*music

sutero choice sound selection

Romano Mussolini / Mirage

 イタリアのピアニスト、ロマーノ=ムッソリーニの74年の作品。
 あのイタリアの首相であったムッソリーニの息子。ロマーノの娘が女優で政治家だったりもするけれど、まあ、ミュージシャンなんで、そういう政治的なことは一切関係なしということで。
 トリオなど、ジャズジャズした作品もあるのだけれど、今作はピアノといってもフェンダー・ローズで全編演奏された、エレピなほんわかムーディーでパッピーな作品。セクステット編成で全てイタリアン。
 エリントンのナンバーである1曲目の「The Twitch」を除いては全て彼自身のナンバー。バラード調からヒップな雰囲気まで、とっても楽しいし幅広い楽曲となっている。
 楽曲の幅の広さもいいのだけれど、やはりこのアルバムの聴き所というのはエレピに尽きる。各楽器の音のバランスとしてもエレピがやけに強調された音をしているし。ミキシングやマスタリング段階でそうだったのだろうし、何より弾いてるロマーニの楽曲でリーダー作だからなんだろうけれど、ここまでエレピ全開な音は他には聴いたことないって位に。
 もう一つ、パーカッションの音が面白い。ドラムもあるので、普通パーカッションも入ってる場合は割と高音な打楽器の音でリズムに幅を持たせるために入れるんだけれど、結構鈍いくらいにドスンってパーカッションが入ってたりして、ヘンというよりも新鮮であった。
 全体的にエレピ好きであるだけに、嬉しい1枚。好きなのはちょっと怪しい雰囲気にも聴こえる「Hong Kong」かな。

Wagon Cookin' / Everyday Life

 スペインの兄弟ユニット、ワゴン・クッキンの今年6月リリースの2ndアルバム。
 あのぅ、全然知りませんでした。1stが結構話題になったらしく、期待の2ndみたいな感じだったそうで。ともかく、これはジャケ買いです。もちろんアナログ盤。
 女性の後ろ姿、緑のシャツにブルーなGパン、それに合わせたブルーとグリーンの文字。これだけで買い!と決めつけて買いました。あと、タイトルの「Everyday Life」というのも好きだし、モンドグロッソにも同名の大好きな曲もあるし。そんな買い方です。
 音の方はというと、ジャジーでアフロでブラジリアンな打ち込み。と簡単に言い切ってしまうには、もっといろんなタイプの音が入っているのだが・・・。
 なかなかBGM的には爽やかな感じでサラーッと聴ける。しかし、辛口に言うと、そこまでな音で、聴き込むタイプではない感じだ。だからといってダメなわけではない。アルバムタイトル曲は女性ヴォーカルもあって、結構好き。それでもあんまり聴いていない。
 でも、こういうの好きという方も多いと思う。詳しくはこちらとか、色んなブログでリリースされた頃に取り上げられてたので、ご参考にどうぞ。
 とにかく、ジャケが好き。それだけで合格なのである。細かいことを言うと、彼らはこのアルバムをブラジルのスタジオで録音し、マスタリングをマドリッドでやっている。そういう大西洋を横切る音作りはイイなぁー。
 父親がジャズマンで、サックス&クラリネット奏者っていう環境で、兄弟でこういう音作るってのもいいよなー。
 兄弟ユニットは気になる存在だ。もうちょっと寝かせると、好きになる音かも知れない。

Martin Taylor / Kiss And Tell

 UKのジャズギタリスト、マーティン=テイラーの日本へは初紹介となった99年の作品。
 ともかくギター上手いです。ジャジーというよりもスムージィーでイージーリスニング的な音の詰まった作品。聴いたことない方への説明としてはラジオの天気概況と交通情報の間に流れる、ちょいとおしゃれな雰囲気のいいインストの曲じゃ、と説明すると納得して頂けるのではないかと思う。
 この作品がリリースされてからは最近の盤も好評のようで、ファンも沢山いらっしゃる模様。でも、実は70年代から様々なコンボやユニット、バンド、そしてソロと、キャリア的にも長くて思いっきり実力派のギタリストです。
 リリース直後から持ってて、よく聴いてた時期もあったけれど、長いこと貸し出してたりしたもので、最近は全然聴いていなかったし、聴く気分でもなかったのであるが、いざ、ここに書こうと、聴けば聴いたで、やっぱり上手いし、いい感じに和める作品。
 楽曲的に大好きなマリア=マルダーの名曲、「真夜中のオアシス」が収録されていることに、さっき気付いた。いかに、いい雰囲気でギターが上手いとか言っておきながら、いい加減に聴いていたかを露呈している自分が滑稽だ(笑)。
 それでも、好きなのはアルバムタイトルでもある1曲目の「Kiss And Tell」。マーティンのギターと、こちらも楽器的に大好きな高音管楽器であるカーク=ウェイラムのソプラノサックスの駆け引きがとっても心地よい。さすがに頭の曲は久々に聴いてもよく覚えているものである。

Makoto Kawamoto / S.T.

 川本真琴、97年の1stアルバム。
 デビュー曲の「愛の才能」が岡村靖幸によるアレンジだったってことでも話題だったんで、結構売れたし、このアルバムもミリオン越えてたはず。
 彼女の場合、ほとんどの人やレビューで言われるのが歌詞。確かに面白いし、色々恋愛的なところで共感されるのも分かる気もする。しかし、個人的な彼女の魅力はその声と曲の方だと思う。とっても優れたコンポーザーである。
 あ、でもやっぱり詞と楽曲を両方作り、自分でギターをかき鳴らして歌うという、シンガーソングライターだからこそ、こういう作品に仕上がっている、というのが大きいと思うので、やっぱり凄いアーティストですな。
 2001年以降は作品らしい作品は出てないけれど、今でもライヴ活動はしておられます。
 何だかんだで、このアルバムをその当時結構聴いてたのではあるけれど、結構ずるいのかも。この1stとビデオを持ってますが、どちらもサンプル。ライヴも観たことあるけれど、こちらも招待席。仕事絡みで済ませてるのはイイような悪いような。結構ホントにイイって思ってたからこそ、こんな気持ちにもなりますー。
 で、今回聴いたのは5年ぶりくらいなのかも。何だかんだで、リリースされてから7年も経ってたとは。
 ビデオも持ってると書いたけれど、元々はそこまで注目してもなくて、当時深夜のテレビで繰り返し流れる「DNA」のプロモを観て、ベースラインの起伏の激しさと声、そして川本真琴のスタイルのガリガリ感がとっても気に入ったのであった(笑)。

Caetano Veloso & Gal Costa / Domingo

 カエターノ=ヴェローソとガル=コスタによる、67年の1stアルバム。
 カエターノは大好きで、特に近年のオッサンになってなおカッコイイ彼の作品はよく聴いているのだけれど、本日、こんな夜更けにふと1stが聴きたくなって聴いてみた。
 まず、何も考えることなく「イイ!」ってことだけ思った。「なんじゃこの清々しさ。そして泣きそう!」となってしまった。
 やっぱり近年の作品に比べると、声が圧倒的に若い。まあ当たり前であるが、それまでここでも紹介した息子のモレーノ作品を聴いていたのだけれど、やっぱり声がそっくりだ。
 いつもであれば、もう少し解説をしたり好きな曲をあげたりするのだけれど、今回はそんな気になれない。とにかくたった30分少々の作品なのであるが、全部通してとっても心地よく嬉し泣きなアルバム。
 唯一解説するとすれば、この持っている盤はこれまた大好きなオノ=セイゲンによるリマスター盤だということ。これがまた、セイゲンサウンドを耳にしたことある方であれば理解頂けると思うけれど、絶品です。もちろん、元の作品が抜群だからこそだけれど。
 このアルバムのような静寂のグルーヴ作品はブラジルなボッサといえど、これからの秋の夜長にピッタリです。是非是非、嬉し泣きな夜を過ごして欲しい。

V.A. / Mercedes-Benz Mixed Tape 02

 前回紹介して大好評で色んなブログでも取り上げられてたメルセデスの無料ダウンロード出来る参加型のサイト、Mixed Tapeの第二弾が登場しているので、またまたご紹介。
 既に、もう一つのブログでは紹介していたのだけれど、全曲聴く機会が本日までなかったので、ようやくこちらでも紹介ということで。
 さて、今回は結構ヒップホップだとかジャズっぽいモノが増えて、Vol.01とはまた違って、イイ感じ。これからも色んなサウンドを紹介していってくれそうな気配もするのでいいことだ。
 気に入ったのは「Warming」って曲。打ち込みとアコーステックの楽器のバランスが程良くて、ゆったり心地よく聴ける。
 しかし、全体的に今回もバランス良く出来てるってのは素晴らしい。特に、曲を募集しているにもかかわらす、である。
 これからも4-6週間に一度の割合で新しいモノが出てくるみたいだから要チェックですな。
 これだけのコンピなら商売も成り立ちそうな気もするけれど、聴く側としてはこの無料のスタイルを続けて欲しいね。
 これがやってる間に一度は作って応募してみたいとも思う。

Bobbi Humphrey / Blue Breakbeats

 フルート奏者、ボビー=ハンフリーのベスト盤的な98年リリースのブルーノート作品。
 このジャケの安易さはなんだ!?って感じだけれど、手頃な価格でベスト的な曲が収録されているので、まあいいでしょうって感じの1枚。
 きっちり1曲目にレアグルーヴ定番曲である「Harlem River Drive」が持ってきてある。どの曲もジャズというよりもソウル、いやプログレっぽい気もする6曲です。
 色んな打ち込み系アーティストの音ネタになってることも多いので、どこかでみみにしたことあるフレーズもきっとあることでしょう。
 まあ、ハンフリー作品といえば、そういうジャズだのソウルだのというジャンルや楽曲でどうこう言うのではなくて、やっぱりフルートの心地よさであると思う。フルートが無ければ無いでイイ曲だって思えるトラックに、キレイなフルートの音がのっかることによって何だろう、優しさが溢れ出すというか、包み込んでくれる雰囲気を醸し出している所がとっても好き。
 個人的に高音系管楽器が入っているとそれだけで気分いい、というのがあるので割と甘めの評価になりがちだけれども、そんなこと抜きにしても、ハンフリーのフルートは柔らかかったり、エッジが効いていたりと、自在なカッコ良さが楽しい。
 あ、高音系管楽器でもケニーGみたいなのはアウトです(笑)。

Jimmy Raney / Quartet With Sonny Clark

 ジャズギタリスト、ジミー=レイニーのピアニスト、ソニー=クラークを迎えた54年のパリでの録音作品。
 この作品、98年に55年の発売当時の雰囲気をそのまま復刻するというカタチで、ヴォーグ・オリジナル・LP・コレクションとして10インチのアナログ盤で25枚ほど復刻されたシリーズの中の1枚。
 しかし、本日初めて聴きました(笑)。ずっと、PowerMac G3の段ボールの中でこのシリーズ25枚全てが約6年程眠ってました。引っ越しに伴って、6年ぶりに引っ張り出した25枚の中で、やっぱり最初に聴きたくなったのはこのギターな作品だったという訳。
 で、お初な感じで聴いてみて、「なんじゃこりゃ〜!」の鳥肌モノの渋さにヤられてしまいました。スタン=ゲッツのクインテットでお馴染みのナンバー中心な楽曲ですが、そこはやはりギターメインなジャズということで、一段と落ち着きのある、深〜いサウンドが展開されます。
好きなのは1番アップテンポでファンキーな「There'll Never Be Another You」、邦題では「あなただけを」。テンポはいいんだけれど、じっくりと納得のできる味というか、体内で沸き上がる嬉しさ、みたいなのを感じることのできるナンバー。ここでも紹介したソニー=クラークのファンキーなピアノもギターと交互に顔を覗かせたりしてます。
 録音から50年、所有してから6年、何で寝かせたまま聴かずにきたのか不思議。しかし、今初めて聴いたからこそ、ここまでグッと来るものがあったのかも知れない。いやはや名盤はいいもんですな。

Vince Andrews / Love,Oh Love

 サックスプレーヤーであり、ヴォーカリストでもあるヴィンス=アンドリュースの83年の1stリーダー作品。
 アルバムタイトルでもある、「Love,Oh Love」がクラブチューンとして人気を得て、昨年CD化されるまでは10万とかいう値段がついていたってことで有名ではないでしょうか。
 さて、そういう経緯のある作品ではあるけれど、まあ、いい感じのジャズなアルバムです。音的には完全に80年代テイスト全開だったりもするけれど、サックスが色々出て来ます。アルト、ソプラノ、テナー、そしてフルートとマルチなヴィンスさんのプレーヤーぶりが素敵です。
 もちろん、「Love,Oh Love」はカッコイイけれども、大好きなのは「Being With You」ですな。ゆったりと泣きそうになる曲。歌とさりげないオルガン、ブロウするアルトがイイ感じに鳴っている。
 実際のところ、話題になってる頃は聴いたことなくて、ジャケだけかろうじて知ってたというアルバム。で、CD化されたのも知らずに過ごしてました。たまーにCDショップで自分の知らない、もしくは聴いたことのない作品で試聴機にもない系をじっくりチェックすることがあって、その時に「あ、出てたんだ」って感じで購入したのが、少し前。
 今書いたようなチェックは特にジャズヴォーカルコーナーでは入念に行ってたりします。まあ、完璧に知らないということは少ないけれど、これ聴いてみるかー!ってなる基準は好きな曲を歌ってるか?とか、コンボの編成はどうか?ってところかな。この選び方、ほとんど外しません。どうでしょう、こういうの。

Cream / Disraeli Gears

 クリーム、67年の2ndアルバム。日本でのアルバムタイトルは「カラフル・クリーム」。
 クラプトンが在籍していたバンドということでとっても有名であるけれど、個人的にはクリームはリズム、そしてとってもサイケなバンドだって思っている。
 ギター、ベース、ドラムという3ピースのバンドの最小限ユニットであるから、それぞれの楽器をどうしても無視はできないし、重要であるが、やっぱりこの作品を聴く時はリズム、特にドラムの面白さに夢中になってしまう。
 それでも久々に聴くと、やっぱりクラプトンのギターだ!っていうのがよく分かるのも面白いけれど。しかし、個人的にはクラプトン自身に全く興味がない(笑)。今でこそクラプトンと言えばフェンダー!であるけれど、この頃は曲によってはギブソンな音色も聴けるので、そういう意味でギターの音に注目して聴くのも楽しかったりもする。
 全体の楽曲的にはサイケデリックなロックンロールという感じ。もちろんブルージーなのもあったり。好きなのは、一番暗めなサウンドの「Blue Condition」。このアルバムの中では地味でゆったりしてるけれど、何故か吸い込まれて行く心地よさがある。
 「Sunshine Of Your Love」はCMで使われてたりもしたので、誰もがよく知ってると思うし、クラプトン節なギターも聴けます。
 そうそうこのジャケ、これが大好き。好きなジャケット、サイケ部門の3番目のジャケがこの作品です。
Disraeli Gears

Kazuyoshi Nakamura / Kinjito

 中村一義、97年の1stアルバム。彼の作品については、このアルバムで止まっている。もちろんその後の活動や現在の100sも知ってはいるけれど。
 このアルバム、昨年末頃にふと棚の奥から出てきて、それ以来とってもよく聴いている作品。大好きであるけれど、彼の声はあんまり好きなタイプではない。
 やっぱり曲かな。声好き派ではないので、詞についてもそんなにじっくり聴いてないけれど、この60年代70年代の雰囲気をしたロック!な音は聴いててとっても気持ちがよい。
 デビューのシングルから1stまではきっちりリアルタイムに店頭での動きなんかも見つめながら聴いてた者としては、シングル曲を含め、それぞれの曲がこのアルバムで対に組み合わさったりしていて、面白いなーって思ってたという記憶がある。
 デビュー曲である「犬と猫」はやはりそれなりに衝撃というより、オモロイなーって印象がある。この作品ではこちらもシングルであった「永遠なるもの」が名曲だ!ってよくいわれている。
 だけど、個人的にはこのアルバムの曲順の流れ的にも「ここにいる」が大好き。ピアノとアコギがとってもキレイな泣ける曲だ。
 ラスト2曲はちょっと間が長すぎるなぁって感じるけれど、それも含めてこの作品の面白さでもある。
 あ、中村一義と言えば、宅録の帝王!ってイメージも持ってるのだけれど、これはどうだろう・・・。でも、その反動で現在はバンドというスタイルが楽しくてしょうがないんだろうなぁって思ったりもする。