知ってたけれど、出てたということは今日知ったのでありました。
 で、今回はプロデュースをサックスプレーヤーであり、彼女の実父である土岐英史と一緒に親子でやってらっしゃる所がまたニクい。もちろん、前作もそうだったけれど「娘を想うオヤジサックス」が心地よくブロウしてます。
 タイトル通りのスタンダードナンバーばかりではなく、今回はスティーヴィー=ワンダー、マイケル=ジャクソン、ローリング・ストーンズのカヴァーまでやってます。
 楽曲のこと抜きにして、声だけ聴いていると、以前にも増して自信を深めたゆったり感がとっても心地よく、嬉しくなれる音である。
 ざっと何度か聴いてみて、特に好きだなぁーってのは、さっきも書いたスティーヴィー=ワンダーのカヴァーである「Another Star」。ちょいボッサ調でありつつ、しんみりと寒い季節にはピッタリなアレンジにうれし泣き。
 まあ、さすが親子作品というか、アルバムとしての構成も上手いというより、聴いててスムーズにもっと聴かせて!って言いたくなる感じがあって、これまた年末に向けてヘヴィーローテーション確実な1枚であります。
Standards On the Sofa 〜Asako Toki Singin' Jazz〜

Zoot Sims / New Beat Bossa Nova Vol.1&2

 テナーサックス奏者、ズート=シムズの62年Vol.1とVol.2をまとめた2in1な作品。
 ズートに関して、個人的にはさほど興味はないのだが、演奏も色んなミュージシャンとの競演も含めて上手いなぁという印象がある。
 このコルピックス盤は初CD化だそうで、どうりで知らないということだ。先月末のリリースで、レコ屋のニューリリースの棚に並んでて、「Bossa」ってのと「Zoot」って書いてあるジャケを見て「何これ!?」と思い、曲を見てみると「Regado Bossa Nova」やってるじゃん!って感じで購入してみた。その「Regado Bossa Nova」も2ヴァージョンもやってて、なかなか面白い演奏。
 寺島靖国コレクションってシリーズのCDとしてリリースされてるのだけれど、ライナーの中、そして帯にも「遂に世に出した。やっと光を当てた。」とある位にこれまでは日陰なアルバムだったのだろう。まあ、コルピックスってレーベル自体が地味だけど。
 全体の音的なものとして、ボッサやサンバっぽい雰囲気で一杯なのだけれど、やはりというか、ズートらしい、洒落たキレイなジャズである。
 大好きな高音系管楽器奏者のフィル=ウッズのフルートも堪能できるし、ギターではケニー=バレルとジム=ホールも参加している。メンバー的にもこんなに豪華なのに地味だったのはレーベル的なセールスプロモーションの影響なのか・・・。
 ともかく、洒落たラテン系ジャズサウンドを気軽に聴きたいならば、18曲も収録されてて、いろんなミュージシャンのプレイが堪能できるお得な1枚。24ビット処理で音もイイ。

Patty Waters / Sings

 シンガーであり、ピアニストでもあるパティー=ウォータースの65年ESPからの作品。
 せっかくESPについて質問をもらったりもしたので、最近ヘヴィーローテなこの作品を紹介しておきましょうということで。
 彼女のことを知ったのは10年位前で、同じくESPから出てるカラーのジャケの方の思いっきり悲鳴のようなアヴァンギャルドを通り越した曲を聴かされて、イイけどキツイなぁーというのが最初。
 で、その後何年かして、たまたまこの作品のアナログをインフォで見つけたので、ESP好きとしてはって買ったような気がする。
 音的にこのアルバム、とっても静かで、パティーも独特なその弱々しくもオーラ満載の声で歌い、ポツポツとピアノも弾いてます。8曲収録されていて、ラスト1曲を除くと、平均2分程度のとっても短い曲で構成されている。ラストは13分以上あって、それはイッてます。
 バートン=グリーンのピアノハープの音がこれまた特徴的であり、怪しい雰囲気をもたらしてくれていたりもするけれど、やっぱりこの作品はトータルでは美しい音をしている。
 彼女の声はよく楽器以上の楽器だと評されるけれど、まあ、悲鳴のようなその叫びは壮絶と捉えることも出来れば、官能的とも捉えられる。
 ジャジーなESPとしては、アルバート=アイラーと同じくメジャーなタイトルではないでしょうか。

Romano Mussolini / Mirage

 イタリアのピアニスト、ロマーノ=ムッソリーニの74年の作品。
 あのイタリアの首相であったムッソリーニの息子。ロマーノの娘が女優で政治家だったりもするけれど、まあ、ミュージシャンなんで、そういう政治的なことは一切関係なしということで。
 トリオなど、ジャズジャズした作品もあるのだけれど、今作はピアノといってもフェンダー・ローズで全編演奏された、エレピなほんわかムーディーでパッピーな作品。セクステット編成で全てイタリアン。
 エリントンのナンバーである1曲目の「The Twitch」を除いては全て彼自身のナンバー。バラード調からヒップな雰囲気まで、とっても楽しいし幅広い楽曲となっている。
 楽曲の幅の広さもいいのだけれど、やはりこのアルバムの聴き所というのはエレピに尽きる。各楽器の音のバランスとしてもエレピがやけに強調された音をしているし。ミキシングやマスタリング段階でそうだったのだろうし、何より弾いてるロマーニの楽曲でリーダー作だからなんだろうけれど、ここまでエレピ全開な音は他には聴いたことないって位に。
 もう一つ、パーカッションの音が面白い。ドラムもあるので、普通パーカッションも入ってる場合は割と高音な打楽器の音でリズムに幅を持たせるために入れるんだけれど、結構鈍いくらいにドスンってパーカッションが入ってたりして、ヘンというよりも新鮮であった。
 全体的にエレピ好きであるだけに、嬉しい1枚。好きなのはちょっと怪しい雰囲気にも聴こえる「Hong Kong」かな。

Martin Taylor / Kiss And Tell

 UKのジャズギタリスト、マーティン=テイラーの日本へは初紹介となった99年の作品。
 ともかくギター上手いです。ジャジーというよりもスムージィーでイージーリスニング的な音の詰まった作品。聴いたことない方への説明としてはラジオの天気概況と交通情報の間に流れる、ちょいとおしゃれな雰囲気のいいインストの曲じゃ、と説明すると納得して頂けるのではないかと思う。
 この作品がリリースされてからは最近の盤も好評のようで、ファンも沢山いらっしゃる模様。でも、実は70年代から様々なコンボやユニット、バンド、そしてソロと、キャリア的にも長くて思いっきり実力派のギタリストです。
 リリース直後から持ってて、よく聴いてた時期もあったけれど、長いこと貸し出してたりしたもので、最近は全然聴いていなかったし、聴く気分でもなかったのであるが、いざ、ここに書こうと、聴けば聴いたで、やっぱり上手いし、いい感じに和める作品。
 楽曲的に大好きなマリア=マルダーの名曲、「真夜中のオアシス」が収録されていることに、さっき気付いた。いかに、いい雰囲気でギターが上手いとか言っておきながら、いい加減に聴いていたかを露呈している自分が滑稽だ(笑)。
 それでも、好きなのはアルバムタイトルでもある1曲目の「Kiss And Tell」。マーティンのギターと、こちらも楽器的に大好きな高音管楽器であるカーク=ウェイラムのソプラノサックスの駆け引きがとっても心地よい。さすがに頭の曲は久々に聴いてもよく覚えているものである。

Bobbi Humphrey / Blue Breakbeats

 フルート奏者、ボビー=ハンフリーのベスト盤的な98年リリースのブルーノート作品。
 このジャケの安易さはなんだ!?って感じだけれど、手頃な価格でベスト的な曲が収録されているので、まあいいでしょうって感じの1枚。
 きっちり1曲目にレアグルーヴ定番曲である「Harlem River Drive」が持ってきてある。どの曲もジャズというよりもソウル、いやプログレっぽい気もする6曲です。
 色んな打ち込み系アーティストの音ネタになってることも多いので、どこかでみみにしたことあるフレーズもきっとあることでしょう。
 まあ、ハンフリー作品といえば、そういうジャズだのソウルだのというジャンルや楽曲でどうこう言うのではなくて、やっぱりフルートの心地よさであると思う。フルートが無ければ無いでイイ曲だって思えるトラックに、キレイなフルートの音がのっかることによって何だろう、優しさが溢れ出すというか、包み込んでくれる雰囲気を醸し出している所がとっても好き。
 個人的に高音系管楽器が入っているとそれだけで気分いい、というのがあるので割と甘めの評価になりがちだけれども、そんなこと抜きにしても、ハンフリーのフルートは柔らかかったり、エッジが効いていたりと、自在なカッコ良さが楽しい。
 あ、高音系管楽器でもケニーGみたいなのはアウトです(笑)。

Jimmy Raney / Quartet With Sonny Clark

 ジャズギタリスト、ジミー=レイニーのピアニスト、ソニー=クラークを迎えた54年のパリでの録音作品。
 この作品、98年に55年の発売当時の雰囲気をそのまま復刻するというカタチで、ヴォーグ・オリジナル・LP・コレクションとして10インチのアナログ盤で25枚ほど復刻されたシリーズの中の1枚。
 しかし、本日初めて聴きました(笑)。ずっと、PowerMac G3の段ボールの中でこのシリーズ25枚全てが約6年程眠ってました。引っ越しに伴って、6年ぶりに引っ張り出した25枚の中で、やっぱり最初に聴きたくなったのはこのギターな作品だったという訳。
 で、お初な感じで聴いてみて、「なんじゃこりゃ〜!」の鳥肌モノの渋さにヤられてしまいました。スタン=ゲッツのクインテットでお馴染みのナンバー中心な楽曲ですが、そこはやはりギターメインなジャズということで、一段と落ち着きのある、深〜いサウンドが展開されます。
好きなのは1番アップテンポでファンキーな「There'll Never Be Another You」、邦題では「あなただけを」。テンポはいいんだけれど、じっくりと納得のできる味というか、体内で沸き上がる嬉しさ、みたいなのを感じることのできるナンバー。ここでも紹介したソニー=クラークのファンキーなピアノもギターと交互に顔を覗かせたりしてます。
 録音から50年、所有してから6年、何で寝かせたまま聴かずにきたのか不思議。しかし、今初めて聴いたからこそ、ここまでグッと来るものがあったのかも知れない。いやはや名盤はいいもんですな。

Vince Andrews / Love,Oh Love

 サックスプレーヤーであり、ヴォーカリストでもあるヴィンス=アンドリュースの83年の1stリーダー作品。
 アルバムタイトルでもある、「Love,Oh Love」がクラブチューンとして人気を得て、昨年CD化されるまでは10万とかいう値段がついていたってことで有名ではないでしょうか。
 さて、そういう経緯のある作品ではあるけれど、まあ、いい感じのジャズなアルバムです。音的には完全に80年代テイスト全開だったりもするけれど、サックスが色々出て来ます。アルト、ソプラノ、テナー、そしてフルートとマルチなヴィンスさんのプレーヤーぶりが素敵です。
 もちろん、「Love,Oh Love」はカッコイイけれども、大好きなのは「Being With You」ですな。ゆったりと泣きそうになる曲。歌とさりげないオルガン、ブロウするアルトがイイ感じに鳴っている。
 実際のところ、話題になってる頃は聴いたことなくて、ジャケだけかろうじて知ってたというアルバム。で、CD化されたのも知らずに過ごしてました。たまーにCDショップで自分の知らない、もしくは聴いたことのない作品で試聴機にもない系をじっくりチェックすることがあって、その時に「あ、出てたんだ」って感じで購入したのが、少し前。
 今書いたようなチェックは特にジャズヴォーカルコーナーでは入念に行ってたりします。まあ、完璧に知らないということは少ないけれど、これ聴いてみるかー!ってなる基準は好きな曲を歌ってるか?とか、コンボの編成はどうか?ってところかな。この選び方、ほとんど外しません。どうでしょう、こういうの。

V.A. / Blue Note Revisited

 お久しぶりな紹介となるのは、ブルーノート65周年記念なコンピ。70年代のちょっぴり渋めの名盤からエエ曲がセレクトされ、有名アーティストによってリミックスされているのだけれど、新曲へと蘇ったって感じの作品。今年の4月リリース。
 ずっとリリース前から気になってたのではあるけれど、クールで試聴も出来るサイトを覗いて我慢してたというか、ほとんどのセレクトされた原盤を持ってるってのもあって、買うのもなーって思っていた。
 で、ようやく先日購入となったんだけれど、まず聴いてみて、すぐに買えばよかった!って思った。とにかく程よくカッコイイ。原曲の良さ、そしてリミックスというか、新たな音の加え方のほど良さがイイ。
 これ聴いてやっぱりイイ!って特に改めて思ったのはボビー=ハンフリーのアルバムからの「Young Warrior」。このウネウネなベースライン、抜群です。泣きそうにウネっている。
 まあ、全体のバランスも良くてジャケも良く、ブルーノートの新譜系としてはさすがに65周年モノという気合いが感じられる1枚。ただ残念なのはコピーコントロールCDとなってしまっていることだろうか。
 それでも、作品として所持していたいと思わせる作品である。ヘヴィーローテーションです。ちょっと遅いけれど・・・。

joe Henderson / At The Lighthouse

 テナーサックス奏者、ジョー=ヘンダーソン、70年のライトハウスでのライヴ録音作品。マイルストーンレーベルから。
 ヘンダーソンというと、ブルーノートのカッコイイジャケの作品とかをすぐに連想してしまうのだけれど、実際持ってるのは70年以降のちょっとフリーっぽい作品が多かったりする。
 この作品はライヴ録音ではあるけれど、曲終わりの拍手がなければ、スタジオ録音!?って思う程、キレイな音質。
 曲的にはオリジナルと定番的な楽曲で構成されてて、この頃のヘンダーソン作品としては聴きやすいと思う。昨日紹介したばかりのモンクの作品で定番な「Round Midnight」やドゥーハムの「Blue Bossa」とかもやっててイイ感じ。
 とはいえ、ヘンダーソンのサックスは要所要所ではかなりイッてくれてるから、そこは個人的に凄く好きな部分。だから定番な曲でもひと味違った雰囲気出てます。
 好きなのは、この作品のメイン曲的な「If You're Not Part of the Solution, You're Part of the Problem」。ジャズロックというか、ソウルフルな雰囲気たっぷりで、コンガとエレピの絡みとか凄く好き。
 定番ものからフリー、ブラジルや南米モノと、どんなスタイルでも自分流でカッコ良く演奏してしまうヘンダーソンスタイルを再確認。あと、ブロウする感じも好きだ。

Thelonious Monk / Brilliant Corners

 久々にベタな名盤。ピアニスト、セロニアス=モンクの56年の作品。
 モンクの演奏は大好きで、特にソロ作品が好きなのだけれど、レコード棚を漁っていて久々に聴いてみたくなったのでご紹介。
 これはソロではなく、2管とリズム隊というクインテットなコンボ作品。8年ぶりくらいに聴いたんであるが、タイトル曲である「Brilliant Corners」のイントロを聴いた瞬間に「あー、これこれ!」って感じで思いっきり鮮明に思い出した。
 独特なモンクの奏法を聴くと何故か嬉しくなれる。で、この作品はそれプラス、ロリンズのサックスがやっぱりカッコイイなぁーって聴ける作品だ。
 ピアノソロのイメージばっかりになっていたのだけれど、こういうコンボな作品を久々に聴いてみると、リズム隊とサックスに絡んでいるピアノの音にとても心地よい間があって、これまたモンクらしいなーと改めて感心してしまった。
 前半の3曲はモンクのナンバーであるが、やっぱり、独特な奏法のピアニストであるだけに、彼自身の楽曲を演奏しているのはとってもツボである。
 「Pannonica」って曲ではおもちゃのピアノのような音の出るチェレスタって楽器を演奏してて、なおかつ、曲自体も柔らかい雰囲気で大好き。
 モンク作品も色々聴き直さないといけないなーというか、聴きたくなってしまった。

Duke Pearson / The Right Touch

 本日も続けてピアニスト。デューク=ピアソンの67年のブルーノート作品。No.4267。
 本来ならば、ピアソン作品では「Sweet Honey Bee」が大好きなので、紹介するならまずそちらからと思っていたのだけれど、どうやらアナログが広島にあるらしく、ちゃんと聴いて文章を書ける、この作品をご紹介。
 さて、音ですが、8人編成と、コンボとしてはビッグバンドに近い感じで、5管なので、それだけを聞くと豪勢だなーって感じだけれど、逆に8人なのにえらくシンプルな演奏だなぁって感じもある作品となっております。
 曲的にもゆったりくつろぎナンバーが多く、ピアソン名義な作品だけに、ピアノがとても気持ちよろし。しかし、サビな部分では5管が分厚いアンサンブルを奏でてくれてて、とっても豪華でもあったりする部分がまた面白い。
 好きなのは一番ムーディーな「My Love Waits」。リズムがちょっぴりボッサな感じでホーンも控え目。それだけにピアノが一層引き立った嬉し泣きな1曲。
 ピアニストとしてのピアソンがとっても好きで、彼の演奏はバラードでもラテンな感じでもいつも華があるイメージがある。
 ジャケ的にもこれは地味だけれど、なかなか豪華でありつつ、静かでもあり、とっても楽しめる1枚。

Red Garland / The Last Recording

 ジャズピアニスト、レッド=ガーランドの83年のタイトル通りラストのレコーディング作品。ちなみに2もあります。
 ガーランドと言えば、数多くの名作があり、マイルスのコンボでも活躍していた時期もありで、色々紹介したい作品は多い。しかし、この作品は日本盤のみのリリースで、しかも晩年でもあり、凄く地味な作品。
 まあ、たまたまサンプルで持ってるというのもあるけれど、このラストな作品の良さというか、聴いててイイっていうのは、楽しいんである。
 この作品の中で一番なというか、帯にも書いてある定番な名曲「My Funny Valentine」がしみじみ気持ちよく聴けるんで、知らない方でも聴いてみよう!ってなる音だとは思う。
 しかし、このアルバムで1番好きなのは「Wonderful Wonderful」。この奏法というか、楽曲全体の雰囲気は全盛期のガーランドそのものである。
 83年録音だけれど、リリースは95年。日本の地味でマイナーなレーベルから。この頃はジャズの発掘ブームみたいな感じで、そんな録音あったんだ、っていう有名なアーティストの秘蔵盤みたいな作品がたくさん出てた時期。そのまま、これまた地味になくなったレーベルもたくさんあったけれど、こうやって、様々な音源が聴けるというのはいいことだ。現在は最初のリリースとは違うレーベルからジャケも違って出てたりする。
 これ、久々に聴いたけれど、他のガーランド作品も聴きたくなってしまった。アナログを引っ張り出すとしよう。

Miles Davis / Doo-Bop

 マイルス=デイヴィス、92年リリースのレコーディング作品としては一応ラストの作品。
 ここでマイルス名義の作品を紹介するのは初めて。初期の作品から結構な枚数をもっているのだけれど、実のところ、そんな好きなミュージシャンではない(笑)。
 あ、ダメというのではなくて、カッコイイとは凄く思う。ジャズ的な視点で見ても、いつも一歩先に行っているし、巨人であることは言うまでもない。ただ、トランペット奏者としては他に好きなミュージシャンがいるということで。
 さて、この作品、ヒップホップというか、ブレイクビーツというか・・・、ジャズではないという声もたくさん聞くけれど、間違いなく、マイルスの音である。
 とにかく、マイルスが生きていた時の最期にやりたかったスタイルがこの音なんだ、ってよく分かる音なのだ。ミュートペットはもちろんいつもの彼の音、というか、最期の彼の音だ。
 色々マイルスについて語り出すと、詳しい方々も賛否のあるアルバムであるし、どうにでも言うことが出来てしまうので、言うのもよしましょう。
 素直に、ええなぁ、カッコイイわー、って聴ける作品。先入観とか持たずにね。
 最初に書いたように、そこまでマイルス好きではないので、たくさん持ってても、あまり聴かないのだけれど、たまーに聴くとさすがはマイルス、外しはありません。もちろんこの作品も。

Pedro Ruy-Blas / The Best Of Dolores

 スペインの、ペドロ=ルイ=ブラス率いるドローレスの70年代の5枚のアルバムから選曲されたベストアルバム。2001年リリース。
 リリース当時に買ってたにも関わらず、すっかり忘れていた作品だ。プログレちっくだと聞いていたけれど、とってもジャズであり、ファンクっぽい。クラブシーンでの再評価あってのこのベスト盤のリリースと至ってるみたいだけれど、その象徴的な曲であり、1曲目に収録されている「El Jaleo」ペドロのスキャットとフルートが心地よく、スピーディーなナンバーで踊れる。
 しかし、この感じが2001年当時はちょっとテンポ的に速すぎたんであんまり聴かなかったという記憶がある。
 で、久々に取り出して聴いてみると、全然好きだ。何でずっと聴いてなかったのだろう!?って不思議に思える位に。
 ジャズ、ファンク、フュージョン、フラメンコ、サンバ、フォーク、ざっとこんな感じの音が入り乱れている感じ。まあ、ジャンル分けする意味が無いってことだ。
 一通り聴いて思い出したけれど、9曲目の「Hubo Una Vez Un Hombre」は大好きで1番聴いていたんだった。歌モノでちょっと涙の出そうなフォーキーなナンバー。確か、選曲してた番組でも流した。
 ベストよりオリジナルを!って言ってるが、この作品もベスト盤だね。今はオリジナルアルバムも普通に買えるのか調べていないけれど、買えるなら欲しい。これは偶然試聴して「イイ」って思って買ったんだったなぁ。

Coco Schumann / Coco Now!

 ドイツのジャズギタリスト、ココ=シューマンのカルテットによる99年のクラシカフェスティバルでのライヴ録音作品。
 あのー、彼のことについてはサッパリです。ホント、ドイツのギタリストくらいの知識で。ちなみにCoco Schumannで日本語検索してみれば分かると思うのですが、クラシックはロマン派の作曲家、シューマンばっかり出てきます。Cocoという文字列も、クラシックの得意なコロンビアレコードの品番にCOCO-0000みたいなものがたくさんあって。
 さて、音ですが、ゆる〜いジャズです。スタンダードナンバーとボッサを聴かせてくれます。「A列車で行こう」、「ジョージア・オン・マイ・マインド」、「枯葉」など、抜群にスタンダードナンバーがあって、「ワン・ノート・サンバ」、「イパネマの娘」「黒いオルフェ」等、これまたスタンダードなボッサなナンバーもある。
 フルアコのフロントピックアップに思いっきりリバーヴを効かせた彼のギター音はフワフワでよろし。このカルテットはジャズよりもボッサの方が向いている気もする。
 そういう訳でお気に入りはボッサで、ナベサダっぽいサックスがちょいとフュージョンちっくでもある「ワン・ノート・サンバ」。ドラムのハイハットの刻みとリムショットがとっても気持ちいいし。ジャズ側でだと、歌が渋くてテンポもいい「Day By Day」かな。フルート入ってるし。
 結構オッサン好みな音であるような気もするけれど、ちょっとブレイクしたい、って気分の時にはちょうどよい。

John Coltrane / Transition

 サックス奏者、ジョン=コルトレーンの65年の作品。リリースされたのは彼の死後。
 あんまり話題にあがらない作品なんだけれど、コルトレーンのテナーサックスオンリーの作品としては1番好きなアルバム。
 細かいこの作品における経緯や解説などは他にたくさん語ることの出来る方々がいると思うので、素直に聴いた感想を。
 何と言いますか、壮大な3部作プラス1的な曲構成でとにかく凄い演奏なのだけれど、コルトレーンのサックスがとっても優しい。もちろん、コルトレーン大好きなんで、かなりの作品を聴いて来てはいるけれど、このインパルス時代のアヴァンギャルド系というか、ちょっとイった雰囲気すらある演奏の多くはカッコイイとも思うし、迫力はとてつもなく感じて来たけれど、優しさを感じた作品はこのアルバムが初めてかも。
 優しいとはいえ、このアルバムが初コルトレーンという方にはパンチが効いているのかも知れないけれど。でも、聴けば聴く程、嬉しい気持ちにしてくれる1枚だ。
 2曲目の「Welcome」はその前後のブレイクのようなバラードなのだけれど、この曲はいきなり聴いても優しさと嬉しさで溢れた曲なんで、気持ちよく聴けるはず。マッコイのピアノもとってもキレイだし。
 最近、1番聴いているコルトレーンの作品である。他はほとんどアナログでしか持ってないからってのもあるけれど。でも、ホントイイし、好きです。

Hank Mobley / Dippin'

 テナーサックス奏者、ハンク=モブレーの65年の作品。ブルーノートNo.4209。
 何と言ってもというか、どこでも言われているけれど、このアルバム、イコール「Recado Bossa Nova」ということです。確かにエエ曲で何度も聴きたくなる気持ちも分かるし、当然のように何度も聴きました。
 で、ホントの注目点はトランペットのリー=モーガンとの2ホーン構成での駆け引きではないかと思っておる訳です。で、この2人のいい感じなのは「Recado Bossa Nova」よりもむしろ、最初の曲である「The Dip」かなぁって気がする。というか、「The Dip」はモーガンの曲っぽいし。
 で、モブレーのサックスをじっくり堪能したいのならば「Soul Station」がよろし。こっちのアルバムの方がよく売れていた記憶もあるのではあるけれど・・・。
 さて、また「Dippin'」に戻って、この作品で唯一のバラードナンバーである「I See Your Face Before Me」が実は一番好きだったりもする。しっとりとしてて、テナー、ペット、ピアノの順番にソロがやって来るのがとっても気持ちよい。
 アルバム全体として、やはりイイ感じでまとまっている1枚である。アメリカよりも日本やヨーロッパで人気が高いのも分かるような気がする。買うなら輸入盤の方が安いけれど、解説が載ってる日本盤をオススメします。

Don Ellis / New Ideas

 トランぺッター、ドン=エリスの61年のクインテット作品。
 この作品を入手した時はジャケットは目にしたことがあったのだけれど、あまりよく知らないミュージシャンであった。レコード屋のワゴンセールで、その名の通り、ワゴンに山積みになっている所から探し出して購入した1枚。
 決め手となったのはクインテット作品でピアノとヴィブラフォンが入ってるというところ。それにピアノが好きなジャキ=バードだったというのもありつつ。
 音的にはとっても西海岸な明るめのテンポのいい楽曲が多い。好きなのはペットとヴィブラフォンのユニゾンがとっても気持ちのよい「Four And Three」かな。
 3曲目の「Natural H.」って曲だけ、他とは全く雰囲気の異なる感じで、フリー的というか、アヴァンギャルドな楽曲になってる。それぞれが好きなように、いや、タイトル通り好きに音を発しているのだけれど、ポツポツと聴こえてくるんで、現代音楽のようでもあってなかなか好きなラインだ。
 ラスト曲である「Tragedy」もちょっとアヴァンギャルドな雰囲気を持たせつつ、ヴィブラフォンメインなメロディがイイ感じ。
 何とも、西海岸的サウンドと自由なアヴァンギャルドな音が混ざっている作品でかなり珍しいかもしれない。しかし、こういう何でもありというか、好きな組み合わせでアルバム作ってるって辺りも好きである。

Terumasa Hino / La Chanson D'orphee

 トランぺッター、日野皓正の68年の作品。
 ビートルズの「Day Tripper」のラテンなカヴァーから始まるこの作品は、彼のアルバムの中でもとっても珍しい、イージーリスニングな作品である。
 他にもビートルズカヴァーがもう1曲に、ラテンなスタンダード満載だし、「イパネマの娘」や「マシュ・ケ・ナダ」、アルバムタイトルである「黒いオルフェ」といったボッサナンバー、「サマータイム」などのジャズのスタンダードまでバラエティに富んだ楽曲をゆったりBGM的に聴かせてくれる1枚だ。
 日野皓正といえば、頬を思いっきり膨らませて、ハードにプレイする印象が強いだけに、ちょっと意外で楽しい発見的でもある。68年という時代にやってる素早さも面白い。
 彼の作品で好きなのは70年代前半の和のテイストとジャズの融合に、実験的で、そして意欲的に取り組んでいた、インプロヴィゼーションのような時代のものが、弾けていて好きだ。
 このアルバムは、ホント楽しい。肩の力を抜いて、ゆっくり気楽に過ごしながら聴ける。とはいえ、やはりトランペッターの凄みというか、上手さは光っている。
 1曲を選ぶならば、ハンコックの作品である「Watermelon Man」のカヴァーかな。一番テンポもゆったりしてて、ラテンらしい雰囲気で一杯だし。トランペットソロがまた、気持ちいい。

Eric Dolphy / Last Date

 200枚目の紹介となる本日は、ジャズマン、エリック=ドルフィーの64年のタイトル通り最後の録音作品、オランダにて。
 確か、ジャズのアルバムとして2枚目に買った作品だ。1枚目がコルトレーンで、その中でドルフィーがプレイしてた音を聴いて、すぐ好きになっての購入。
 このアルバムでは、ドルフィーはアルトサックス、フルート、バスクラリネットをプレイしている。コルトレーン繋がりで聴き始めたのもあり、ドルフィーもフリージャズでアヴァンギャルドなブロウ具合が大好きだ。
 特にこのアルバムで聴けるバスクラリネットのブロウは強烈。1曲目の「Epistrophy」のイントロから不協和音ばりに聴かせてくれているが、これがたまらなくカッコイイ。
 で、やはり高音好きとしては、ドルフィーのフルートプレイである。このアルバムで最も好きな「You Don't Know What Love Is」では繊細で美しい音色が楽しめる。イントロだけで2分45秒以上フルートが鳴りまくってたりするし。途中でドルフィーらしい、フルートブロウが聴けるのもまた楽し。イった音もあるけれど、やはりピアノとベースと相まって、とてもキレイな曲。
 このアルバムも久しく聴いていなかったけれど、やはりイイ作品だ。こうして毎日のように音に関して文章書くというのは、大変でもあるけれど、久々の楽しい音っとの再会も出来たりと、嬉しいことが沢山ある。
Last Date

Michael Brecker / Tales From The Hudson

 昨日に続いて棚の奥で眠ってましたCDシリーズを。サックス奏者、マイケル=ブレッカーの96年の作品。これまたインパルスより。
 ブレッカーと言えば、やはり70年代にヒットし注目を集めた、ブレッカー・ブラザーズの時代が連想されるし、ヒップでとっても好きだった。
 この作品は当時の新生インパルス一押しアルバム、というか、起死回生の1枚的な作品。ジャズ界では大物であるブレッカーを移籍させ、それにプラス、パット=メセニーが全面参加し、ゲストでインパルスとは馴染みの深いマッコイ=タイナーがピアノを弾くという豪華さ。
 楽曲的には当然のようにブレッカー作の曲が多いけれど、全体的にブレッカーのソロフレーズでは、モロ、ブレッカーな音で、ギターソロでは、モロメセニーな音であり、マッコイのソロはモロマッコイな音である。とにかく強烈な作品だ。
 特に3曲目のメセニーの曲である「Song For Bilbao」では思いっきり、このモロなぶつかり合いが堪能出来る。
 それぞれのアーティストが強烈ではあるけれど、そこはベテランの味もあり、昔からの仲間ということもあって、とってもバランスのとれた90年代の大人なアーバンジャズが展開されている。ゆったり飲みたい深夜の雰囲気にピッタリ来るアルバムだとも思うし、当時スマッシュヒットしたのもうなずける1枚。
 ジャズ好きじゃあない方にはブレッカーなんて、全く馴染みのないように思われるけれど、ブレッカーはスマップのアルバムでも結構な数の曲を吹いてたりもする。スマップの7枚目以降の作品って結構ホーンアレンジが凄くて、豪華なのだけれど、実際にニューヨークの一流ジャズマンに依頼してるのだ。ちゃんとアルバムクレジットにブレッカーとか名前載ってるんで、持ってる方はチェックしてみては!?しかし、吹いてるジャズマン達はスマップってアイドルの作品とは知らずにやってると思うけれど。

Eric Reed / Musicale

 ピアニスト、エリック=リードの96年のリーダー作。インパルス移籍第一弾。
 ウィントン=マルサリス楽団の一員として何度か来日してたりもするので、馴染みの方もいるかも。90年代以降に台頭してきたジャズ系のアーティストにはこれまであんまり注目もしていなくて、やはりジャズと言えば、40年代から60年代の黄金期の巨人達が70年代生まれとしては逆に新鮮であったし、情報的にも知る機会がたくさんあったし。
 さて、このエリック=リードだけれど、じっくりこの作品を聴いたのはホント最近のことで、それまではずっと棚の奥で眠ってたCDだった。何よりもジャケットが聴く気を起こさせてくれないでいた。
 で、腰を据えて聴いてみると、ビックリ、上手いじゃないですか!とってもヒップなピアノを聴かせてくれているし、楽曲のほとんどが彼のオリジナル作品というのもイイ。
 アルバムの流れとして、クインテットとトリオの演奏が交互に収録されているのだけれど、メリハリがあってとっても聴きやすい。
 好きなのは3曲目、最近のジャズマンとして注目もしているニコラス=ペイトンのトランペットが印象的な「Cosa Nostra」と、エリック=ドルフィーとオーネット=コールマンに捧げられた6曲目の「Pete And Repeat」。
 ジャズの黄金期の雰囲気を受け継ぎつつ、エリックオリジナルな奏法を繰り広げていて、とっても気持ちよく聴ける1枚だ。

Grover Washington Jr. / A Secret Place

 サックス奏者、グローバー=ワシントンJr.の76年の作品。モータウン傘下のkudoレーベルより。
 彼の作品の中では比較的地味な作品ではあるが、一番好きなアルバムである。何と言ってもタイトル曲である、「A Secret Place」が最高。これまた大好きなソプラノサックスで演奏されてます。
 これまで、ソウルやファンクなアルバムを紹介した時に「静寂のグルーヴ」って表現を何度かしてきたけれど、この言葉でまず思いつくのは実はこの曲だ。
 この二つ前の作品である「Mister Magic」も好きだしイイんであるが、静寂さがこっちがはるかに上。で、「Mister Magic」には同名のタイトル曲っていうヒットもした華やかなナンバーがあるが、こちらは一貫して地味。しかし、ソプラノサックスとエレピのキレイでゆったりとした、心地良い「間」のある作品だ。
 ハンコックのナンバーである、「Dolphin Dance」も演奏されてるけれど、これがまたダンスではありません。もちろんイイ意味で。でも、ソプラノサックスは聴き方によってはイルカの声のようでもある。この曲での彼のブロウはそういった意味でもアヴァンギャルドで渋い。
 こんなに個人的には大プッシュであるけれど、現在CD化されているのは、一つ前の作品である「Feel So Good」と一緒になった2in1作品として。まあ、時代的にも作品的にも並びのアルバムなので、まとめて聴いてもスタイルも似てて、お得でいいのかも。ジャケのパンタロン姿の彼も好き。
 80年の大ヒット作、「Winelight」も素晴らしいが、グローバーの神髄はこの作品に現れていると思っている。

Modern Jazz Quartet / Collaboration

 モダン・ジャズ・カルテット、64年の作品。ギタリスト、ローリンド=アルメイダとの共作。
 MJQの素晴らしさはもちろんだけれども、はやりこの作品はアルメイダのギター、これに尽きますな。というか、大好きなもので、アルメイダってギタリストが。
 持ってるのはアナログで、現在流通しているCDのジャケの中央に四角く見えるのが本来のジャケット。日本盤の初回のプレスのもので、まだフィリップスの権利をビクターが持ってた頃の盤です。
 さて、音だけれど、A面はMJQのピアニストである、ジョン=ルイスのオリジナルが中心で、ラストがバッハ。ジョンの楽曲はとってもキレイで、MJQらしい、スィング感が楽しい。
 B面はブラジルものと、ラストナンバーがアランフェス協奏曲。実はこの作品は、このラストのアランフェスで有名な盤だったりもする。
 しかし、1番好きなのはB-1である、ボッサの定番曲でもある「One Note Samba」。いろんなアーティストによって演奏されているけれど、このアルバムに収録されているモノがフェイバリットだ。アマゾンでも聴けるけれど、イントロまでしか聴けないんで、是非フルで聴いて欲しい。アルメイダのギターのスパニッシュでブラジリアンでクラシックな、それは泣けるフレーズが堪能できます。
 全編に渡って、こんな感じでさまざまなフレーズを美しい音色として弾いてくれてます。MJQのピアノとヴィブラフォンと相まって、とても高音ジャズなツボの作品。

Eric Kloss / Introducing

 盲目のジャズマン、エリック=クロスの65年のリーダー2作目となる作品。プレスティッジより。
 実のところ、あまり知らないで手にしたアルバムであった。ギタリスト、パット=マルティーノが参加しているって部分が大きいという感じで。
 この作品の録音時、エリックはまだ10代の少年である。テナー&アルトサックス奏者ね。音の線は細いんであるが、とっても心地よいブロウを聴かせてくれている。繊細で美しい管楽器サウンド。
 オルガンのドン=パターソンによって制作されたに近い作品であるが、これはどう聴いてもエリックのリーダー作!と言える内容。プロデュースが上手い。
 で、大好きなマルティーノのギターとドンのオルガンがこれまた抜群にイイ感じで鳴っていて嬉しくなる。
 2曲目、「Old Folk」はとっても静かでメロウなバラードナンバーなのだけれど、涙が出そうな程の嬉しさに襲われてしまいます。
 ジャケだけ見ると、いかにも60年代のアメリカの少年がちょっと不良に憧れて、のような写真だが、聴けば納得というか、それ以上の大人も食ってしまう程のすんげえジャズマンであった、と驚いた1枚。
 こういうの、すぐ廃盤になってしまうというのも悲しい。中古屋で探すしかないようです。ダウンロード販売系サイトにも無い感じ。
 

Don Friedman / Metamorphosis

 ピアニスト、ドン=フリードマンの66年の作品。プレスティッジより。
 とっても西海岸なピアニストではあるけれど、このアルバムは一味違う。まず、カルテットなのだけれど、ギター&ピアノ&ベース&ドラムという編成。
 どの曲もギターとピアノがユニゾンでメロディを奏でつつ、それぞれのソロって感じ。小気味よいユニゾンがとっても気持ちいい。フルアコなギターはやっぱりいいです。
 A面はそれなりに西海岸風味でさわやかでありつつ、きっちりしてる音であるけれど、問題というか、この作品の醍醐味はB面だろう。
 ビートは正確に刻まれていて、その上でピアノ、ベース、ギターのインプロヴィゼーションが繰り広げられている。まあ、フリージャズっぽいんである。
 キレイな音や心地よいジャズを求める人にとってはA面だけを、フリーチックなのにハマりたい人にはB面だけをという感じでは薦められるけれど、中々、全体通してはキビシイのかも知れない。
 しかし、これが良いんである。このバランスが好きだ。やはりジャズは何でもありの自由な音楽。それが現れてるアルバムであると思う。今、入手するのも難しいかも。わりと地味な作品だからなぁ。でもこういうの大好きです。

Joe Sample / Rainbow Seeker

 昨日のエントリの流れで、今回はジョー=サンプルの78年のソロアルバム。
 サンプルの代表作であり、ヒットアルバム。全然聴いてない頃からジャケだけはよく覚えていた。だって、ダサいんだもん(笑)。
 さて、アナログで持ってるのであるが、何より所有しているってことをすっかり忘れていた。ホント、昨日のハッチャーソンのエントリで思い出したのであった。
 邦題が「虹の楽園」となっております。キレイというか、いかにもフージョン系のタイトルだって印象。
 音でありますが、まさに70年代後半のフージョンなビートとベースだ。それはそれで、よしとして、やはりサンプルのピアノはいい感じにキレイだ。
 2曲目の「In All My Windest Dream」は、この作品の中でも有名な曲であるんだけれど、久々に聴いてみて、恐ろしく良く覚えていたのでビックリした。というか、サンプルの曲だったよ!って思い出した感じ。ラジオとかテレビで BGMやSEとして今でも多用されてるし。
 アルバム通して聴くと、B面、 CDで言うところの、5曲目以降の雰囲気が好きかな。ピアノの音は弾けてるんだけれど、その中に落ち着きがあって、とっても気持ちよく聴ける。
 ジャズ好きだったり詳しい方にはクルセイダーズの活動時期と比較する人もいるとは思うけれど、このアルバムはちょうど、ソロでやり始めた奏法とクルセイダーズ時代のファンキーさの抜群な中間地点だと思う。
 それ故、名盤と言われ、ヒットしたんだと思う。とにかく、いい感じで聴けます。

Bobby Hutcherson / San Francisco

 ジャジーなヴァイブ奏者、ボビー=ハッチャーソンの70年のリーダー作。ブルーノートより。
 ハッチャーソンの作品で最初に出会ったのがこのアルバムだった。ブルーノートのアナログを発見すれば買うって感じの時期だったかな。それも、定番的な1500番台とか4000番台前半ではなくて、このアルバムみたいなジャズではあるけれど、ソウルフルでグルーヴィーな感じの作品を。
 さて、この作品であるけれど、ハッチャーソンのリーダー名義というのももちろんだけれど、ジャケにも一緒に写っている、テナーサックス奏者、ハロルド=ランドとの競演から生まれた1枚。
 楽曲はほとんどがハッチャーソンのオリジナルとジョー=サンプルのナンバー。ちなみにサンプルも鍵盤で参加してます。プロデュースがデューク=ピアソンなのも注目だ。
 1曲目のサンプルの曲である「Goin'Down South」は最初に聴いた時から最高に好きなナンバー。ジャジーでアーバンなソウルフルロック。この説明もどうかと思うが、とにかく渋い。
 このアルバムに収められているハッチャーソンの楽曲は、かなりアヴァンギャルドな音をしていて、ジャズというよりはちょっと違うと思う。5曲目、B-2の「Procession」はアンビエントな雰囲気もあり、ハロルドのオーボエの演奏がこれまたたまらない。
 ずっとジャズ系ではヴィブラフォンやフルート、ソプラノサックスなんかの高音系サウンドが大好きだ!ってここにも書いてきたけれど、このアルバムにジャズを聴き始めた頃に出会ったっていうのも大きいと思う。
 ラストナンバーである、ハロルド作品の「A Night In Barcelona」がまさに、高音が美しい正統派のジャズボッサで大好き。

Archie Shepp / Four For Trane

 テナーサックス奏者、アーチー=シェップの64年の作品。インパルスより。
 タイトルから、そしてジャケ写でもお分かりの方もいるとは思うが、コルトレーンのための4曲。プロデューサーがコルトレーンという作品だ。その4曲もコルトレーンの楽曲。
 まずは、この作品で好きなのはジャケット。階段の手すりを挟んだシェップとコルトレーンの絶妙な位置といい、色具合といい、インパルスの中でも一番好きなジャケット。
 シェップの演奏というのは上手いっていうよりも粗削りではあるが、本能のままブロウしているって感じのイメージがある。この作品もコルトレーンの曲をやっているだけあって、フリーっぽいし、激しい部分もカッコイイけれど、さすがはプロデューサーコルトレーン、統制のとれたフリーって演奏だ。
 1曲目の「Syeeda's Song Flute」が特に大好きなのだけれど、テナー&アルトサックス、トロンボーンにフリューゲルホーンがとんでもなく不協和音を響かせているけれど、とってもマッチしてて、しかもスィングしてる、素晴らしい曲だ。
 フリーっぽくてフリーらしくはない、だけど、とっても聴く者をとりこにさせる、不思議に気持ちいいアルバムだ。
Four for Trane (Impulse Master Sessions)

Soul Bossa Trio / Dancing In The Street

 ソウル・ボッサ・トリオ、94年の2ndアルバム。
 最近の作品も含めて好きな音が多いけれど、この作品が一番、生楽器でアフロ・キューバン・ジャズ・コンボな音をしていてカッコイイってことでご紹介。
 ジャズナンバーとして大好きな「Tin Tin Deo」に最初にのめり込んで行くキッカケになったのはこのアルバムのヴァージョンを聴いてからだったと思う。ピアノがメインメロで手拍子と掛け声がリアルなライヴ感たっぷりのナンバーに仕上がっている。
 よく知られたジャズナンバーやボッサナンバー、サンバまでをジャジーで軽快に思いっきり楽しめる音の詰まった全11曲。名前にボッサって入ってるだけに、ブラジル感も素晴らしいけれど、それ以上にスィングしているって所にヤられてしまう。
 彼らの作品で一番聴いたのは、リミックス盤の「Abstract Truth」。竹村延和のリミックスヴァージョンは忘れられない。でもタイトル忘れた・・・。音を聴けば、イントロだけですぐに思い出せるんだが。アナログが行方不明中。半年前には聴いたので、絶対あるのだけれど。
 ともかく、これから夏にかけて、また聴く機会の増えるアルバムとなるだろう。しかし、現在はリミックス盤も含めて、ビクター時代の作品は廃盤だ。アマゾンでは一応表示されるが。ドイツ盤とかもあったんで、探してみて欲しい。

Goran Kajfes / Home

 スウェーデンのトランペッター、Goran Kajfesの2000年の1stリーダーアルバム。
 名前のアルファベットの読み方はよく知りません。トランペッターって書いたけれど、フリューゲルホーンにトロンボーン、キーボードにパーカッションにベースと何でもこなすマルチなプレーヤーでもある。
 サウンド的にはフューチャージャズとよく言われておりますが、アンビエント的だったりダブっぽかったり、アシッドっぽかったり、トロピカルな感じもあってバラエティに富んでいる。だけど、彼のペットの鳴りは完全にジャズそのものだって思う音をしている。
 5曲目の「Swampified」は鐘の音のサンプリングが印象的なエキゾチックサウンド。このアルバムのリリース直後に選曲してたラジオ番組で流した。さっき聴いて、その時の感じが蘇って来て、とても嬉しい気分になれてよかった。6曲目の「Life Insurance」はエレピのキレイな曲。ECMな感じもあったり。
 このアルバム、未来的でもあるし、古い時間を思い出させてくれたりもする、楽しい一時を送るにはイイ感じの1枚だ。最近は聴いてなかったけれど、またちょくちょく聴こうと思う。

Mark Murphy / Midnight Mood

 ジャズシンガー、マーク=マーフィーのドイツMPS盤。67年録音作品。
 マークについてはほとんど知らなかったのであるが、このMPSというレーベルの作品が好きだというので、買うに至った作品である。
 いきなり1曲目のエリントン&ウェブスター作品である「Jump For Joy」の始まりが彼のアカペラからで、それがとてつもなくカッコよく、震える感じですぐ好きになった。
 一番好きなのは4曲目の「Alone Together」かな。スピード感と緊迫感みたいなビシっとした雰囲気がありつつ、とっても気持ちのいいサウンドをしている。
 バックの演奏のソニー=クラーク&フランシー=ボランのビッグバンドがこれまたしっかりしていてイイ。スインギーでありラテンな雰囲気の楽曲までさり気ないくらいにスラーっとこなしているプロな演奏だ。このメンバーに名を連ねている、サヒブ=シハブが大好きで、彼がフルートを吹いている「Sconsolato」ってラテンナンバーはご機嫌な1曲だ。
 スィングにラテンにバラードと、キレイな演奏が満載で、アルバムタイトル通り、真夜中にじっくりと聴いていたい作品。

George Benson / It's Uptown

 ジャズギタリストでありヴォーカリストでもある、ジョージ=ベンソンの66年の1stリーダーアルバム。
 ベンソンと言えば、「ブリージン」に代表されるフュージョン時代に脚光が当たることばかりだけれど、この1stの尖り具合というのは物凄い。何と言ってもこのジャケットには、アルバムタイトルよりもデカデカと「The Most Exciting New Guitarist On The Jazz Scene Today」と表記されている。直訳すると「最高にワクワクするギタリストがジャズシーンに現れたぜ!」って感じだろうか。
 1曲目である「Clockwise」のスピード感でいきなりヤられます。それもバリトンサックスとのユニゾンな演奏で超カッコイイ。このアルバムはカルテット編成なのだけれど、ギターにドラムにバリトンサックスにオルガンという、ちょっと変則カルテットな所も尖り具合に拍車をかけている。
 2曲目のスタンダードナンバーである「サマータイム」や6曲目の「A Foggy Day」なんてガーシュウィンのヴォーカルナンバーもある。もちろん、ベンソンが歌ってます。まだ若々しい声で爽やかだ。
 収録曲のほとんどがベンソンオリジナルの曲で、デビュー時からコンポーザーとしての才能も発揮しまくっていたのである。
 あっ、激しい曲ばかりではなく、しっとりバラードなナンバーもあります。尖ってはいるけれど、バランスも取れた1枚。ベンソン作品では最も好き。それから、オルガンはこれまた大好きなロニー=スミスというのもよろし。

Rufus Harley / The Pied Piper Of Jazz

 バグパイプ奏者、ルーファス=ハーレイの66年から67年までの作品を集めたベスト的な2000年リリースの作品。
 バグパイプでジャズする人と言えば、このルーファスくらいしか知らないが、とってもパワフルなプレイを聴かせてくれている。本来なら、オリジナルアルバムであり、1stである「Bagpipe Blues」を紹介したい所だけれど、現在生産終了になってるし、このベスト盤にイイ曲は入ってて、こちらは輸入盤屋で購入可能なので、こちらを紹介。
 正直、バグパイプの音は強烈で、最初ちょっと戸惑いもしたけれど、ジワジワ聴けてくる音である。アナログシンセのような音にも聞こえてしまう。とにかく、とっても面白い演奏であることは間違いない。
 さて、ルーファスの曲で1番好きなのは、実はバグパイプではなくて、フルートを演奏している「More」という曲。きっちりとしたドラムとピアノのリズムに鬼のように美しいフルートが涙が出る程の嬉しさに襲われる名曲である。しかし、フルートでもガンガンにブロウしてはいるけれど。
 あと、テナーも吹きます。そういう意味ではマルチプレーヤーでもある。しかし、個人的にはフルートを吹くルーファスの曲が大好き。キレイだし気持ちいい。

Frank Cunimondo / Introducing Lynn Marino

 ピアニスト、フランク=カニモンドのトリオにリン=マリーノのヴォーカルを迎え入れた、71年の作品。
 80年代のレア・グルーヴが流行った後にロンドンで90年代に入ってから注目されたので、てっきりヨーロッパの人達だと思ってたら、思いっきりアメリカはピッツバーグの方々で、地元を中心に活動していたようだ。
 やはり、この作品はリンの声だ。独特な声と歌はフワフワ感たっぷりだ。最近まで、このアルバムは声中心に、しかもちょこっとしか聴いていなかったから気付きもしてなかったけれど、上質なピアノトリオ作品だ。しっかりとしたリズムで、思いっきりスィングしている。
 曲的にはやっぱり、スタンダードナンバーである「Feelin' Good」がとてつもなくカッコよくて気持ちいい。トリオとしての醍醐味もべらぼーに感じられる1曲だ。
 このアルバムがCDとして発売された数年前は個人的にもジャズヴォーカルな作品はそんなに聴いていなかったし、そういう気分な時期でもなかったような気がする。なのに、最近はこういう、しっとり、そして時には激しくスィングしつつ、心地よいヴォーカルモノがとっても好きになっているし、色々とよく聴いている。
 年齢的なモノも、もちろんあるとは思うけれど、ジワジワとカラダに響いてくるこの「感じ」を堪能出来るというのは何より嬉しいことだ。いいですぞ!

Donald Byrd / Ethiopian Knights

 トランペッター、ドナルド=バードの71年の作品。ブルーノートNO.4380。
 ジャケット的にはバードの作品の中でも1番パッとしてないというか、好きじゃない作品なのではあるけれど、サウンド的には1番大好きな、シビれる作品。
 まず、ジャズって言うか、ファンクな音だ。特に1曲目の「The Emperor」は繰り返されるビート、ギターのバッキングに、トランペット、サックス、ヴィブラフォン、エレピと目まぐるしくソロがチェンジしていく雰囲気、どファンクです!メンバー全員がとってもキレた演奏で、とてつもなくクールです。中でも、テナーサックスのハロルド=ランドとヴィブラフォンのボビー=ハッチャーソン、そしてオルガンのジョー=サンプルは特に鋭い音を展開している。
 2曲目の「Jamie」はタイトル通りジャマイカンな音。こちらはバードの哀愁あるペットの音が気持ちいい。決して目立たない程度に細かく叩かれているパーカッションがカラダにグッとキます。
 3曲目の「The Little Rasti」はこれまたライトなファンクというか、静寂のグルーヴ。ギターがとっても印象に残る。
 たった全3曲であるけれど、どれも尺が長くたっぷり聴ける。とはいえ、没頭するとすぐに聴き終わってしまうけれど・・・。バード作品的にはあまり有名でもなく、ある意味スゴい作品なので、聴く方を選んでしまい兼ねないけれど、DJしてて、このアルバムをかけると、必ずと言っていい程、「誰の作品?」って聞かれたアルバムでもある。

Dorothy Ashby / In A Minor Groove

 ハープ奏者、ドロシー=アシュビーの58年のカルテット作品。
 ドロシーのレコード言えば、これとほぼ同時期の「Hip Harp」と音源ネタ的にプレミアのついていた「Afro-Harping」が有名だし、どちらもグルーヴィーな作品。しかし、この「In A Minor Groove」の名前の通りのマイナー感というか、ちょっとしっとり美しい演奏がたまらなくイイ。
 ハープ&フルートという、これまたフワフワ定番楽器だし、フルートはフランク=ウエス。A-2の「You'd Be So Nice To Come Home To」はヴォーカルナンバーとしては定番な楽曲を、ハープ&フルートで綴られるインストがとてつもなく心地よい。事実上のタイトル曲である、A-3の「It's A Minor Thing」はその名の通りマイナー調のナンバーであるが、キレイだし大好きだ。
 ジャケ写のミドリ感が好きというのもある。プレステッジ系のニュージャズレーベルからのリリースなのだけれど、この50年代後半から60年代にかけて、こういうジャケットが多かったのも事実だけれども、この辺りの雰囲気が大好きだ。
 ジャズ系のハープ奏者はほとんどいないと言ってもいいけれど、このドロシー=アシュビーとアリス=コルトレーンは大好きな方々だ。アリスはもちろん、コルトレーンの奥様。

Lem Winchester / Another Opus

 ヴィブラフォン奏者、レム=ウィンチェスターの60年のリーダー作。
 若くして他界してしまったので、作品も少ないが、なかなかキレイなヴィブラフォンを聴かせてくれている。この作品は同じくヴィブラフォン奏者である、ミルト=ジャクソンの「Opus de Jazz」をかなり意識した作りで、メンバーもドラム以外は同じ。
 まあ、この辺りのことについてはもっと詳しい方々が色々語っておられますので、そちらを参考にして頂くとして、とにかく、大好きなフワフワジャズ系ということ。フルート&ヴィブラフォンの組み合わせはホント好きだ。
 ミルトとレムの、この「Opus」に関しての違いをあげるならば、音のタッチ。ミルトはしっとり染みる叩き方に対して、レムは弾けてる感じがあって、活き活きしている。フルートはどちらも大好きなフランク=ウエスなので言うこと無し。
 好きな曲を一つあげるならば、B-2の「Like Someone In Love」。バラードでゆったり気持ちいいです。以前紹介した土岐麻子のアルバムで、彼女もカヴァーしてた。
 最後にジャケですが、持ってるのはアナログで黄色に赤で、買った時にオリジナルジャケ仕様となってたので、この配色が正しいんだと思うのだけれど、現在販売されているCDはモノクロです。その代わり、ボーナストラックが1曲アリ。

Pepper Adams / Encounter!

 サックスプレーヤー、ペッパー=アダムスの69年のクインテット作品。
 サックスと言っても、アダムスさんはバリトンサックスプレーヤー。個人的にサックスのブロウ音で1番ツボなのがバリトンサックスのブロウ音。ライヴなんかで体感すると、それはもう、カラダの芯からグッと震えさせられる心地よさというか何と言うか。
 さて、この作品、メンバーは豪華で、アダムスをはじめ、トミー=フラナガン(p)、ロン=カーター(b)、エルヴィン=ジョーンズ(d)とこの4人はデトロイト出身のカルテット。そこにカリフォルニア出身のズート=シムズ(ts)の加わったクインテットとなっている。69年という年代にしてはガチガチのモダンジャズできっちり聴ける作品。
 まあ、バリトンとテナーがメロディを引っ張ってるので、割と低音気味な音だらけではあるけれど、2人ともブロウしまくっているし、とっても楽しい音。途中キラリとフラナガンのピアノが高音を運んで来てくれる感じもまた嬉し。
 テナーのズートとは彼のリーダー作でもよく共演してるし、アダムスの最後の作品はカリフォルニア録音ということもあり、西海岸サウンドも随所で垣間見ることも出来る。
 他にも多数の共演があったりするアダムスだけれど、バリトンサックスだけに地味かも。しかし、バリトンサックスはソロもイイし、ジャズにおいて、低音のリズム隊を支える役目と共に楽曲の深みを増してくれる大切な楽器だ。そういう、ちょっと視点を変えて聴いてみることも楽しいのがジャズだし。イイ1枚。

Pat Martino / Desperado

 ジャズギタリスト、パット=マルティーノの70年の作品。プレステッジレーベルから。
 マルティーノと言えば、そのギターテクニックの凄さと完璧な演奏にあると思うし、どの作品を聴いてもスゲエ!って感じるギタリスト。彼の作品は結構持っているのだけれど、今回この「Desperado」を選んだのは、ちょっと特殊な作品であり、個人的ツボなラインをバッチリ突いている作品だということ。
 まず、マルティーノさんのギター。全曲12弦のエレキで弾いてます。これがすんごい速いテクニック満載のプレイでもポワ〜ンとした雰囲気を生み出していていい感じ。それにプラス、鍵盤も全編エレピだし、もう一つのポイントのソプラノサックス!、これです。
 12弦エレキにエレピにソプラノサックスという高音キレイ系部隊揃い組な珍しい作品なんである。
 アルバム全体の流れとしては、かなりテンポも速めでマシンガンジャズっぽい感じで、決してしっとりじっくり聴き入ってしまうタイプの作品ではないけれど、とても引き込まれてしまう音をしている。ギターは途中インプロヴィゼーションの如くイッた感もあるがそれも含めて凄くイイ。
 唯一のバラード曲、「A Portrait Of Diana」はじっくり聴けますよ。ともかく、12弦エレキあっぱれな作品だ。

Mondo Grosso / Family

 モンドグロッソの95年の作品。マキシ・シングル。
 デビュー以来、大好きで作品も全部チェックしているし、どれもイイのだけれど、個人的に思い入れがあるのが、このヒューバート=ローズの名曲である「Family」のカヴァー曲。アルバム「Born Free」にも収録されているけれど、あちらはアルバムエディット版なので、断然フルでキレイなシングルでないとダメだ。
 カヴァーではあるけれど、かなり原曲に近い仕上がり。だけれども、モンドグロッソらしさというか、大沢伸一らしさは楽曲の随所に現れている。音圧がこの時期のモンドグロッソらしいというか、ジャジー&ソウルフルで心地よいミディアムテンポの曲だ。
 もう何度聴いたか分からないし、アナログで持っているのだけれど、とっても大切にしているレコードでもある。完全に自分の中での定番曲化している。
 DJ時代も必ずかけてたりして、サビの部分からオリジナルのヒューバートのヴァージョンにミックスしたりして遊んでいたのだけれど、ほとんど誰にも気付かれなかった記憶がある・・・。逆にそれだけ、原曲に近いことが分かって頂けると思う。
 とにかく大好き!この一言な曲。もしも、渋谷FMを聴ける範囲にお住まいならば、毎日流れてますよ。

Monty Alexander / Yard Movement

 ジャマイカ出身のピアニスト、モンティ=アレクサンダーの96年の作品。
 レゲエで有名なアイランドレコードがよりジャマイカに密着した音源をということで設立されたアイランドジャマイカ内にジャズもってことで出来たアイランドジャマイカジャズレーベルの第一弾作品がこの作品。
 モンティは60年代よりジャズピアニストとして多数のアーティストと共演しているし、リーダー作も素晴らしいものがたくさんある。
 で、この作品はレーベルのイメージと同じく、ジャズではあるけれど、ジャマイカンフレーバーたっぷり。1曲目はボブの「Exodus」をフリージャズの如く自由にプレイしつつ、途中からレゲエお馴染のゆったりとした2トーンのビートが加わってくる。
 しかし、このアルバムで1番大好きなのは5曲目の彼のオリジナル作である「Love Notes」。もちろん泣ける名曲です。レゲエといったリズムなのだけれど、ピアノのメロディが気持ちいいし、キレイ。同じくジャマイカ出身のギタリストでこちらも大好きなアーネスト=ラングリンのプレイもイイ。ピアノとギターの交互の掛け合いがたまりません。
 コテコテのレゲエでもなく、ジャズでもなく、とにかく聴いていて楽しいし、心地よい。昼間も夜中も似合う音だ。
Yard Movement

Michael Franks / Sleeping Gypsy

 ヴォーカリスト、マイケル=フランクスの77年の作品。言うまでもなく、彼の代表的なアルバムであり名盤である。
 とってもカッコイイし、お洒落。ところが、かなり長い間聴かず嫌いな作品でもあった。理由として、まず、フュージョンが嫌いだったこと。オッサンが聴く音楽は聴いておれん!という気持ちが昔あったもので・・・。それとこのジャケットだ。木々の生い茂る写真をオレンジにしているみたいだけれど、何か、今イチだなーとずっと思っていた。
 実際名盤とは知っていたけれど、ほとんど売れないアルバムでもあった。ジャズ担当だった頃、このアルバムの追加オーダーをほとんどした記憶がない。
 さて、そんな感じだったのだけれど、変わったのは、はやり実際にきちんと聴いてから。とろける声で何でこんなに上手いんじゃ!と思ったものである。サウンドも完璧なまでのフュージョンなのにすこぶるイイ、と。メンバーを見れば、サンボーンにブレッカーにカールトンにジョー=サンプルと、完璧ではないか!とまた驚く。もちろん、マイケル自体も凄いのだけれど。
 これだけのメンバーでこれだけの楽曲やってもらえばそれは嬉しいし、気持ちいいはずです、うん。たまーに凄く聴きたくなって、ヘヴィーローテーションな時期が年に何度か訪れるアルバム。全曲いいけど、好きなのはやっぱり1曲目の「淑女の想い」ですな。

Hoagy Carmichael / The Stardust Road

 ピアニストでありヴォーカリスト、そしてコンポーザーであり、俳優でもある、ホーギー=カーマイケルの49年の10インチ作品。録音は39年から47年にかけて。
 ホーギーといえば、何と言ってもジャズの超スタンダードナンバーである「スターダスト」の作曲者であるということ。コンポーザーとしては有名だけれど、彼の音源というのは特にCDではほとんどない。このアルバムも昨年ようやくCD化されたばかり。
 ピアノでの弾き語り中心で奏でられる全8曲はめちゃめちゃまったりとフワ〜ッと楽しめる内容。録音自体が古いせいもあって、音的にちょっと籠っているのもフォーキーな味が出てていい感じ。ユルくてスィンギーでもある。好きなのは口笛もキレイな「ロッキン・チェア」。もちろん、「スターダスト」も収録されてます。
 1曲目である「ホンコン・ブルース」は細野晴臣が76年にアルバム「泰安洋行」の中でカヴァーしていたりもする。楽しくて渋い曲だ。
 全曲彼のオリジナル作品であるけれど、楽曲のクオリティはもちろん高いのであるが、それよりも彼のピアノと声がとてもお気に入りである。初回プレス完全限定というんじゃなくて、普通に売って欲しい。
 最初に俳優とも記したけれど、40年代から50年代を中心に結構いろいろな映画に出演しているみたいで、役者としても人気があったようだ。

Joe Pass / For Django

 ジャズギタリスト、ジョー=パスのタイトル通りジャンゴに捧ぐ作品。64年録音。
 ジョー=パスといえば、ソロワークが有名だし、素晴らしい作品がたくさんあるけれど、このアルバムも名盤と呼ばれているし、それはそれは渋い1枚だ。
 彼のプロフィールの紹介などには、好きなギタリストはチャーリー=クリスチャンとなってるし、ジャズギター界でも並び称されて2大ギタリストと言われることもある。しかし、彼が最初にジャズ自体に興味を持ったのが、ジャンゴ=ラインハルトの作品。9歳の時だったそうだ。
 で、自分のルーツをたどる意味でこの作品が録音されている。変則カルテット作品で、2ギターで演奏されているのだけれど、それだけジャンゴのギターが凄いということでもある。
 アルバム中、一番好きなのはもちろんジャンゴの作品である「哀愁の花」。リズムがちょっとラテンな具合がとってもイイ。
 ジョー=パスのギターの弾きは独特で、その音はとっても優しい。元々、個人的にエレキギターのフロントピックアップの籠った感じの音というのはあまり好きではなくて、自分で弾いてた頃も絶対にリアのピックアップから音を出していたのだけれど、彼のプレイを聴いてから、フロントピックアップの暖かみのある籠った音が大好きになったのであった。

Fred Astaire / Mr. Top Hat

 歌とダンスで30年代のアメリカで輝かしいスターであった、フレッド=アステアの56年の作品。タイトルは彼の当時の愛称であった「ミスター・トップ・ハット」。
 元々ミュージカルや映画の大スターであった彼に目を付けた、この作品のリリース元でもある、ヴァーヴレコードのノーマン=グランツがジャズをバックに歌わせたら!?というアイデアを元にしてジャズシンガーの道を歩むことになったので、少し大スターの時代からはタイムラグがあってのリリース。
 映画やダンスのアステアというのは話に聞くだけで全く観たことないんであるが、このアルバム、極上のジャズヴォーカル作品だ。
 テンポの良さというか、スタッカートの効いた軽快なアステア節がポーンとカラダの中に飛び込んで来てグッと来る。もちろん、彼の得意なミュージカルナンバーをジャズタッチにした作品がほとんどを占めているのだけれど、とにかくカッコイイ!
 途中にタップの音もソロで入ってたりして、その時代を知らない人にはかえって新鮮な響きだ。バックのジャズコンボも50年代らしいスモールコンボで、スィンギーで気持ち良く、とっても聴きやすい。ラスト2曲はオスカー=ピーターソンのナンバー。ピーターソンのピアノプレイをご存知の方ならば、想像はつくと思うのだけれど、これがタップと抜群に合うのである!
 何だろう、この素晴らしさは!!である。とにかく大好きだし、周りの色んな人にススメて来てるけれど、近年で一番反応のいいヴォーカルアルバム。初心者の方にもバッチリ。

Novi Singers / Novi In Wonderland

 ポーランドのコーラスグループ、ノヴィ・シンガーズの68年の作品。ドイツのMPSレーベルからのリリース。
 98年に日本盤のCDが発売されるまでは、ホントに幻のアルバム扱いで、中古屋でもほとんど売られてなかったし、売っていたとしてもかなり高額な価格設定だった。それだけ珍しいというか、通やマニア向けなアルバム的存在であったけれど、実はとっても聴きやすくて、それは美しいスキャットアルバム。
 ジャズのスタンダードナンバーを中心にしっとりとムーディーな抜群のハーモニーたっぷりの9曲。中でも超定番な「Satin Doll」と「Lil' Darling」は大好きだし、他のアーティストの演奏とは全く違った心地よさがある。
 最初にコーラスグループと書いたけれど、全曲スキャット&演奏で、歌詞を歌っている曲は1曲もない。そういう意味では歌モノではなくてインストアルバムと言った方がいいかもしれない。とってもジャジーだけれど、イージーリスニング的なアルバム。ソファーでくつろぎながら、まったりと過ごす深夜に聴くのがピッタリなサウンドだ。

Dick Morgan / See What I Mean?

 ピアニスト、ディック=モーガンの60年録音のピアノトリオ作品。
 先日紹介した、キャノンボール=アダレイに見いだされた人物。プレイ的にはとても弾んだ、ファンキーな音を聴かせてくれるピアニストである。この作品ではトリオ作品だけあって、モーガンのピアノをそれはじっくりと楽しむことができる。
 スタンダードナンバーが多いのだけれど、リズム隊がベーシックにきっちり刻んでいる上に、しっとりとした曲であっても、モーガンのピアノには華がある。キレイだし、とても楽しくなる演奏なんである。
 レーベルは西海岸の名門、リバーサイド。このレーベルにもハッキリとした音のカラーがある。低・中・高の音のバランスがキレイでちょっと高めの音がくっきりって感じかな。イメージ的にもピアノの作品が沢山浮かんでくるし、ピアノの音色に臨場感がある。
 ディック=モーガン自体は自分の中ではピアニストできっちり印象があるのだけれど、実際のところ、世間的にはあまり知られてないようだ。ジャズ好きを除くと・・・。是非機会あれば聴いてみて欲しい。ホントに楽しい演奏だ。大好きな「Lil' Darling」も入ってて泣けもするし。

Kenny Burrell / Tin Tin Deo

 ギタリスト、ケニー=バレルの77年のトリオ作品。
 ケニー=バレルといえば、やはり「Midnight Blue」に代表されるブルーノート作品が有名だし、聴いてもカッコイイのに加えてジャケットもイイ。で、この作品、コンコードという日本ではマイナーなレーベル、ジャケも単なるアーティスト写真っていうのが多いんだけれど、中々、隠れた名作があったりするんである。
 何よりタイトルとなっている、「Tin Tin Deo」という曲が大好きで、一時期、この曲が演奏されているアルバムを集めたことがある。ディジー=ガレスピーをはじめ、やはりホーンで奏でられた作品がほとんどの中、ケニーの、このギターでの演奏は新鮮であり、ある意味でショック!をもたらしてくれた。何と言えばいいか、とにかく、地味なのだ。
 「Tin Tin Deo」ってアフロキューバンでピップな曲であるが、このケニーのトリオでのギターではとてつもなく渋く聞こえてくる。それがすこぶるイイんである。 
 1つの曲ばかりの良さを力説してしまったけれど、このアルバムの全8曲、ギタートリオとしての味のある作品。もちろんケニーのギターテクニックの凄さは言うまでもない。

Joe Derise / Joe Derise Sings

 シンガーであり、ピアニストでもある、ジョー=デリーズの55年録音の1stアルバム。
 実はつい最近知ったアルバムなのだけれど、これが極上の1枚。まず、ジャケット。レーベルがベツレヘムなのだけれど、ブルーノートがリード=マイルスならば、ベツレヘムにはバート=ゴールドブラットという天才がいた。このパッと見濃い青にしか見えない写真はじっくり見ると、それは素晴らしい写真だ。サウンドは当然のようにジョーの歌の渋さというか、すんなり上品で聴きやすい声は泣きそうな嬉しさに襲われる。
 彼は弾き語りアーティストとして有名なのだけれど、この作品はトリオでの演奏で、歌を抜きにしても、ピアノトリオのジャズアルバムとしても秀逸な作品だ。
 楽曲的には55年という時代もあって、ミュージカル曲がほとんど。軽快なテンポのものから、しっとりスインギーなものまで、それはキレイな8曲を聴かせてくれる。ジャズヴォーカル好きな方、もしくはこれから聴いてみたいという方には間違いなくオススメできる作品だ。
 ちょっと脱線するが、スタトレファンの方、特にDS9好きであれば、ストーリーに登場するボログラムジャズシンガーである、ヴィック=フォンテーンがしっとりとした曲を歌ってる場面に、ちょっとジョーの歌は似ているかも知れない。

Asako Toki / Standards

 昨年末解散したシンバルズのヴォーカル、土岐麻子の1stソロアルバム。先月のリリース。
 えー、昨日買いまして、本日は朝からずっとほとんどこのアルバムのリピートでした。前にここでシンバルズのアルバムを紹介したのだけれど、その時、声と楽曲のバランスがツボになったと記したんだけれど、今作はそれをはるかに上回る程のツボ。ジャジーでありつつ、さわやかなポップさがたまりません。
 本人曰く、ずっとジャズタッチな作品を歌いたかったそうで、全曲カヴァー曲なのだけれど、「My Favorite Things」から始まるこの選曲もイイ感じです。アースの「September」も軽やかジャズテイストであったりで、この辺りが単なるジャジーではない、ポップさもアリという面白い作品となってます。
 今後はオリジナル作品でもこのような路線でガンガンリリースして欲しい気もするけれど、ジャジーなのはひとまずこの作品で区切りを付けて、色んな楽曲にチャレンジしていくそうである。シンバルズの解散はショック!だとか、残念という声がたくさんあったみたいだけれど、これを聴く限り、全然どうして、この先がどうしようもなく楽しみでしょうがない。
Standards〜土岐麻子Jazzを歌う〜 - EP

Cannonball Adderley / Somethin' Else

 キャノンボール=アダレイ、58年録音の言うまでもない名盤。ブルーノートNo.1595。
 ジャズをお好きな方ならばご存知の通り、実質マイルスのアルバム。契約の問題上、マイルス名義で出せないとの理由からアダレイのリーダー作になってます。確かにメチャメチャマイルスの音に仕上がっているし、大好きな「枯葉」もミュートペットがこの上なく渋い。
 という感じでマイルスてんこ盛りな作品なのだけれど、それにもかかわらず、すんなり名義貸しをしたアダレイが逆にカッコイイというか、紳士というか・・・。もっと言うと、マイルス、マイルス言わずに、せっかくリーダー作となっているアダレイにも、もっと注目してあげて!って気持ちになるのだ。
 この作品は全体的にクールでちょっと抑え目な音なんであるが、アダレイ本来のプレイはブロウでソウルフルなフレーズが魅力のサックスプレーヤー。「Mercy,Mercy,Mercy」とか大好きだったりする。弟のナット=アダレイもいいトランペッターでありコンポーザーだ。
 とにかく名盤であり、すばらしい音が詰まっている作品には間違いない。それと同時にアダレイへの興味をもたらしてくれた作品としても個人的には嬉しいアルバムだ。
Somethin' Else

Sonny Clark / Cool Struttin'

 ピアニスト、ソニー=クラークの58年録音のカルテット作品。ブルーノートNo.1588。
 ブルーノートでピアノジャズといえばこの作品!って位の有名でもあり、ジャケットの女性の脚というのはブルーノートのジャケットワークのある種の象徴のようにもなっている。こと日本での評価というか、知名度は高く、当時のジャズ喫茶の定番アルバムとなっていたらしい。
 そんなこのアルバムであるが、発売当初のアメリカでは酷評を受け、さんざんだったそうだ。個人的な見解としては、グッとくるインパクトってものはそこまでないものの、聴きやすさという点では素晴らしいと思う。
 突出した鋭さよりも、全体のバランスとしての聴きやすさがイイというのは日本で受け入られやすかった要因でもあると思う。90年代に入って、一部の日本の評論家が、この作品はクラークらしさが足りないと言い、賛否あったみたいだけれど、50年近くもの間、皆に親しまれ聴かれ続けてきた事実がこの作品の良さを表しているのであろう。
 名盤でよろし。何と言っても、音とジャケのバランスという点での素晴らしさにおいてはピカイチ。A-2の「Blue Minor」が大好き。
Cool Struttin' - EP

Charles Mingus / Mingus Plays Piano

 ベーシスト、チャールズ=ミンガスの63年録音のピアノソロ作品。
 驚異のフレーズを連発する天才ベーシストとして有名ではあるけれど、実は様々な楽器を奏でるマルチプレーヤーという顔も持っているミンガス。しかし、今作のピアノソロというアルバムはそれでも珍しい1枚だ。
 「直立猿人」や「5ミンガス」など、ガンガン攻めるベースの作品も大好きではあるが、この鍵盤の限りなく優しくて静かな音が詰め込まれた作品はとても心地よい。
 割と巨漢でもある彼がどうしてこんなやさしいピアノを奏でるのであろうか!?って不思議になるくらいのギャップがまた何とも嬉しくなってしまう。インパルスレーベルからのリリースなのだけれど、それもまた面白いよなーって思える。
 なかなか入手しにくいとは思うけれど、是非アナログ盤で聴いてみてもらいたい。ピアノソロのウォーム感がより一層引き立ちます。
Mingus Plays Piano (Impulse Master Sessions)

Herbie Hancock / Maiden Voyage

 ハービー=ハンコック、65年録音の言うまでもない名作。ブルーノートNo.4195。
 やはり、アシッドジャズのモロ世代であるだけに、ハンコックと言えばファンキーなピアニストというイメージが大きいし、ずっとワーナーやCBS時代の作品が好きだった。
 とはいえ、ブルーノートは大好きなレーベルなので、ハンコックを含め、一通りの作品は聴いてきていたのだけれど、この時期のハンコックはスタンダード時代という認識程度でじっくり聴いてはいなかったというのも事実。
 最近、レコードの整理をした時にこの「処女航海」が出て来たので久々に聴いてみると、とっても深い作品なんだなーと改めて実感したというところ。何より、ピアノが目立ってないのがイイ。しかし、ピアノ抜きでは考えられない音でもある。全然隠し味的でもなく、もちろんピアノはピアノでしっかりと刻まれているけれど、このクールな鍵盤の音こそが、この時代のハンコックらしい音ざまなのだな、と。
 ジャケットでいうと、最近はオリジナルジャケットが当り前に復刻してるけれど、最初にこのアルバム見た頃は青っぽくて、中古屋でたまにこのオリジナルな緑ジャケを見かける程度だった記憶がある。
Maiden Voyage (The RVG Edition)

Ann Burton / Blue Burton

 オランダ人ヴォーカリスト、アン=バートンの67年の作品。
 70年代にはよく来日していたりしたこともあって、日本でも人気が高く、ジャズヴォーカルこれを聴け!みたいな特集があれば必ずと言っていい程取り上げられる作品でもある。
 とってもしなやかでキレイな彼女の声はとっても聴きやすい。これからジャズ系をという方にも間違いなくオススメできる。
 って、こんな評論めいたことを書いておきながら、つい最近購入したのである。そりゃ昔から知ってはいたもののある種、定番的作品だけに、いつ買ってもいいやって感じで何年も過ごしてきたという次第。
 やっぱり改めてじっくり聴くとイイね。アメリカのジャズとは違う、独特のヨーロッパなテイストがあってとっても気持ちいい。
 先日、打合せの時にこのアルバムを流してて、来てたジャズはほとんど詳しくない方がとっても気に入ったみたいで、「買います」と言われて帰路につかれた。ホント、それだけ初心者の方でもオッケーなんですな。
 この作品のフェイバリットはやはり「サニー」でしょう。JBバージョンと双璧をなす感じで大好きだ。
 最後に、買うならオランダ盤をどうぞ。すこぶるナイスプライスな上に、ボーナストラックも収録されててかなりお得です!

JuJu Kneipp / Algolagnia

 EGO-WRAPPIN'、中納良恵のソロユニットであるJuJu KNEIPPの2000年リリースのマキシシングル。
 クリーチャーズの栗原務との共同プロデュースだとか、作品に関する詳しい説明はこのサイトの表の日記チックな欄にリンクを張っておいたのでそちらを参照頂きたい。
 さて、EGO-WRAPPIN'は個人的にはあまりピンと来ていないのであるが、中納良恵の声は大好きなのだ。特にこのジュジュクナイプとスピードメーターの作品に参加してる曲はモロにツボな声。エゴの時とは違って、ちょっと抑えつつ、声量を活かしたハスキー加減が何とも心地よいのである。
 このアナログは2000年当時よく回してた記憶がある。ラジオ番組でもかけてたし。で、「これ誰?」ってよく聞かれていた。今でこそエゴが結構知られてるし、関連系探す方達であれば分かると思うけれど、この頃はまだまだ知られてなかった。 
ジュジュクナイプ名義ではこの1枚しかないのは残念ではあるけれど、本日のライブを観る限り、復活もありそうで期待できる。すげえカッコ良かったよ!

Gina Griffin & Chris Powell / Reunion

 ムーンフラワーズのボーカル&フィドル奏者であるジーナ=グリフィンとビッグ・フィッシュ、ループ・フォースのギタリストであるクリス=パウエルによる99年にパリのバーで行ったライヴアルバム。2001年リリース。
 ジャズの名曲のカヴァーで構成されてるんだけれど、楽器がフィドルとギター、声だけに何とも独特の雰囲気が漂っている。いきなり声がメロディになってる「Caravan」からスタートし最初から震えさせてくれる。
 アルバムの中でフェイバリットなのは元々大好きである「My Favorite Things」と「 A Night In Tunisia」。ギターがリズム楽器になってて、メロディをフィドルや声がとるという、何とも1920年代的ジャズな懐かしさと新鮮さが混ぜ合わさった感じが心地よい。
 いろんなレヴューでジャンゴ=ラインハルト&ステファン=グラッペリの再来のようだと評されているのも納得できる。
 限定発売だったんだけれど、今でもどこかで手に入るかも・・・。是非聴いてみて欲しい1枚だ。

Lorez Alexandria / Deep Roots

 ジャズシンガー、ロレツ=アレキサンドリアの62年の作品。
 彼女のインパルス盤は知ってたんだけれど、このアーゴ盤は実はよく知らなかった。2000年の日本盤CDの発売が初のCD化ということで、ヴォーカルマニアの間では幻の1枚だったそうだ。
 この作品を一言で表すなら、キレイ。女性のジャズヴォーカルではわりと低音で声の太いシンガーが好きなんだけれど、ロレツはその正反対というか、高音めで線の細いキュートでハスキーな声をしている。で、クセもなく、とっても歌が上手い。
 また、バックの演奏がシンプルで美しくカッコイイのだ。60年代のイカしたジャズ!って感じが漂っている。
 楽曲的にはスタンダード系の選曲。中でもコルトレーンもやってる有名曲の「朝日のようにさわやかに」がお気に入り。コルトレーンヴァージョンとはまた一味違ったテンポのいい心地よさがある。
 最近では久々にかなりお気に入りなジャズな作品。

Bob Dorough / Beginning To See The Light

 ピアニスト&ヴォーカリストであるボブ=ドロウの76年のライヴ作品。
 コンポーザーとしても有名で数多くの楽曲を提供しているし、テレビ番組やCMなどの曲も手がけている。また、子供向けな楽曲も得意という面白い人だ。
 この作品はピアノに声にベースという、とってもシンプルな構成。彼の作品の中でもかなりポップなサウンド。ピアノがブギウギな感じで踊ってるし、独特な声がまた渋い。そんな中で数曲に一度はさまれる、ムーディーな曲がこれまたジャジーでうっとりって感じだ。
 ジャケに関してはちょいとどうか!?って気もするけれど、裏面のモノクロの練習中の模様を撮ったショットがすごくいい雰囲気が出てて、こっちは大好き。
 ビートルズの「ノルウェーの森」のカヴァーも入ってるんだけれど、ボブ風の軽快なピアノで嬉しい感じに聴かせてくれる。ビートルズの曲で1番好きなんだそうだ。
 ピアノ的側面からばかりで書いたけれど、実はベースが重要なポイントになっている。目立ってはいないけれど、ビルのベースがボブの歌とピアノを引き立てている。

Bill Evans / Waltz For Debby

 ピアニスト、ビル=エヴァンス61年の歴史的名盤。
 ピアノトリオの作品としては名盤で定番で一番売れてるし、聴いて間違いなく誰にでもオススメできる。ホントに優れたアルバムである。ジャズのことをよく分からないとか、初心者の方でもこれから聴きはじめれば、絶対にジャズが好きになれる、そんな作品。
 このアルバムをダメだとか、批判してる人やレヴューに出会ったこともないし、言う気にもならないと思う。聴きやすくて、素晴らしさもよく分かる。通的には良すぎてマニア心をくすぐられないってところかな!?
 ジャズ界ではベースのスコット=ラファロがこのライヴレコーディングの10日後に亡くなっていて、エヴァンスとラファロの名コンビの最後の作品なんて語られる。この2人でないとダメだ、なんて言う人も居るくらいだ。
 個人的には70年代の作品とかも大好きだし、ソロとかギタリストのジム=ホールとの作品もイイ。だけど、とりあえず、間違いない、とにかく聴いておけ!作品としてこのアルバムは必要だ。
 気に入ったら、是非彼が演奏している映像も観てみて欲しい。震えるほど渋いから!

Courtney Pine / Modern Day Jazz Stories

 サックスプレーヤー、コートニー=パインの95年の作品。
 まず、彼の演奏スタイルがコルトレーンに強い影響を受けているということもあって、テナーにソプラノの音色が大好きなラインということ。そして、いわゆる昔ながらのジャズな雰囲気を残しつつ、さまざまな音のエッセンスを取り込んでいる彼の前向きな姿勢。
 この2つが凄いしイイなぁと思う。その上で聴けば素直にカッコイイ。特にこの作品は何度も聴いているし、今現在でも新しい音だと思う。
 特に「I've Known Rivers」はフェイバリットなナンバーで12インチも持ってるんだけれど、かなりすり減っている。ソプラノサックスとピアノ、ヴォーカルの何ともアーバンな響きがたまらなく心地よい。
 今回掲載しているジャケットはUK盤のオリジナルで普通出回っているものはアメリカ盤のジャケでここに載っているものとは雰囲気も違ってます。もちろんUK盤の方がカッコイイと思うんだけれど・・・。
 年内に新作が予定されているようなので、そちらも物凄く楽しみだ。
Modern Day Jazz Stories

Monday Michiru / Delicious Poison

 Monday満ちる96年の4thアルバム。
 ここ2年ほど、オリジナルの作品はリリースされていない彼女。今までの作品全てを持っているのだけれど、どれか1枚と言われれば絶対にこのアルバムを取り出す。
 あっ、他がダメとか言うんではなくて、全部イイ。だけど、レコーディング作品としてはこの作品だけちょっと異質というかリアルというか・・・。唯一のバンド作品なのである。
 ベースを、大好きでありずっとマンディの盟友でもあったモンドグロッソ大沢伸一が弾いているというのもこれまたイイ部分。
 他の作品では打ち込みがかなり多用されてているけれど、この作品ではエレクトリックは含まれているけれど、バンドと声のナマのグルーヴが聴いていて素晴らしい高揚感をもたらしてくれる。
 1曲目の「Black Rose」のイントロからいきなり震えます。人間が実際にカラダを動かして楽器を奏でて音を出す人力感の説得力というか、凄さはやはり何モノにも代えられないと再確認できる音だ。

Albert Ayler / Greenwich Village

 サックス奏者、アルバート=アイラーの67年インパルス第一弾となる作品。
 アイラーといえば、64年の「Spiritual Unity」がやはり素晴らしいし名盤だ。それと並んで名盤なのがこの「グリニッチ・ヴィレッジのアイラー」である。この作品で1番のお気に入りは実はジャケットなのであるが・・・。サイケ系ジャケの個人的ベスト2の1つ。もうひとつは13th Floor Elevatorsの1枚
 音であるが、テクニック云々よりも魂を聴けという感じ。1曲目はコルトレーンに捧げたナンバー。ちょっとミニマム的に聴ける部分もある。2から4曲目は繋がってはいないけれど、アメリカ南部を連想させる音だ。
 しかし、フリー系を聴いたことのない方にはススメにくいのも事実。メロディっていうより魂の叫びだからね。でもフリーの中では聴きやすい作品でもあると思う。
 アイラー初心者さんには上にあげた「Spiritual Unity」か、「Goin' Home」という黒人霊歌作品がいいと思う。
Live In Greenwich Village: The Complete Impulse Recordings

Jaco Pastorius / Jaco Pastorius

 ジャコ=パストリアス、76年の1stリーダー作。No.67のメセニーのアルバムでジャコがイイ!って言ってたんで、彼の1stであり、大好きなアルバムを。
 これだけベースという楽器の存在感に溢れている音はない!ってくらいにベースを感じ取れる作品だ。1曲目の「Donna Lee」っていうバードの曲なんかはよくベースで弾いているとは思えない、なんてコメントを目にするけれど、逆にこれが本来のベースの音色なんだと主張している音だと思う。
 これ聴くとハードロックなんかの単調で早いだけの音はつまらなくてしょうがない。元々ジャコを知る前からうねるベースラインが大好きだったから、まさにド真ん中のストレートって感じに耳に飛び込んでくる。うねりだけではなくて、スピーディーだし、メロディアスでもある。
 ベース好きならば定番中の定番だと思うんで、ここはリズム隊系の音をあまり意識したことのない方々に聴いて頂きたい。間もなく意識改革がなされること間違いないでしょう。

Pat Metheny / Bright Size Life

 パット=メセニー、75年の1stアルバム。
 元々、メセニー的なギターサウンドはあんまり好きではなくて、オッサン御用達的なマイナスイメージを持っていた。それが変わっていったのが、タイトル忘れたけれど、グラミー賞を受賞した映像作品のヤツ。とにかくすさまじいパワーをその映像から感じ取って、これは聴かにゃいけん!と思った。
 で、これまたメセニーも作品が沢山あるから1stから聴けってことで、この作品。この作品の凄いところはメセニーもなんだけれど、やっぱりベーシストが大好きなジャコ=パストリアスってことかな。あとは好きなレーベルであるECMだしね。すぐ前に紹介しているNo.6266もECMです。
 音だけど、リズム系がいい。ジャコのうねるベースもECMっぽくもありつつ。もちろんメセニーギターも最初から相当キている。頭を振りながら必死に弾く様が想像できるようなプレイだ。
 ジャズじゃないな・・・。フュージョンでもなし。メセニーの音をしてる。聴きやすさでいうと、最近の作品の方がいいと思う。モロジャズな作品もあったりするんだけどね。個人的にはこの1stがイチ押しでございます。

Chick Corea / Return To Forever

 チック=コリア、72年のアルバム。
 フュージョンとして扱われることの多いこの作品。だけど、そうは思ってない。フュージョンという定義が自分の中では曖昧だし、ジャズの人の次のステップみたいな扱われ方が初期にはあるような気もするし。
 なんとなくだけどアバンギャルド的かな。自分の言葉で言えば「エレピが凄くカッコよくて鋭いが気持ちいい系」というような感じになる。
 エレピ・フルート・うた、この3つが心地よく絡んでいる。ブラジルの歌姫、フローラ=プリムの歌やコーラスがまた素晴らしいし。フリージャズのような即興的にいい意味で狂ったようなフレーズがあったりでそんな部分はまさにツボだ。
 やっぱりチック=コリアは演奏が上手いね。この作品が彼のアルバムの中で一番好きだけれど、スタンダードなナンバーを弾いてもとってもいい感じだし、キレイだ。

Keith Jarrett / Facing You

 キース=ジャレット、71年の1stアルバム。
 彼のアルバムは大量にあって、ちょっと聴いてみたいなぁと思った場合、どれを聴けばいいの?ってなると思う。そういう場合は大抵75年の「ケルン・コンサート」なんかをススメられる。しかし、「迷ったら1stから聴け!」を勝手に信条としている身として、この「フェイシング・ユー」を彼の作品として最初にちゃんと聴いてみた。
 ピアノソロの作品としては全てのアーティストを含めて1番好きなアルバムだ。最初にレコードに針を落として音が飛び出して来た時の衝撃は今も忘れられない。メロディ、リズムと今までに聴いたことのない音だった。ビックリするのと同時にカッコよくて仕方がなかった。
 このアルバムはスタジオレコーディング。キースの作品と言えば、上記のケルンをはじめとするライヴの即興演奏の素晴らしさが語られるが、こやつはスタジオでの、ライヴに比べるとある種予定調和ともいえる雰囲気の中で、それを打開すべく思いっきりプレイしているように感じられる。
 それと、個人的にライヴ作品よりも普通のレコーディング作品が好きだというのもある。ライヴはその場で体感したいし、できない場合ならば映像が欲しくなる。
 彼は元々マイルス=デイヴィスのコンボで注目を集め、満を持して発表されたのがこのアルバム。当時も注目されていたし、名盤だとの声の多い作品でもある。

The Silhouettes / Conversations With The Silhouettes

 アメリカのジャズグループ、シルエッツの71年の作品。
 女性ヴォーカル&スキャットにフルート、ヴィブラフォンという大好きな組み合わせ。基本的にはジャジーだけれど、ボッサぽくもあり、ラウンジ的でもあり。ポップ過ぎる曲もあるけれど、フワフワ感は全体に漂っている。
 CDジャケットの印刷具合を見ると、明らかにブートっぽい仕様になってる。多分、CDは正式には存在しないのであろう・・・。しかし、盤面はキレイな印刷してあるが。
 ビートルズやマンシーニのカヴァーもありつつ、オリジナルもイイ感じ。ソフトロック的でもあるかな。フルートがとっても目立つサウンドをしてます。フルートとスキャットが絡んだ時のハーモニーがとっても気持ちいい。

Al Haig / Al Haig Quartet

 ジャズピアニスト、アル=ヘイグの41年のアルバム。
 95年にCD化されるまでは幻の名盤と言われる程の作品であった。作品的にもカルテット編成でギターが入っているという珍しさもあるし、プレイ的にもアドリブプレイの得意な彼にしてはほとんどアドリブがないことも珍しい。
 しかし、とても聴きやすい作品。41年の録音と、いまから60年以上前の作品だけに、音が独特なちょいとこもった感じがあるのがまたフワフワさせてくれてイイ。
 いつもエレピの音が大好きでやたらイイ!を連発しているけれど、生のピアノの音も好きだ。ピアノって弦を叩いて音を出す、打楽器だし、メロディもリズムもできる、魔法の箱のようにも思える。そこに自分でも弾くギターと絡んだこの作品は聴いててホント楽しい1枚だ。
 余談だが、ジャズにおいてのギターのポジションは元々低くて、リズム楽器としてドラムやベースの補助的な役割に過ぎなかった。

Herbie Mann / Flautista!

 ハービー=マン、59年のアフロキューバンジャズな作品。
 個人的にフワフワなジャズの三種の神器として、フルート、ヴィブラフォン、パーカッションだと思っているんだが、それを完全に網羅したマストなアルバム。
 ハービー=マンと言えば68年の「メンフィスアンダーグランド」が有名だけれど、ああいうジャズロックタッチな作品よりも今作のようなラテンサウンドを意識されてくれる60年前後の作品が好きだ。
 これはジャズの名レーベルであるヴァーヴからリリースされてて、この時代のヴァーヴ作品はジャケがまたいい感じだ。
 5曲目ではスタンダード曲といえる、「キャラバン」をスピーディーかつエキゾチックなサウンドに仕上げていて、これまたいい。
 フルートのジャズはやはりツボだけに聴いてて気持ちいいし、大好きだ。
Flautista! Herbie Mann Plays Afro-Cuban Jazz - Live 1959

Wes Montgomery / A Day In The Life

 ジャズギタリスト、ウエス=モンゴメリーの67年の作品。
 ギタリストとしても大好きで、ほとんどのアルバムが好きな中でこの67年の「A Day In The Life」をここに紹介するのはもちろんフワフワだから。しかし、この作品を含め、この後のCTIレーベルからのリリースはイージーリスニング的サウンド色が強く、もっとフワフワ心地よいものもたくさんある。だけど、このアルバムが第一弾だというのと、あとはジャケ写真。
 タバコの吸い殻のドアップ。言ってみればゴミな状態のモノがカッコよく写る。この感覚が素晴らしい。
 タイトル曲であるビートルズの有名なナンバーをはじめ、軽快なギターサウンドに豪華なストリングスを絡めた、朝の目覚めのようなスッキリさわやかな感覚を味わえる。
 もちろんウエスのギタープレイの素晴らしさあっての作品であることは言うまでもない。
 CTIは一貫したコンセプトワークに基づいた運営をしていたレーベルで、ジャケのデザインもどれもとってもいい感じ。結構ジャケ買いでいろいろ持っているし、集めたくなるモノばかり。ジャケだけで作品展までできるレーベルだ。

United Future Organization / Jazzin' '91-'92

 United Future Organization(以下UFO)の92年にリリースされた最初のアルバム。タイトルは11年続いた彼らのパーティーの名前から。
 確か、深夜のFMラジオの番組で知った。すごくカッコイイ!というのと、No.5で紹介しているヴァン=モリソンの名曲「Moon Dance」のカヴァーをやってることで、即、買いに走った記憶がある。
 この92年頃は国内でクラブ的なものが盛んになっていた時期だけど、個人的にはまだまだギターを抱えたロック野郎な時代だった。だけど、カッコよく思えてすごく聴いてた。
 UFOはこの後もずっと音を追い続けているけれど、結局はこの最初の作品が好きだ。一番クラブっぽくない作品だと思うし、フワフワしている。
 これが最初にリリースされたレーベルは既に存在しない。アメリカのマイナーなメタルとかをリリースするヘンテコなレーベルだったんだけども・・・。一度再発されてたけれど、今は確か廃盤だ。海外盤なら入手可能みたい。

Tony Bennett / My Beat Of My Heart

 ジャズシンガーとしてはとても有名なトニー=ベネットの57年の作品。
 こういった大御所クラスになると、個人的にはスゴイとは思うのだけれど、音楽的にはコテコテ感が強すぎてそんなには聴かないのだけれど、このアルバムは好きだしカッコイイ。
 リズムセクションにアート=ブレイキー、キャンディッド、サブーといったアフロキューバン系を感じさせるメンバーが名を連ね、とても感情豊かなサウンドに仕上がっている。ドラムだけでなく、パーカッションが加わることによって、リズムの広がり方が自由になるし、聴いてて面白い。
 とはいえ、このアルバムとの最初の出会いは、こういう事情を知っていたからではなくてトニー=ベネットのアナログが再発されるという珍しさからであった。しかし、きっかけはそうでも聴いて大正解な1枚。

John Coltrane / Live At The Village Vanguard

 ジャズのアルバムということで初めて買ったのがこのコルトレーンのライヴ盤。
 コルトレーンについてはバラード系の聴きやすい作品とフリー系の激しいというか、人の理解を越えるような音というイメージのある人と2つにわかれるような気もするけれど、個人的にはどんな感じの音であってもコルトレーンの吹くサックスの音はコルトレーンの音!ってはっきり分かるんで、ジャンルだとか作品の感じ云々より、とにかくコルトレーンはコルトレーン。
 この作品ではソプラノサックスが多用されているけれど、ホント、ソプラノサックスのコルトレーンはすごく気持ちいい。エリック=ドルフィーがフルートでも参加しているのが、ソプラノの音に重なってこれまた管楽器の高音系好きにはたまらない。
 コルトレーンを聴く以前は実はフリーのキツイ系だということを周りから聞かされていたので、どんなにキツイのかという部分で楽しみでもあったし、聴けないかもと思ったりしてたんだが、聴くことによって一瞬で大好きになり、ジャズの世界へのめり込んで行くきかっけともなり、これ以後フリージャズ系もガンガン聴くようになっていった。
 普通、コルトレーン入門には「Ballads」と定番のように言われているけれど、絶対この作品からがいいと思う。いろんなレビューなんかにも、聴きやすくてオススメ!という文句が「Ballads」には付いてて、それはその通りなんだけれど、それ以後の本当のコルトレーンサウンドに耳を傾けずに終わってしまう可能性大だから。是非とも最初だって方がいらしたらこのヴィレッジヴァンガードをどうぞ。

Jazztronik / Set Free

 リミキサー、DJとしても有名な野崎良太のソロユニットであるJazztronikの最近発売された2ndアルバム。
 個人的に久々に打ち込み系というか、クラブ系というか、そんな感じの音を買ってみたのだけれど、これはイイ感じです。大音量とちっちゃな音と両方で聴いてみたところ、チープなスピーカーから流れてくるのも悪くないというか、ベッドルームミュージックとして小さい音で聴くのが適しているかも。パーカッションの音が強調されるんでチープなスピーカー、是非お試しあれ。
 大抵のサウンドを聴く場合、ベースとドラムという、リズムメインで聴いているから、こんな見解になるんだろうけれど。Jazztronikの場合は名前の通り、ジャズがメインですが、アフロだとかハウスだとかいろんなリズムが混じってて好きですな。
 じっくりヘッドフォンで聴くのもよし、チープなスピーカーで暗い部屋で聴くのもまたよろしというところかな。

Chet Baker / Chet Baker Sings

 トランペッター&シンガーであるチェット=ベイカーの歌モノを集めたアルバム。まあ、今更いろいろ説明するまでもない程有名だし、ともかく聴いたことが無いのなら聴いてくれ!としか言いようがないのだけれど、いいアルバムです。
 このアルバムに関しては2回程買ってる。知り合いに貸しては返ってこなくなる・・・。でも、やっぱり時々どうしようもなく聴きたくなってまた買ってしまうの繰り返し。
 最近はこのシングスに代表されるシンガーとしての彼に脚光があたっているけれど、トランペッターとしてというか、歌のない普通のジャズ作品もクールで奇麗な彼独特のペットの音がとってもいいです。特にフルートなんかの繊細な音と絡んだ曲はとっても好き。
 でもよく聴くのはやっぱりこのシングスになってるというのが正直なところかもね。
Chet Baker Sings