*music

sutero choice sound selection

Isao Tomita / The Firebird

 シンセサイザー奏者、冨田勲の75年の作品。タイトル曲である「火の鳥」は手塚作品の方ではなくて、ストラヴィンスキーのバレエ組曲。
 この作品の前に「月の光」と「展覧会の絵」という作品が出てるのだけれど、これら2つのオリジナルはピアノ作品だったのに対して、この「火の鳥」は管弦楽作品ばかりをシンセ、いやムーグで表現しようとした意欲作。
 音の説明の前に、このアルバムの解説にはレコーディングで使用したムーグの詳しいセット内容が書いてあって、オシレーターやミキサー、モジュール、フィルターなど、ムーグのこの加工使いました、みたいなのが丁寧に書いてある。
 現在なら、そういうアナログシンセの音加工なんて、ネタ的部分で隠すというか、言わないもんだけど、きっちり載ってるのが、75年という時代らしさだとも思う。
 さてさて、音ですが、それはそれは壮大なムーグサウンドが展開されております。SFっぽい感じかな。途中、ピコピコと昔のビープ音的ゲームサウンドを感じられる部分もあったりで。
 ストラヴィンスキー、ドビュッシー、ムソルグスキーの作品が収録されているのだけれど、オリジナル作品からは連想出来ない程のスペクタクル巨編って音です。原曲知ってるのは「はげ山の一夜」くらいだ。
 「牧神の午後への前演奏」のイントロは、クラシックスタートレックのイントロの雰囲気満々。
 今月から来月にかけて、この「火の鳥」を含む9タイトルが限定紙ジャケで再発されるので、是非!

Andras Schiff / Plays Bartok

 お久しぶりのクラシック、アンドラーシュ=シフによる、バルトーク作品。80年日本での録音。
 クラシックはほとんど知らないに等しいけれど、バルトークは大好きだ。ヘンなメロディ満載だから。特に、ピアノ作品が多いし、この作品の農民音楽とか、民謡の独自解釈からの作曲という視点も好き。というか、こういうことを1900年代初頭にやってる人がクラシックにいるということを知ったからこそ、興味を持った作曲家である。
 クラシックって宗教音楽じゃん!?なんて思ってた自分に衝撃を与えたものだ。色々音楽の録音される前の譜面とかもない時代のルーツ的音を探して聴いてた時期があるのだけれど、一番聴けなかったというか、ベールに包まれていたのが、東欧だった。アフリカとか中東よりも分かりにくかったし。それで、このハンガリーやルーマニア民謡という曲あるのを知ったら、バルトークであった、と。バルトークとシフは共にハンガリーの出身というのも、何かあるに違いない!と。
 で、音なんであるが、ピアノソロで、メロディ的には一般的なクラシックとはかけ離れた感じもあるけれど、絶妙な間だとか、かなりツボ。組曲で、一部ごとに拍子がちがってたり、ホント、ヘンって音でもあるけれど、聴くと落ち着ける音なんである。寝る前とかによく聴く。

Morton Feldman / Piano And String Quartet

 作曲家、モートン=フェルドマンのピアノとストリングスのための楽曲、85年の作品。演奏はクロノス=カルテットと高橋アキで93年リリース。
 モートンは現代音楽の作曲家でジョン=ケージなどと同時代に活躍した。個人的に彼は帽子好きだと思う。大抵の写真で帽子被って写ってるから。
 サウンドは鬼のようなミニマム。79分33秒という長い曲であるが、最初から最後までポツポツとピアノとストリングスの音が間隔的に小さな音で鳴っている。聴き込むって感じの音ではないが、この究極的なミニマムの手法のせいかどうか、引き込まれていく不思議な感覚が味わえる。
 このCD、現代音楽を聴き始めた頃に友人であり同僚だったクラシックバイヤーから頂いたものだ。以前の仕事柄、人にあげることはあっても貰うことはほとんどないんで、そういった意味でも貴重なCDかも。