*music

sutero choice sound selection

Sergio Mendes / Brasileiro

 セルジオ=メンデス、92年の作品。
 セル=メンと言えば、ブラジル'66時代の活動、そして「マシュ・ケ・ナダ」だとブラジル音楽の好きな方達ならばまず連想すると思う。しかし、世界的に見ると、この92年の作品が1番のヒット作品なのである。この年のグラミー賞を受賞しているアルバム。
 初期のピアニストの時代からアレンジやプロデュースの頭角を現していたけれど、今作は完全にプロデューサーとしての作品となっている。カルリーニョス=ブラウン、ギンガ、イヴァン=リンス、ジョアン=ボスコ等の作品をセル=メン流の90年代アレンジ満載。
 60年代の上記のポップなボッサとは全く違うサウンドだけれど、この時代のブラジルの今!って感じが詰まっている。アルバムの最初と最後が100人位のゴージャスなサンバで人力感も凄い。
 時代と共に自分なりの音の表現を素晴らしくまとめあげるセル=メンはやっぱり凄い人だなぁーと感心するばかり。

Double Famous / Esperanto

 ダブルフェイマス、98年の1stアルバム。
 久しく聴いていなくて、思い出したようにさっき取り出してみた。いつも聴く度に思うのは無国籍というか、多国籍というか。中東と西インド諸島の雰囲気を思い出す。思い出すからと言って、行ったことがある訳ではないのだけれど。
 アコースティックのホーンを含んだスモールコンボ、いや楽団と表現した方がいいこの集団の奏でる音は、遠い異国の地の風景を目の前に持って来てくれるような感じがする。
 実際のサウンドの詳細を表現するのは難しい楽団だ。とにかく聴いてみて欲しい。いろんな情景が浮かんでくるから。それだけじゃなくて、聴いてて気持ちいいし、嬉しい気分にもなれる。ライブもいい感じだ。
 来月、2年ぶりとなる3rdアルバムが発売されるのもとてつもなく楽しみだ。早く聴きたい。ヴォーカルが3人体制になるらしいから期待度も3倍だ。

Lorez Alexandria / Deep Roots

 ジャズシンガー、ロレツ=アレキサンドリアの62年の作品。
 彼女のインパルス盤は知ってたんだけれど、このアーゴ盤は実はよく知らなかった。2000年の日本盤CDの発売が初のCD化ということで、ヴォーカルマニアの間では幻の1枚だったそうだ。
 この作品を一言で表すなら、キレイ。女性のジャズヴォーカルではわりと低音で声の太いシンガーが好きなんだけれど、ロレツはその正反対というか、高音めで線の細いキュートでハスキーな声をしている。で、クセもなく、とっても歌が上手い。
 また、バックの演奏がシンプルで美しくカッコイイのだ。60年代のイカしたジャズ!って感じが漂っている。
 楽曲的にはスタンダード系の選曲。中でもコルトレーンもやってる有名曲の「朝日のようにさわやかに」がお気に入り。コルトレーンヴァージョンとはまた一味違ったテンポのいい心地よさがある。
 最近では久々にかなりお気に入りなジャズな作品。

Pepe California / The Nice Nice

 ペペ・カリフォルニアの2002年の3rdにして最初のフルアルバム。
 アコースティック系の楽器にプログラミングを合わせた3人組が奏でるサウンドは南国の中でありながら避暑地にいるような、何とも不思議にフワフワできる感じ。
 特にアコギとパーカッションとムーグの絡んだ感じは他に無いバカンスな感覚に溢れていて聴いてて優しくなれる。
 赤道付近から南半球寄りな音だ。北っぽくは全くない。であるが、彼らは日本の方である。というよりも、こんな感じのサウンド作りは日本人が一番得意なような気もするし、聴いていても気持ちがいい音は大抵そうだ。
 さっき書いた、赤道付近から南半球寄りを上下ではなく、左右にグルっとしたテイストが随所に入ってる。いい意味でスピード感がなくて、「そんなに急いでどうするの?」って問いかけてくれてるようでもある。
 この残暑の中、ボーッとくつろいで聴いていたい、そんな感じだ。
The Nice Nice

UA / Horizon

 UAのデビュー曲である95年の作品。
 UAの曲では大好きなものが3つあって、1つはこれ、あとは「リズム」と「TORO」。この中で1番聴いているのは大沢伸一の「リズム」なんであるが、この「ホライズン」が一番泣きたいくらいの嬉しさに襲われる度が強い。
 手元には発売前の味気ないプロモ盤がある。当時、一人で藤原ヒロシプロデュースだし、イイ曲だったんで周りにススメていたのだがあんまり相手にされなかった記憶がある。確かにこの曲のUAは歌い方がどことなくぎこちない部分もあるしね。
 イントロが鐘の音で始まるのだけれど、いきなり泣けます。藤原ヒロシテイストに溢れてる曲で、ピアノの音色が凄くキレイだ。
 頻繁に聴くんではないけれど、無性に聴きたくてしょうがない瞬間が年に何度かやって来る。泣きたいくらいの嬉しさに襲われたい瞬間が。アルバムにも入っているけれど、シングルで聴きたい曲だ。

Bob Dorough / Beginning To See The Light

 ピアニスト&ヴォーカリストであるボブ=ドロウの76年のライヴ作品。
 コンポーザーとしても有名で数多くの楽曲を提供しているし、テレビ番組やCMなどの曲も手がけている。また、子供向けな楽曲も得意という面白い人だ。
 この作品はピアノに声にベースという、とってもシンプルな構成。彼の作品の中でもかなりポップなサウンド。ピアノがブギウギな感じで踊ってるし、独特な声がまた渋い。そんな中で数曲に一度はさまれる、ムーディーな曲がこれまたジャジーでうっとりって感じだ。
 ジャケに関してはちょいとどうか!?って気もするけれど、裏面のモノクロの練習中の模様を撮ったショットがすごくいい雰囲気が出てて、こっちは大好き。
 ビートルズの「ノルウェーの森」のカヴァーも入ってるんだけれど、ボブ風の軽快なピアノで嬉しい感じに聴かせてくれる。ビートルズの曲で1番好きなんだそうだ。
 ピアノ的側面からばかりで書いたけれど、実はベースが重要なポイントになっている。目立ってはいないけれど、ビルのベースがボブの歌とピアノを引き立てている。

Bill Evans / Waltz For Debby

 ピアニスト、ビル=エヴァンス61年の歴史的名盤。
 ピアノトリオの作品としては名盤で定番で一番売れてるし、聴いて間違いなく誰にでもオススメできる。ホントに優れたアルバムである。ジャズのことをよく分からないとか、初心者の方でもこれから聴きはじめれば、絶対にジャズが好きになれる、そんな作品。
 このアルバムをダメだとか、批判してる人やレヴューに出会ったこともないし、言う気にもならないと思う。聴きやすくて、素晴らしさもよく分かる。通的には良すぎてマニア心をくすぐられないってところかな!?
 ジャズ界ではベースのスコット=ラファロがこのライヴレコーディングの10日後に亡くなっていて、エヴァンスとラファロの名コンビの最後の作品なんて語られる。この2人でないとダメだ、なんて言う人も居るくらいだ。
 個人的には70年代の作品とかも大好きだし、ソロとかギタリストのジム=ホールとの作品もイイ。だけど、とりあえず、間違いない、とにかく聴いておけ!作品としてこのアルバムは必要だ。
 気に入ったら、是非彼が演奏している映像も観てみて欲しい。震えるほど渋いから!

Hajime Tachibana / Low Power

 立花ハジメ、97年の作品。
 彼に関してはそのスタンスから大好きだし、音もデザインも電子機器へのアプローチもとにかく影響を受けている。で、1枚選ぶのは至難の業だけれど、今回はこのエレピだけのとっても静かな作品を。
 とにかく聴いてくれ!ホント、それだけだ。エレピはエレピでもウーリッツァってやつね。これが魔法のように吸い込まれていく感覚になる音をしている。真っ暗な部屋でヘッドフォンで聴いてみて欲しい。ちょっと怪しい聴き方かもしれないけれど、聴けば納得の聴き方であることは間違いないよ。
 本日、ホント久々に鍵盤弾いたのもこれに入ってる何曲かを練習してみている。スラスラ弾けるようになって、自分でこれを越える鍵盤の曲を作りたいものだ。
 この作品、立花ハジメ的にみても特殊な音かも知れない。まあ、彼は音作るたびに驚かされる程先に進んでる人でもあるけれど。プラスティックス時代を含めて、最近のケータイサイトでダウンロードできる彼の最新の着メロも全部いいです。
 あと、あまり知られていないみたいなんだけれど、イラレのプラグインの「信用ベータ」も面白いし。行動すべてが気になる人物の1人であります。

Courtney Pine / Modern Day Jazz Stories

 サックスプレーヤー、コートニー=パインの95年の作品。
 まず、彼の演奏スタイルがコルトレーンに強い影響を受けているということもあって、テナーにソプラノの音色が大好きなラインということ。そして、いわゆる昔ながらのジャズな雰囲気を残しつつ、さまざまな音のエッセンスを取り込んでいる彼の前向きな姿勢。
 この2つが凄いしイイなぁと思う。その上で聴けば素直にカッコイイ。特にこの作品は何度も聴いているし、今現在でも新しい音だと思う。
 特に「I've Known Rivers」はフェイバリットなナンバーで12インチも持ってるんだけれど、かなりすり減っている。ソプラノサックスとピアノ、ヴォーカルの何ともアーバンな響きがたまらなく心地よい。
 今回掲載しているジャケットはUK盤のオリジナルで普通出回っているものはアメリカ盤のジャケでここに載っているものとは雰囲気も違ってます。もちろんUK盤の方がカッコイイと思うんだけれど・・・。
 年内に新作が予定されているようなので、そちらも物凄く楽しみだ。
Modern Day Jazz Stories

Monday Michiru / Delicious Poison

 Monday満ちる96年の4thアルバム。
 ここ2年ほど、オリジナルの作品はリリースされていない彼女。今までの作品全てを持っているのだけれど、どれか1枚と言われれば絶対にこのアルバムを取り出す。
 あっ、他がダメとか言うんではなくて、全部イイ。だけど、レコーディング作品としてはこの作品だけちょっと異質というかリアルというか・・・。唯一のバンド作品なのである。
 ベースを、大好きでありずっとマンディの盟友でもあったモンドグロッソ大沢伸一が弾いているというのもこれまたイイ部分。
 他の作品では打ち込みがかなり多用されてているけれど、この作品ではエレクトリックは含まれているけれど、バンドと声のナマのグルーヴが聴いていて素晴らしい高揚感をもたらしてくれる。
 1曲目の「Black Rose」のイントロからいきなり震えます。人間が実際にカラダを動かして楽器を奏でて音を出す人力感の説得力というか、凄さはやはり何モノにも代えられないと再確認できる音だ。

Nina Simone / To Love Somebody

 ニーナ=シモン69年の作品。
 シンガーであり、ピアニストでもある彼女は一般的にはジャズの人というイメージがある。でも、歌の側面から観るとジャズとは言いきれない、かなり独特なシンガーだと思う。
 そんな彼女のこの作品はこの当時のポピュラーな楽曲ばかりを歌ったカヴァーアルバム。タイトルになってるのはビージーズの曲だし、ディランにピート=シーガーなど、フォークやロックを歌っている。
 ほとんどの曲の原曲をよく知ってるし、聴いてもいたのだけれど、やはりニーナが歌うと彼女の歌になっているところが素晴らしい。
 ジャズ的であり、ゴスペルでもあり、もちろんフォーキーだったり、ロックンロールだったりする。自分の歌や声をよく理解しているが故の彼女流アレンジがとっても粋だ。
 これぞカヴァー!って感じの作品。人の曲をどれだけ自分なりのフィルタを通して消化し、自分のものとして表現するかを分からせてくれる。

Hoodrum / Classics 1

 テクノ番長こと田中フミヤと山本アキヲのユニット、フードラムの96年リリースのマキシシングル。現在フードラムとしてのしての活動は休止中。
 このクラシックは1とついているようにシリーズになっている。とは言っても2までしか出てないんであるが。とにかくこのシリーズはとっても静かで心地よいんである。最初に書いたテクノ番長がウソのように。特にこの1は大好きで、カモメの鳴き声のようなサンプリング?もしくはシンセ音?どっちかはっきりしないけれど、その鳴き声がホントに海辺、特に港に佇んでいる様を思い起こさせてくれる、とんでもなくクールなアンビエントサウンドなのである。
 またジャケの女性がキレイ。このシリーズだけこんな真っ白バックに白い服の女性が写っている。1も2も同じ人ね。聴けばこのシンプルなジャケットにも心から納得できると思うし。
 電子的楽曲でここまで心洗われる音もなかなかあるもんじゃない。イメージだけでも海が連想されるけれど、実際に海に行って聴くとなお良いと思う。ただし、夏の海じゃなくて、凍えるくらい寒い冬の海に。

James Taylor / JT

 シンガーソングライター、ジェームス=テイラーの77年CBS移籍第一弾となるアルバム。アルバムタイトルも心機一転的な部分もあって、彼の名前の「JT」に。
 JTと言えば、70年代初期のワーナー作品が名盤としてあげられるが、絶対このアルバムがいい。シンプルでフォーキーでメロディアス。先にあげたワーナー時代はブルース色もあって、それはそれでいいのだが、シンプルなサウンドこそ彼の歌声が引き立つし、そう考えるとこのアルバムなのだ。
 1曲目の「Your Smiling Face」、この曲が特に大好きで、JTを聴き始める遥か昔からラジオでSE的にかかってるのが印象的で、誰なんだろう?とずっと気になってた曲。JTと判明したきっかけは、実はセサミストリート。セサミストリートのコーナーであのキャラクターの人形に囲まれてアーティストが歌うコーナーがあって、たまたま観た時にJTがこの曲を歌っていたのを目撃。引っ掛かっていたものがスーッと消え、すぐにこのアルバムを買いに走った記憶がある。
 ともかく、泣ける位の嬉しさに襲われる名曲。アルバム全体も心地よい。

Arto Lindsay / Prize

 アート=リンゼイ、99年の作品。
 70年代からパンク、ニューウェーヴなど、時代時代の音のエッセンスを取り込みながら活動してきているけれど、ソロになってからの彼、90年代後半からの音が大好きだ。
 アメリカ生まれだけど、ブラジル人。この辺りが彼独特の音のキレイさを生み出す部分でもあるし、坂本龍一との関わりが今のソロサウンドと深く関わってて、教授の1番好きな作品で86年の「未来派野郎」、これに参加してて、この頃から関わっている。
 で、このアルバムだが、打ち込みとアコースティック楽器が心地よく混じってて実に素晴らしい。ブラジル的であり、アンビエントな雰囲気もありで。彼の作品の中では1番のお気に入りである。
 エイベックスから発売されているんだけど、リリース当時はファンはこのエイベックスからリリースということに皆ビックリしていたけれど、サウンドを聴いて一安心していた。
 レーベル色のイメージってあるとは思うけれど、今後どこからリリースされてもアート=リンゼイの音は彼独特なものだろう。