*music

sutero choice sound selection

Ochi Brothers / Beating The Earth

 越智義朗、越智義久の兄弟によるパーカッションデュオである越智ブラザースの2001年のアルバム。オノ=セイゲン主宰のサイデラレコードからのリリース。
 世界各地の太鼓という太鼓を変幻自在に操って、太鼓だけで奏でられた全10曲。この作品、何と表現すればいいのだろうか!?ホントにいろんな太鼓の音色が鳴っているのだけれど、不思議なことにちゃんとメロディがある!それに凄くキレイで自然と引き込まれていく魅力満載の音だ。
 兄弟という、DNAレベルでのコンビネーションの良さのなせる技なのか、抜群のタイミングだし、リズム感という部分においても素晴らしいとしか言いようがない。
 全体的にアンビエントっぽいのだけれど、それだけではなくて、さまざまな太鼓が使われていることもあって、土着的な、民族音楽を思わせる部分もかなりあったりで。
 それから、サイデラレコードは自分の所のサイデラ・マスタリング・スタジオが世界的に有名で、オノ=セイゲンの超人的マスタリングによって、曲ごとに臨場感がとってもリアルである。
 ゆったりとハマって聴くのもいいのだけれど、大音量、もしくはヘッドフォンでこの臨場感をしびれる程体感してみるのも賛成だ。

Michael Franks / Sleeping Gypsy

 ヴォーカリスト、マイケル=フランクスの77年の作品。言うまでもなく、彼の代表的なアルバムであり名盤である。
 とってもカッコイイし、お洒落。ところが、かなり長い間聴かず嫌いな作品でもあった。理由として、まず、フュージョンが嫌いだったこと。オッサンが聴く音楽は聴いておれん!という気持ちが昔あったもので・・・。それとこのジャケットだ。木々の生い茂る写真をオレンジにしているみたいだけれど、何か、今イチだなーとずっと思っていた。
 実際名盤とは知っていたけれど、ほとんど売れないアルバムでもあった。ジャズ担当だった頃、このアルバムの追加オーダーをほとんどした記憶がない。
 さて、そんな感じだったのだけれど、変わったのは、はやり実際にきちんと聴いてから。とろける声で何でこんなに上手いんじゃ!と思ったものである。サウンドも完璧なまでのフュージョンなのにすこぶるイイ、と。メンバーを見れば、サンボーンにブレッカーにカールトンにジョー=サンプルと、完璧ではないか!とまた驚く。もちろん、マイケル自体も凄いのだけれど。
 これだけのメンバーでこれだけの楽曲やってもらえばそれは嬉しいし、気持ちいいはずです、うん。たまーに凄く聴きたくなって、ヘヴィーローテーションな時期が年に何度か訪れるアルバム。全曲いいけど、好きなのはやっぱり1曲目の「淑女の想い」ですな。

Hoagy Carmichael / The Stardust Road

 ピアニストでありヴォーカリスト、そしてコンポーザーであり、俳優でもある、ホーギー=カーマイケルの49年の10インチ作品。録音は39年から47年にかけて。
 ホーギーといえば、何と言ってもジャズの超スタンダードナンバーである「スターダスト」の作曲者であるということ。コンポーザーとしては有名だけれど、彼の音源というのは特にCDではほとんどない。このアルバムも昨年ようやくCD化されたばかり。
 ピアノでの弾き語り中心で奏でられる全8曲はめちゃめちゃまったりとフワ〜ッと楽しめる内容。録音自体が古いせいもあって、音的にちょっと籠っているのもフォーキーな味が出てていい感じ。ユルくてスィンギーでもある。好きなのは口笛もキレイな「ロッキン・チェア」。もちろん、「スターダスト」も収録されてます。
 1曲目である「ホンコン・ブルース」は細野晴臣が76年にアルバム「泰安洋行」の中でカヴァーしていたりもする。楽しくて渋い曲だ。
 全曲彼のオリジナル作品であるけれど、楽曲のクオリティはもちろん高いのであるが、それよりも彼のピアノと声がとてもお気に入りである。初回プレス完全限定というんじゃなくて、普通に売って欲しい。
 最初に俳優とも記したけれど、40年代から50年代を中心に結構いろいろな映画に出演しているみたいで、役者としても人気があったようだ。

Joe Pass / For Django

 ジャズギタリスト、ジョー=パスのタイトル通りジャンゴに捧ぐ作品。64年録音。
 ジョー=パスといえば、ソロワークが有名だし、素晴らしい作品がたくさんあるけれど、このアルバムも名盤と呼ばれているし、それはそれは渋い1枚だ。
 彼のプロフィールの紹介などには、好きなギタリストはチャーリー=クリスチャンとなってるし、ジャズギター界でも並び称されて2大ギタリストと言われることもある。しかし、彼が最初にジャズ自体に興味を持ったのが、ジャンゴ=ラインハルトの作品。9歳の時だったそうだ。
 で、自分のルーツをたどる意味でこの作品が録音されている。変則カルテット作品で、2ギターで演奏されているのだけれど、それだけジャンゴのギターが凄いということでもある。
 アルバム中、一番好きなのはもちろんジャンゴの作品である「哀愁の花」。リズムがちょっとラテンな具合がとってもイイ。
 ジョー=パスのギターの弾きは独特で、その音はとっても優しい。元々、個人的にエレキギターのフロントピックアップの籠った感じの音というのはあまり好きではなくて、自分で弾いてた頃も絶対にリアのピックアップから音を出していたのだけれど、彼のプレイを聴いてから、フロントピックアップの暖かみのある籠った音が大好きになったのであった。

Fred Astaire / Mr. Top Hat

 歌とダンスで30年代のアメリカで輝かしいスターであった、フレッド=アステアの56年の作品。タイトルは彼の当時の愛称であった「ミスター・トップ・ハット」。
 元々ミュージカルや映画の大スターであった彼に目を付けた、この作品のリリース元でもある、ヴァーヴレコードのノーマン=グランツがジャズをバックに歌わせたら!?というアイデアを元にしてジャズシンガーの道を歩むことになったので、少し大スターの時代からはタイムラグがあってのリリース。
 映画やダンスのアステアというのは話に聞くだけで全く観たことないんであるが、このアルバム、極上のジャズヴォーカル作品だ。
 テンポの良さというか、スタッカートの効いた軽快なアステア節がポーンとカラダの中に飛び込んで来てグッと来る。もちろん、彼の得意なミュージカルナンバーをジャズタッチにした作品がほとんどを占めているのだけれど、とにかくカッコイイ!
 途中にタップの音もソロで入ってたりして、その時代を知らない人にはかえって新鮮な響きだ。バックのジャズコンボも50年代らしいスモールコンボで、スィンギーで気持ち良く、とっても聴きやすい。ラスト2曲はオスカー=ピーターソンのナンバー。ピーターソンのピアノプレイをご存知の方ならば、想像はつくと思うのだけれど、これがタップと抜群に合うのである!
 何だろう、この素晴らしさは!!である。とにかく大好きだし、周りの色んな人にススメて来てるけれど、近年で一番反応のいいヴォーカルアルバム。初心者の方にもバッチリ。

O.S.T. / Timeless Melody

 映画「タイムレス・メロディ」のサウンドトラック。2000年の作品。主演もしているリトル・クリーチャーズの青柳拓次がカマ・アイナ名義で製作。
 映画自体は観ようと思ってたのに結局観ていない。ビリヤードが絡んだ映画だったと思う。また機会あれば観ようとは思っているけれど、このアルバムは音楽だけでもとっても心地よい作品である。
 他のカマ・アイナ名義の作品もそうなのだけれど、アコースティック楽器が静かに、淡々と、キレイに流れている楽曲の雰囲気が大好きだ。
 中でも好きな曲はアコギのゆったりとした響きが泣ける1曲目の「タイルはがしつつ」、ピアノのシンプルでありつつ壮大なメロディでタイトルもイイ5曲目の「大好きなメロディ」、スティール・パンが南国気分な6曲目の「厚着の数人」など。
 サントラということもあって、全体のストーリー的に組み立てられた楽曲なので、最初からじっくり聴いてもらうのが一番。やはり、最近のいろんな曲を詰め込んだタイプのサントラよりも、こういう1アーティストによってじっくり考えて製作された作品というものが好きだ。
 とにかく、ゆっくり聴けてイイんです!

Noriko Tujiko / From Tokyo To Naiagara

 ツジコノリコ、2003年のアルバム。
 彼女についてはあまり詳しくないのだけれど、音楽活動を始める以前はホステスさんだったらしい。で、2001年にオーストラリアのメグより「少女都市」でデビューして世界的なノイズ系のアーティストへ。
 さて、この作品は全然ノイズな音ではなくて、歌モノでメロディーもある。バッファロー・ドーターの大野由美子がMoogで参加してたりも。前作の「ハードにさせて」は個人的に聴けないタイプの作品だったので、この聴きやすさにはちょっとビックリしてしまったという作品。
 リリース元のレーベルが以前ここでも紹介したBooksと同じドイツのTomlabというのも納得の柔らかいエレクトロニカなデスクトップミュージック。日本盤の発売などもちろん無いけれど、それでも全曲日本語で歌ってます。
 声質的には大貫妙子に似ているなって思った。フワフワな心地よい声であります。オススメはラスト8曲目の「Robot Hero」。とっても静かでしっとり出来ます。
 ジャケットはタイプではないけれど、何故か魅力的に見えるツジコノリコの顔アップにノイズ系アルバムかのような手書きの文字。で、ライナーが背景と文字色に同系色をもって来ることによって読みにくいこと!それでも許せるというこの作品。そういうのも含めて好きだな。

Guther / I Know You Know

 ドイツはベルリンの2人組、ジュリアとブレンドの男女ユニットであるグーターの2003年のアルバム。
 まず、音より何よりこの作品はジャケ買いです。うっすらとグリーンで爽やかなこのジャケを見ただけで購入な作品。
 さて、音に関しては、ゆったりとフォーキーでありつつ、ヴォーカルのジュリアのある意味無気力な感じの声が優しいエレクトロニカ系なサウンド。実は買ってすぐは聴いてもあまりピンと来ていなかったというのも事実。最近、久々に聴いてみると、リズムの刻みやスネアのちょっと籠った感じのモコっとしたフィルターの掛かり具合やメロディ、声の具合が気持ちいいなぁって感じるようになってきた。
 ステレオラヴ5thアルバムとかにちょっと似た感じもあったりするなーとも思ったり。静かなミニマムエレクトロっぽさの部分なんかが特に。だけど、アコギのカッティングのフォーキーな響きの部分はグーターらしいというか、ホント優しくてクセになる音である。
 のんびりとジャケを眺めながら聴くともっと気持ち良くなれると思うアルバム。
 このアルバムの発売元のレーベルであるmorrは他にも面白い音を沢山リリースしていて、サイトでも聴けるので興味あれば是非。

Guther - I Know You Know

Sora / Re.sort

 京都在住で世界的な活動をしているクロサワタケシのソロプロジェクトであるsoraの2003年の1stアルバム。
 自然の音や思いっきりのジャズやボッサのアルバムからのサンプリングなど、さまざまな音が自由に切り貼りされたコラージュサンプリングな作品。
 とてもバラエティーに富んだ音の集合といった感があるのだけれど、作品を通しての空気感というか、フワフワな心地よさという点においてとても一体感があって聴きやすくもある。
 大好きなのは3曲目の「Revans」。ポワーンとしていて、最後にジャズのライブアルバムからの思いっきりなサンプリングがたまらなくカッコイイ。
 発売当時にレコ屋の試聴機で何気なく出会ったのであるが、一瞬で好きになったアルバムでもある。どことなく竹村延和と坂本龍一を連想させてくれて、まさにツボな音である。
 ジャケットの楽園を感じさせるキレイな浜辺の写真がまた何とも好きだ。今後の活動にもかなり期待しているアーティストの1人でもあったりする。

Pascal Comelade / September Song

 フランスのミュージシャン&コンポーザーであり、「現代のサティ」とも呼ばれるパスカル=コムラードの2000年のミニアルバム。
 トイピアノを駆使した!?というか柔らかいサウンドがとっても気持ちいい音をたくさん作ってたり、映画のサントラを製作してたりと、幅広い活動をしている音楽家であるが、この作品のポイントはズバリ、1曲目の「September Song」でヴォーカルを務める、ロバート=ワイアットが参加しているということ。
 ワイアットさんについてはここでも紹介しているし、大好きである。それでこのパスカルの作品を知ったという訳。フワフワの声にアコーディオンやトイピアノ、ウクレレなどがとてもキレイにミックスされて心地よさ抜群である。
 7曲中、歌のあるのは上記ワイアットさんの歌う1曲のみであとはインスト。全ての曲で楽器のほとんどをパスカルが演奏するという、マルチプレーヤーでもある。ボブ=ディランの「Knockin' On Heaven's Door」のカヴァーもあったりで、曲の構成も面白い。
 フワフワで気持ち良いこのサウンドは、本来の意味でのファンシーさがある。可愛らしさというか何というか・・・。ポカポカな春の日差しの下で聴いてみてもらいたい音。

The Drifters / Big Artist Best Collection

 説明するまでもないザ・ドリフターズのコレクションアルバム。89年のリリース。
 昨日のいかりや長介死去のニュースはホントに残念でしょうがない。当然のようにドリフ世代であるし、何と言っても、日本で一番好きなベーシストである。ドリフターズとしてのコントや役者としての渋い演技も、もちろん好きだし、イイんであるが、いか長のウネるベースラインは他の人間にはマネ出来ないソウルで一杯なのだ。
 このアルバムの楽曲も基本的にはコミックソングで笑える曲が満載だけれど、サウンドはしっかりしていて、それは極上のソウルである。特に「ドリフの英語塾」という曲はモータウンよりも凄いウネりを持った曲だ。もっと言うならファンクである。DJ時代に定番でかけてたりもしたし。数年前にビールのCMでエレキのコントラバスを弾いていた長さんを観て一人凄く嬉しかったのを覚えている。
 とにかく、ドリフの音楽は一度じっくり聴いてみてもらいたいと思う。2000年には日本公演で前座を務めたビートルズと同じく「赤盤」と「青盤」もリリースされているし。60年代から70年代のドリフの音はホント尖っていた。コミックソングでありながらも。改めて長さんの冥福を祈りつつ、ドリフサウンドを堪能したいと思う。

Novi Singers / Novi In Wonderland

 ポーランドのコーラスグループ、ノヴィ・シンガーズの68年の作品。ドイツのMPSレーベルからのリリース。
 98年に日本盤のCDが発売されるまでは、ホントに幻のアルバム扱いで、中古屋でもほとんど売られてなかったし、売っていたとしてもかなり高額な価格設定だった。それだけ珍しいというか、通やマニア向けなアルバム的存在であったけれど、実はとっても聴きやすくて、それは美しいスキャットアルバム。
 ジャズのスタンダードナンバーを中心にしっとりとムーディーな抜群のハーモニーたっぷりの9曲。中でも超定番な「Satin Doll」と「Lil' Darling」は大好きだし、他のアーティストの演奏とは全く違った心地よさがある。
 最初にコーラスグループと書いたけれど、全曲スキャット&演奏で、歌詞を歌っている曲は1曲もない。そういう意味では歌モノではなくてインストアルバムと言った方がいいかもしれない。とってもジャジーだけれど、イージーリスニング的なアルバム。ソファーでくつろぎながら、まったりと過ごす深夜に聴くのがピッタリなサウンドだ。

Beck / Mellow Gold

 ベック、94年のデビューアルバム。
 このアルバムでも1曲目となっててデビュー曲でもある「Loser」はやっぱりスゲエ!と当時思ったものだ。しかし、ベックの作品で一番よく聴いたのは実は2ndの「Odelay」。ポップさと聴きやすさは5枚のアルバム中2ndが一番だと今も思う。
 で、この作品だけれども、リリースされた時にちょこっと聴いたくらいで終わってたのが、自分の中でガラッと変わったのがちょうど5年位前のこと。友達のイベントに行ってて、ダンス系の曲が続く中で、急に「Loser」がかかり、「ぶちエエわ!」とそこでカッコ良さを再認識。それで家に戻ってからじっくりと1stアルバムを聴き直してみると、フォーキーでブルージーなギターの音がしびれる!って感じになってしまい、大好きになったという次第。
 このアルバムのほとんどの曲は最初は8トラのMTRで作ったという凄さというか、勢いも改めて感心したし。今やポップスターな感のある彼だからこそ、この1stの雰囲気がより渋い!って思えてしまうんである。
 もちろん最近の作品も好きだし、いつも彼のPVは楽しみでしょうがない。映像もとても遊び心があってハイクオリティなナンセンスが大好きだ。
Mellow Gold

Swinging Popsicle / Swinging Popsicle

 スウィンギング・ポプシクル、メジャー最初のアルバムとなる98年の1st。
 メジャーで2枚のアルバムをリリースした後、インディーズとなって現在も活動中ではあるけれど、そんなに知っている人はいないかも知れないなぁ。今週4枚目のアルバムがリリースされたばかり。
 さて、このバンドはやはり、ヴォーカルの藤崎美音子嬢の声です。大好きです。日本人の女性のヴォーカルでベスト3に入る程、声的にツボな方であります。息継ぎがハッキリ録音されてるヴォーカリストフェチとしてはこのアルバムはハズせません。ハミングやスキャットの声も素晴らしい。
 楽曲的にはこのアルバムはとってもキュートなポップス。大好きなのははやりメジャーデビュー曲である「Joy of Living」。ホーンにオルガン、奥の方から響いてくるパーカッションの軽快なリズム、程よい歪みのギターとイイんです。もちろん彼女の声、息継ぎが一番ハッキリ聴ける曲でもある。後半のスキャットがまた、たまらない。英語も上手いです。
 全12曲、とっても軽やかで楽しく、あっという間に聴けてしまう作品。発売から6年経つ今でもたまにこのアルバムはヘヴィーローテーションな時もあるくらい。ちなみに2枚持ってます。これ以外の作品も全てイイのは言うまでない!

Al Kooper / Naked Songs

 シンガーソングライター、アル=クーパーのソロ6作目となる73年の名盤。
 ホント、言うことない位イイです。だけど、それだけでは紹介する意味がないので、少し書くとしましょう。一言で言うならば、「Jolie」の入っているアルバム。色んなアーティストによっても数多くカヴァーされてる名曲ですな。解説を読むと、アルとこの時付きあっていたクインシー=ジョーンズの娘さんとのことを歌った曲だそうで。いつも名曲を称賛する時に使う「涙が出そうな位の嬉しさに襲われる」という表現がまさにピッタリな曲である。
 それと、「(Be Yourself) Be Real」というこのアルバムの最初のナンバーが大好き。邦題は「自分自身でありなさい」ってなってるんだけれど、この訳はちょっと!?と思う。しかし、詞の内容はとっても好きだし、音もこちらは泣ける感じ。
 さて、シンガーソングライターとして素晴らしいアル=クーパーであるけれど、最初に彼の作品で手にしたのは「Super Session」だった。この作品はインストで彼はキーボーディストとして参加している。イイ鍵盤プレイを聴かせてくれるし、カッコイイ!って思った。ということで、この「Naked Songs」についてもサウンド面、とくにピアノやオルガンの音についても歌だけでなく、じっくり聴いて欲しい作品だ。

Amel Larrieux / Infinite Possibilities

 グルーヴ・セオリーのヴォーカリストであったアメール=ラリューの2000年発売の1stソロアルバム。
 実は今年頭にホント久々にニューアルバムをリリースしている彼女であるが、この最初の作品がとても印象的だったのでこちらを紹介。まずは何と言ってもその声が素晴らしいというか大好き。グルーヴ・セオリー時代から好みな声であったけれど、ソロになってからの楽曲とのバランスはまさにツボ。重たいビートやエレピのフワフワ感、そして彼女の声とのマッチングが、4年前の作品だけれども、今聴いてもとても新鮮なソウルである。
 詩を歌ってる声はもちろんだけど、スキャットやハミングの時の声が大好きだ。個人的なお気に入りは、2曲目のインドのタイコであるタブラの音が印象的な「Ini」、とってもジャジーでピアノの音が美しい8曲目の「Down」。
 彼女はソロ活動以外にもいろんなアーティストの作品にコーラスやヴォーカリストとして多数参加してたりもするので、どこかで声だけは聴いたことがある方もいるはず。日本ではこのアルバムのリリースされた2000年にモンドグロッソの作品にも参加している。

Brian Auger & Julie Tippetts / Encore

 元々ピアニストであり、オルガン弾きとして有名なブライアン=オーガーの78年の作品。
 トリニティ、オブリヴィオン・エクスプレスとジャズやR&B的要素の強いバンドで活躍した後のソロ第一弾がこのアルバム。ヴォーカリストとして、トリニティ時代の盟友、ジュリー=ティペッツを大々的に起用。アルバムタイトルの邦題が「想い出にアンコール」ってなるのがちょっと好きかも。
 音的にはいわゆるAORと言われるジャズテイストなポップス、さわやかサウンド全開な雰囲気。アル=ジャロウやアニマルズの曲なんかやってます。カヴァーもいいのだけれど、この作品では彼のオリジナル曲「Git Up」が好き。オリジナルはこの1曲なのだけれど。ソウルフルなロックって感じ。タイコの刻みが70年代してて気持ちいい。
 全体的にやはり、ハモンドオルガンの音がいい。あの、回転スピーカーから飛び出すうねった音はデジタルではマネできないウォーム感がある。いかにもAOR的なものから、ロック全開や超ジャジー&ソウルフルなものなで、オーガーのオルガンサウンドは変幻自在である。
 AOR系で括られてる音は実はあんまり好きではなかったのだけれど、よく聴くとイイ音たくさんありますな。自分の中ではマイケル=フランクスがちょいとロックテイストになった感じって捉え方なのかもなと思ってしまった。

Dick Morgan / See What I Mean?

 ピアニスト、ディック=モーガンの60年録音のピアノトリオ作品。
 先日紹介した、キャノンボール=アダレイに見いだされた人物。プレイ的にはとても弾んだ、ファンキーな音を聴かせてくれるピアニストである。この作品ではトリオ作品だけあって、モーガンのピアノをそれはじっくりと楽しむことができる。
 スタンダードナンバーが多いのだけれど、リズム隊がベーシックにきっちり刻んでいる上に、しっとりとした曲であっても、モーガンのピアノには華がある。キレイだし、とても楽しくなる演奏なんである。
 レーベルは西海岸の名門、リバーサイド。このレーベルにもハッキリとした音のカラーがある。低・中・高の音のバランスがキレイでちょっと高めの音がくっきりって感じかな。イメージ的にもピアノの作品が沢山浮かんでくるし、ピアノの音色に臨場感がある。
 ディック=モーガン自体は自分の中ではピアニストできっちり印象があるのだけれど、実際のところ、世間的にはあまり知られてないようだ。ジャズ好きを除くと・・・。是非機会あれば聴いてみて欲しい。ホントに楽しい演奏だ。大好きな「Lil' Darling」も入ってて泣けもするし。

Kenny Burrell / Tin Tin Deo

 ギタリスト、ケニー=バレルの77年のトリオ作品。
 ケニー=バレルといえば、やはり「Midnight Blue」に代表されるブルーノート作品が有名だし、聴いてもカッコイイのに加えてジャケットもイイ。で、この作品、コンコードという日本ではマイナーなレーベル、ジャケも単なるアーティスト写真っていうのが多いんだけれど、中々、隠れた名作があったりするんである。
 何よりタイトルとなっている、「Tin Tin Deo」という曲が大好きで、一時期、この曲が演奏されているアルバムを集めたことがある。ディジー=ガレスピーをはじめ、やはりホーンで奏でられた作品がほとんどの中、ケニーの、このギターでの演奏は新鮮であり、ある意味でショック!をもたらしてくれた。何と言えばいいか、とにかく、地味なのだ。
 「Tin Tin Deo」ってアフロキューバンでピップな曲であるが、このケニーのトリオでのギターではとてつもなく渋く聞こえてくる。それがすこぶるイイんである。 
 1つの曲ばかりの良さを力説してしまったけれど、このアルバムの全8曲、ギタートリオとしての味のある作品。もちろんケニーのギターテクニックの凄さは言うまでもない。

Joe Derise / Joe Derise Sings

 シンガーであり、ピアニストでもある、ジョー=デリーズの55年録音の1stアルバム。
 実はつい最近知ったアルバムなのだけれど、これが極上の1枚。まず、ジャケット。レーベルがベツレヘムなのだけれど、ブルーノートがリード=マイルスならば、ベツレヘムにはバート=ゴールドブラットという天才がいた。このパッと見濃い青にしか見えない写真はじっくり見ると、それは素晴らしい写真だ。サウンドは当然のようにジョーの歌の渋さというか、すんなり上品で聴きやすい声は泣きそうな嬉しさに襲われる。
 彼は弾き語りアーティストとして有名なのだけれど、この作品はトリオでの演奏で、歌を抜きにしても、ピアノトリオのジャズアルバムとしても秀逸な作品だ。
 楽曲的には55年という時代もあって、ミュージカル曲がほとんど。軽快なテンポのものから、しっとりスインギーなものまで、それはキレイな8曲を聴かせてくれる。ジャズヴォーカル好きな方、もしくはこれから聴いてみたいという方には間違いなくオススメできる作品だ。
 ちょっと脱線するが、スタトレファンの方、特にDS9好きであれば、ストーリーに登場するボログラムジャズシンガーである、ヴィック=フォンテーンがしっとりとした曲を歌ってる場面に、ちょっとジョーの歌は似ているかも知れない。

Asako Toki / Standards

 昨年末解散したシンバルズのヴォーカル、土岐麻子の1stソロアルバム。先月のリリース。
 えー、昨日買いまして、本日は朝からずっとほとんどこのアルバムのリピートでした。前にここでシンバルズのアルバムを紹介したのだけれど、その時、声と楽曲のバランスがツボになったと記したんだけれど、今作はそれをはるかに上回る程のツボ。ジャジーでありつつ、さわやかなポップさがたまりません。
 本人曰く、ずっとジャズタッチな作品を歌いたかったそうで、全曲カヴァー曲なのだけれど、「My Favorite Things」から始まるこの選曲もイイ感じです。アースの「September」も軽やかジャズテイストであったりで、この辺りが単なるジャジーではない、ポップさもアリという面白い作品となってます。
 今後はオリジナル作品でもこのような路線でガンガンリリースして欲しい気もするけれど、ジャジーなのはひとまずこの作品で区切りを付けて、色んな楽曲にチャレンジしていくそうである。シンバルズの解散はショック!だとか、残念という声がたくさんあったみたいだけれど、これを聴く限り、全然どうして、この先がどうしようもなく楽しみでしょうがない。
Standards〜土岐麻子Jazzを歌う〜 - EP

Quruli / Antenna

 久々の本日リリースモノ。くるりの5枚目となるNewアルバム。昨日から店頭に並んでるの知ってたし、買いに行きたかったが、行けなかったので、先程ようやく購入。
 とりあえず、ざっと2回聴く。感想は、「くるりだ!」である。しかし、今までの作品の中で1番素晴らしい。クリストファーというドラマーを新たに迎え、セッションメンバー〜正式加入の過程もこの作品には詰まっているってのも大きいのかも知れないけれど、バンド自身の成長というか進化がハッキリ聴きとれる。
 シングルカットされてる「ロックンロール」は既に名曲だ。しかし、とても良い!と思ったのは「Morning Paper」と「Race」。やはりこのリズムは今までの彼らには無かった。ちょっとソウルフラワーを連想してしまった。それだけクリストファーの刺激というのは大きいのだろうと改めて思う。長く聴けそうな個人的ツボな作品である。
 ちょっと余談だけれど、くるりについて、いや、岸田繁についてそんなに知らないが、それなりに知ってることと言えば、鉄道好きでカープファン。選手的には大野豊、現日本代表コーチが大好きだと。で、以前広島のタウン誌に地味に連載を持ってた。そんなところか!?ファンには当り前なのかも知れないけれど・・・。それから、ソウルフラワーっぽいと書いたけれど、ソウルフラワーの中川敬はくるりのライブにゲストギタリストとして参加したことがあり、くるりもソウルフラワーのライブにゲストで何度か出演している。

Wilson Das Neves / Samba-Tropi

 ウルグアイ出身でブラジルで50年代から現在も活躍するドラマー、ウィルソン=ダス=ネヴィスの70年のリーダー作。
 サンバのビッグバンド的なメンバー構成で10人以上のホーンやギターも含めたとてもパワフルなサンバを聴かせてくれる。ピアノが大好きなサルバドールっていうのも聴きどころの一つ。
 結構、ポピュラー曲のカバーが多くて、プロレスのWWEで「とっとと帰れ!」みたいなシーンで「ナナナーナ〜」と歌われる「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye」だとか、「Venus」、「雨に歌えば」や「Come Together」まである。もちろん、どれもサンバテイスト全開。
 しかし、何なんでしょうかねー。ブラジルのアーティストのサウンドっていうのは、サンバはもちろん、ボッサやショーロまでもホントに独特で魅力的である。メロディもだけれど、リズムに特に魅かれるものがある。いわゆるドラムセットじゃなくて、パーカッション的なものが上手くメロディに絡んで来る具合というか。
 そう言っておきながらだけれど、このウィルソンはドラマーで、この作品はもちろんドラムセットで演奏されている。それでもロックとかそういうのにはない、独特なブラジルの、いや、ウィルソンのドラムワークのサンバ感があって素晴らしい。

Sunnyday Service / Tokyo

 サニーデイ・サービス、96年リリースのセカンドアルバム。
 いやー、その当時ずっとヘヴィーローテーションだった記憶がある。広島に住んでて、東京ってのは行ったことあったけど、実際住むと、このアルバムの歌詞のように感じるのかなぁとおもいつつ・・・。しかし、住んでみると全然違っていた。というか、この96年の聴いてたころの自分のイメージは全然記憶に残っていなかったというのが正しいのかも知れない。
 さて、サウンドであるが、完全な70年代フォーク、いや、ポップスの世界。とはいえ、70年代の日本の音はほとんど聴いていなかったので、すごく新鮮に感じた。他のサニーデイ好きな方達と同じように、このアルバムをきっかけにはっぴいえんどとか聴きだしたくちである。一番好きなのはシングルにもなった「青春狂走曲」かな。最近また、たまに聴いたりするのだけれど、今の気分ではタイトル曲である「東京」、ラスト曲の「コーヒーと恋愛」がいい。
 CDとアナログ両方持ってるんだけれど、アナログにはメンバー全員にサインを書いてもらった。レコ屋の兄ちゃんの特権を活かして。
 しみじみ心地よい日なたぼっこのような全12曲がここにはある。

Cannonball Adderley / Somethin' Else

 キャノンボール=アダレイ、58年録音の言うまでもない名盤。ブルーノートNo.1595。
 ジャズをお好きな方ならばご存知の通り、実質マイルスのアルバム。契約の問題上、マイルス名義で出せないとの理由からアダレイのリーダー作になってます。確かにメチャメチャマイルスの音に仕上がっているし、大好きな「枯葉」もミュートペットがこの上なく渋い。
 という感じでマイルスてんこ盛りな作品なのだけれど、それにもかかわらず、すんなり名義貸しをしたアダレイが逆にカッコイイというか、紳士というか・・・。もっと言うと、マイルス、マイルス言わずに、せっかくリーダー作となっているアダレイにも、もっと注目してあげて!って気持ちになるのだ。
 この作品は全体的にクールでちょっと抑え目な音なんであるが、アダレイ本来のプレイはブロウでソウルフルなフレーズが魅力のサックスプレーヤー。「Mercy,Mercy,Mercy」とか大好きだったりする。弟のナット=アダレイもいいトランペッターでありコンポーザーだ。
 とにかく名盤であり、すばらしい音が詰まっている作品には間違いない。それと同時にアダレイへの興味をもたらしてくれた作品としても個人的には嬉しいアルバムだ。
Somethin' Else

Sonny Clark / Cool Struttin'

 ピアニスト、ソニー=クラークの58年録音のカルテット作品。ブルーノートNo.1588。
 ブルーノートでピアノジャズといえばこの作品!って位の有名でもあり、ジャケットの女性の脚というのはブルーノートのジャケットワークのある種の象徴のようにもなっている。こと日本での評価というか、知名度は高く、当時のジャズ喫茶の定番アルバムとなっていたらしい。
 そんなこのアルバムであるが、発売当初のアメリカでは酷評を受け、さんざんだったそうだ。個人的な見解としては、グッとくるインパクトってものはそこまでないものの、聴きやすさという点では素晴らしいと思う。
 突出した鋭さよりも、全体のバランスとしての聴きやすさがイイというのは日本で受け入られやすかった要因でもあると思う。90年代に入って、一部の日本の評論家が、この作品はクラークらしさが足りないと言い、賛否あったみたいだけれど、50年近くもの間、皆に親しまれ聴かれ続けてきた事実がこの作品の良さを表しているのであろう。
 名盤でよろし。何と言っても、音とジャケのバランスという点での素晴らしさにおいてはピカイチ。A-2の「Blue Minor」が大好き。
Cool Struttin' - EP

Charles Mingus / Mingus Plays Piano

 ベーシスト、チャールズ=ミンガスの63年録音のピアノソロ作品。
 驚異のフレーズを連発する天才ベーシストとして有名ではあるけれど、実は様々な楽器を奏でるマルチプレーヤーという顔も持っているミンガス。しかし、今作のピアノソロというアルバムはそれでも珍しい1枚だ。
 「直立猿人」や「5ミンガス」など、ガンガン攻めるベースの作品も大好きではあるが、この鍵盤の限りなく優しくて静かな音が詰め込まれた作品はとても心地よい。
 割と巨漢でもある彼がどうしてこんなやさしいピアノを奏でるのであろうか!?って不思議になるくらいのギャップがまた何とも嬉しくなってしまう。インパルスレーベルからのリリースなのだけれど、それもまた面白いよなーって思える。
 なかなか入手しにくいとは思うけれど、是非アナログ盤で聴いてみてもらいたい。ピアノソロのウォーム感がより一層引き立ちます。
Mingus Plays Piano (Impulse Master Sessions)

Herbie Hancock / Maiden Voyage

 ハービー=ハンコック、65年録音の言うまでもない名作。ブルーノートNo.4195。
 やはり、アシッドジャズのモロ世代であるだけに、ハンコックと言えばファンキーなピアニストというイメージが大きいし、ずっとワーナーやCBS時代の作品が好きだった。
 とはいえ、ブルーノートは大好きなレーベルなので、ハンコックを含め、一通りの作品は聴いてきていたのだけれど、この時期のハンコックはスタンダード時代という認識程度でじっくり聴いてはいなかったというのも事実。
 最近、レコードの整理をした時にこの「処女航海」が出て来たので久々に聴いてみると、とっても深い作品なんだなーと改めて実感したというところ。何より、ピアノが目立ってないのがイイ。しかし、ピアノ抜きでは考えられない音でもある。全然隠し味的でもなく、もちろんピアノはピアノでしっかりと刻まれているけれど、このクールな鍵盤の音こそが、この時代のハンコックらしい音ざまなのだな、と。
 ジャケットでいうと、最近はオリジナルジャケットが当り前に復刻してるけれど、最初にこのアルバム見た頃は青っぽくて、中古屋でたまにこのオリジナルな緑ジャケを見かける程度だった記憶がある。
Maiden Voyage (The RVG Edition)

The Books / The Lemon of Pink

 ドイツの2人組ユニット、booksの2ndアルバム。2003年の作品。
 もう一つのブログにも書いてあったりするんだけれど、昨年のこの作品リリース時からずっと、個人的イチ押しアルバム。試聴機ショック!を受けて以来、「スゲエカッコイイ!」ランク1位の状態をキープしている。
 色んな紹介記事などでは、エロクトロニカとかデスクトップミュージックと呼ばれているけれど、個人的にはサンプリングフォークと呼びたい。とにかく、サンプリングでも素材の切り取り方というか、使い方、その雰囲気の出し方が上手い。特に、日本が相当好きなのか、素材天国なのか、日本語のサンプリングが満載。ハッキリ聴きとり難い部分にも日本のドラマや株式のラジオなどのサンプリングもちりばめられている。
 それから、もう一つのポイントはバンジョーなどの弦楽器系の響き。コード弾きなジャーンではなくて、アルペジオなタラランってゆったりとした弾きがよろし。女性のボーカルも優しい。
 音の各パーツを単品として取出してみたならば、こんなにヘンなモノはない!って感じの素材が、組み合わさることによって、とても心地よくなるbooksのマジックにやられっぱなし。1stも買いの1枚。