*music

sutero choice sound selection

Nico Saquito / Good-bye Mr. Cat

341.jpg キューバのシンガーソングライター的な隠れた巨人、ニコ=サキートのラストレコーディングである82年の作品。
 グアラーチャっていう、キューバ音楽の1つのスタイルの代表的な人物。90年代後半に話題となったブエナビスタなんかのソンやルンバ的なスタイルともとってもよく似ているので、その辺りが好きな人もすんなり聴ける音。ギターをはじめとする弦楽器とパーカッションのシンプルな構成の楽曲に歌やコーラスって感じで、特にギターと歌のコンビネーションが軽快なテンポのパーカッションに載ってて、ダンサブルでもある。
 簡単にざっと音楽スタイルについて書いた所で、今だからこそ、この位の感じのことは知っててそれなりにキューバの音楽も聴いてたりはするけれど、このアルバムを買った時はジャケ買いです(笑)。当時は中南米の音と言えばジャマイカ系やボッサ程度しか知らず、このジャケットの使い古されたガットギターを渋く奏でる爺さん!ってのに物凄く魅かれたのでした。で、聴いて正解!となり、キューバ系も追うようになった感じですな。
 アルバム1曲目の「Al Vaiven de Mi Carreta」はすこぶる名曲だそうで、イントロが流れ出すと同時にニコ=サキートの紹介ナレーションが入ってます。好きなのは3曲目の「Maria Cristina」かな。ニコともう一人、ちょっと誰か分からないんですが、この2人のとっても楽しい雰囲気での交互に歌ってる掛け合いみたいなのが、聴いてると自然に笑顔にならせてくれて嬉しくなれます。
 ラテンな陽気さと共にとってもフォーキーな作品でもあり、歌とギターのシンプルな素晴らしさを堪能できる1枚。

Baha men / Kalik

320.jpg バンド名まんまなバハマのバンド、バハ・メンの94年のアルバム。
 カリブ的なダンスミュージック系バンドって感じであるけれど、打ち込みなビートも多くて、普通にアメリカンなポップさやR&B的部分もあるし、サンバな雰囲気もあったりする。この辺りがビルボード系にウケると同時に日本へも多くのアルバムが紹介されている理由の一つの側面であるのかも知れない。
 しかし、そんな諸事情的な経緯はどうでも良くて、このアルバムにはレニー=クラヴィッツプロデュースの「(Just A) Sunny Day」が収録されている、これを聴くだけで充分過ぎる程の嬉しさがある。というか、このアルバムは全体をまともに聴いていないのだ。「(Just A) Sunny Day」のシングル盤と思っているんだって理解してもらってもいいんです、ハイ。
 この曲、いつのまにやら11年前の作品になっていて、時の過ぎるのは早いのぉ〜、と、思いに浸る場合でもなく、レニーな音だ。コーラスで参加してる彼の声を聴けばそれはよりハッキリするもんだ。レニーの曲として好きなのは自身のオリジナル作品よりも、この曲だったり、ヴァネッサ=パラディとの曲だったり、プロデュースしてる方が好きなのも、不思議なんだが、そうだからしょうがない。
 このアルバムはシングル盤も同然とは書いたけれど、もう1曲だけ、好きであり、楽しくてノリのいいカヴァー曲があるので、そちらも書いておこう。「Dancing In The Moonlight」。King Harvestの名曲というか、ヒット曲のカヴァー。こっちはちょいとサンバを意識しつつ、南米なミックスで軽快さがよろし。
 辛口に言えば、この2曲以外は聴かんでもよろしい(笑)。甘口で言うならば、既に古い作品ではあるが、あまりその辺りは感じさせることなく、カリブな雰囲気とダンスなノリを融合させてて、すんなり聴ける!?であろう。やっぱり、2曲だけ聴いて!

Jose Feliciano / And The Feeling's Good

 プエルトリカンな盲目のシンガーでありギタリスト、ホセ=フェリシアーノの74年の作品。
 これは、そうですな、フリーソウルな流れで聴いた方も多いと思う作品。フリーソウル〜のコンピにスティーヴィー=ワンダーの名曲のカヴァーである「Golden Lady」が入ってたと言えば。それがこのホセさんで、このアルバムに収録されてます。
 結構、ギタリストとしての彼のプレイが好きなのであるけれど、この作品は歌モノなアルバムとなってます。1曲だけインストもあるけれど、70年代のプロレスの入場テーマのような激しいナンバーだ。
 インスト集のようなアルバムも持ってるんだけれど、そっちで激しく鳴り響いてる、クラシックギターのプレイが大好きなのである。それに比べると、この作品は、そういう部分もソロとかあったりするけれど、エレキとかストリングスが響いてる、よりソウルフルなロックアルバムである。
 シンガーとしてのホセというのも悪くない、というか、好きだ。最初に聴いた時には大好きであるヴァン=モリソンを連想してしまった。声の線は細いけれど、声量はキッチリあって、迫力がある。
 で、この1曲というと、最初にあげた「Golden Lady」もイイのだけれど、「Differently」かな。歌モノとしての声の感じ、ギターのナイロン弦を弾くメロディの感じ、そして爽やかさ。嬉しくなれるナンバーだ。

Compay Segundo / Yo Vengo Aqui

 キューバの歌手&ギタリスト、コンパイ=セグンドの96年の90歳にして最初のソロアルバム。
 ご存知、キューバブームの原点ともいえる、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブでギターかかえて歌ってたあのお爺さんである。元々ソンの歌手であったけれど、ライ=クーダーによって見出された時点では農夫だったというのも、凄いというか、どうして!?って感じだけれども、それがキューバという国だからこそなのであろう。
 さて、音の方はというと、一言、優しい。声はもちろんだし、コンパイ自身が考案したという、7弦のギターの音にすごく哀愁があっていい。久しくキューバ系の音は聴いてなかったのだけれど、やはり、イイものはイイ!って実感できる音だ。
 優しさと共に、パワフルでもある。この時90歳ってホントかいな?である。老人力ブームの源でもあったような気もする。しかし、本当に良かったり、素晴らしいモノというのは時間や空間を超越したものであるし。年齢がいくつだからどうこうって決めつけること自体が視野が狭いよなー・・・。
 だけど、同じ年齢を重ねるならば、優しさとパワフルさを持って楽しくいきたいもんだなーと強く感じさせてくれる作品だ。

Felix Casaverde / Somos Adu

 ペルーのポピュラーシーンで絶大なる人気を誇り、重要人物でもあるギタリスト、フェリクス=カサベルデの日本初紹介となるアルバム。
 アルバム全編に渡る彼のギター・歌、そしてパーカッションが、どこかで聴いたことがあるような懐かしさを持ちつつ、だけどとっても新鮮という気持ちのよい効果をもたらしている。ペルーという国の歴史、南米という位置も大いに関係してるのもよく分かる。
 たまにはそういった背景を基にいろんな音楽を聴いていくというのもいいことだ。と言うよりも、いろんな音を好きになって聴いていくうちに自然と調べたくなるものかもね。この作品は音的にだけでも、アンデスなんかの伝統音楽とブラジル系の影響が色濃くあるのが感じられるし。ボッサのリズムも出て来ます。
 そういう説明なしでも、涙が出るくらいの嬉しさに襲われる素晴らしいアルバム。