*music

sutero choice sound selection

Arto Lindsay / Salt

298.gif アート=リンゼイ、2年ぶりの2004年の今のところ最新アルバム。国内盤は先週リリースされたばかり。
 いい意味で毎回聴かなくても音を想像出来てしまうのが、彼の作品とも言える。それだけ期待を裏切ることが無いということ。フワフワでありつつ、低音はしっかり出てるという、聴いててとっても気持ちのイイアルバム。
 しかし、今作は輸入盤のリリースから9ヶ月以上経ってからの国内盤リリースと、かなり時間が空いている。前作までは国内ではエイベックスからの発売だったのが今回はビデオアーツとなってます。まあ、レーベル等の権利関係とか色々あるのだろうけれど、それにしても遅かったなぁ、と。その代わり、コーネリアスとマシュー=ハバートによるリミックスがボーナストラックとして収録されているのはよろしいかと。
 音的にはブラジルな要素が強くなっている感じがする。これまでも、もちろん、ボッサな雰囲気いっぱいな部分もあったけれど、今作はサンバ的な要素が楽曲の半分位に感じ取れる。特には太鼓の入り方。ドラム的な感じではなくて、様々なパーカッションが心地よく、そして重たく響いている。
 昔、彼本人にインタビューをした人に話を聞いたことがあるのだけれど、アート=リンゼイの音の構築の仕方って、1曲につき、まず90トラックくらいざっと色んな音を作り込んでおいて、そこから取捨選択して、とってもシンプルでキレイな曲となっていくそうである。この話を聞いてからますます好きになったことは言うまでもない(笑)。
 それから、個人的に彼の作品が凄く好きなのはそのサウンドはもちろんなのだけれど、ヴォーカリストとしての彼の声が大好きなのだなぁと最近思うようになった。

Quarteto Novo / S.T.

285.jpg クァルテート・ノーヴォ、67年の唯一の音源である作品。
 エルメート=パスコアル、アイルト=モレイラ、テオ=ヂ=バホス、エラルド=ド=モンチという、名前を聞けばブラジルの音楽界では偉大なる重要人物ばかりのカルテットなのであるけれど、全然知らずに半年位前にアナログを買っておりました。決め手はブラジル盤だということと、フルート入りな音、そして790円という値段ですな。
 楽器は全てアコースティックでリズムもほとんどが太鼓系ではなくて、トライアングルやマラカスのようなカシャカシャ・シャキシャキ系で音全体も高音寄りとなっております。
 ボッサではなくて、ショーロな感じで、街ではなく、自然・緑って感じの雰囲気のインストでとっても気持ち良い。B面3曲目の「Misturada」は定番曲であるし、ブラジル系好きな方であれば絶対聴いたことあるはず。この曲だけはしっかりサンバしてます。
 好きなのはその「Misturada」の1つ手前の曲である「Sintese」。思いっきりゆったりしててフワフワ系でございます。
 とにかく、メンバーだけみても凄いんであるが、個人的にはナイロン弦なギターにピアノ、そしてフルートという柔らか高音系が思いっきり堪能出来る作品として、嬉し泣きです。フワフワ&高音系で心地良いというだけでなくて、演奏もかなりキッチリしてて上手いんで、安心して聴いてられます。
 格安なアナログはまだ出回ってるとは思いますが、CDもちゃんとリリースされております。さすがはブラジル音楽が一番入手しやすい海外、日本なことだけある。

Antonio Carlos Jobim / Wave

 続けて、言うまでもなくボッサの祖の一人であり、コンポーザーでありミュージシャンでもあるアントニオ=カルロス=ジョビンの67年の作品を。
 ジョビンに関しても色々言うよりも、ボッサ系聴くなら押さえとけ!的作品である。今ではボッサのスタンダードナンバー目白押しなアルバムだけれど、この作品をこの作品たらしめているのは、当然ジョビン本人なのであるが、それよりもCTIレーベルからリリースされているってことと、クリード=テイラーのプロデュースでルディー=ヴァン=ゲルダー・スタジオ録音だってのがデカイと思う。
 ジャケットワークも含めて、見事にCTI〜A&Mな世界観がある。サウンド的にはレーベルカラー中で最もイージーリスニングな作品でもあるだろう。
 あえて、文句というか、マイナス的な事を言うとすれば、上品過ぎるんである(笑)。本来のブラジリアンミュージックからの流れのパワフルさというかパンチの効きも無く、カッコイイ生臭さが一掃されているのだ。
 それだけに洗練されて、レーベルカラーにもマッチし、アメリカをはじめ、世界でヒットしたのも納得はいくのだけれど。
 まあ、持ってて全然オッケーというか、マストなアルバムであるのは間違いないけれど。
 個人的、このアルバムの聴き所というのは、ベースラインです。ロン=カーターの実直でありながら、微妙に遊んでる低音は心地よろし。
Wave

Joao Gilberto / S.T.

 今さら言うまでもない、ボッサの祖の一人であるジョアン=ジルベルトの73年の作品。
 とりあえず、ブラジル系押さえるなら持っとけ!な1枚ではあるけれど、このジョアンのライブに行く数日前まで持ってませんでした(笑)。全曲知ってるし、聴いたこともあるし、色んなコンピにも入ってたりで、いつか買えばいいやリストに入っている作品の1つみたいな感じで、先日、とうとうその時が来たって感じで買いました。
 ギターとシンバルと歌。それ以上でも以下でもないボッサなのだけれど、この深さは何!?と改めて思う。
 ボッサ好きにも色々あると思うのだけれど、一般的にはリズムが心地よくてちょっとストリングスやホーンの効いたジョビン系の方が分かりやすくて、聴くにも楽しいと思うし、それに比べればジョアンの作品は地味になってしまう。
 もちろん、そういう自分もボッサ聴き初めはジョビン的というか、ジャズにも共通する華やかな音の方が好きであった。
 今もどっちも好きなんであるが、突き詰めればジョアンのスタイルが最もボッサを体現してるんだなーと思うし、ライヴを観て、それが泣ける位の確信に変わった。
 でも、この73年の作品も、もちろんジョアンの1つのカタチというか音であるけれど、現在進行形のジョアンの歌こそ素晴らしいとも思った。
 このアルバムのジョアンの声は若い。これはこれで素晴らしい音だし、聴いていて嬉しくなれるアルバムだけど、正直に言うと、今のジョアンをライヴで体感して欲しい。それでここで色々語るよりもハッキリジョアンの良さが分かると思う。
Joao Gilberto

Wagon Cookin' / Everyday Life

 スペインの兄弟ユニット、ワゴン・クッキンの今年6月リリースの2ndアルバム。
 あのぅ、全然知りませんでした。1stが結構話題になったらしく、期待の2ndみたいな感じだったそうで。ともかく、これはジャケ買いです。もちろんアナログ盤。
 女性の後ろ姿、緑のシャツにブルーなGパン、それに合わせたブルーとグリーンの文字。これだけで買い!と決めつけて買いました。あと、タイトルの「Everyday Life」というのも好きだし、モンドグロッソにも同名の大好きな曲もあるし。そんな買い方です。
 音の方はというと、ジャジーでアフロでブラジリアンな打ち込み。と簡単に言い切ってしまうには、もっといろんなタイプの音が入っているのだが・・・。
 なかなかBGM的には爽やかな感じでサラーッと聴ける。しかし、辛口に言うと、そこまでな音で、聴き込むタイプではない感じだ。だからといってダメなわけではない。アルバムタイトル曲は女性ヴォーカルもあって、結構好き。それでもあんまり聴いていない。
 でも、こういうの好きという方も多いと思う。詳しくはこちらとか、色んなブログでリリースされた頃に取り上げられてたので、ご参考にどうぞ。
 とにかく、ジャケが好き。それだけで合格なのである。細かいことを言うと、彼らはこのアルバムをブラジルのスタジオで録音し、マスタリングをマドリッドでやっている。そういう大西洋を横切る音作りはイイなぁー。
 父親がジャズマンで、サックス&クラリネット奏者っていう環境で、兄弟でこういう音作るってのもいいよなー。
 兄弟ユニットは気になる存在だ。もうちょっと寝かせると、好きになる音かも知れない。

Caetano Veloso & Gal Costa / Domingo

 カエターノ=ヴェローソとガル=コスタによる、67年の1stアルバム。
 カエターノは大好きで、特に近年のオッサンになってなおカッコイイ彼の作品はよく聴いているのだけれど、本日、こんな夜更けにふと1stが聴きたくなって聴いてみた。
 まず、何も考えることなく「イイ!」ってことだけ思った。「なんじゃこの清々しさ。そして泣きそう!」となってしまった。
 やっぱり近年の作品に比べると、声が圧倒的に若い。まあ当たり前であるが、それまでここでも紹介した息子のモレーノ作品を聴いていたのだけれど、やっぱり声がそっくりだ。
 いつもであれば、もう少し解説をしたり好きな曲をあげたりするのだけれど、今回はそんな気になれない。とにかくたった30分少々の作品なのであるが、全部通してとっても心地よく嬉し泣きなアルバム。
 唯一解説するとすれば、この持っている盤はこれまた大好きなオノ=セイゲンによるリマスター盤だということ。これがまた、セイゲンサウンドを耳にしたことある方であれば理解頂けると思うけれど、絶品です。もちろん、元の作品が抜群だからこそだけれど。
 このアルバムのような静寂のグルーヴ作品はブラジルなボッサといえど、これからの秋の夜長にピッタリです。是非是非、嬉し泣きな夜を過ごして欲しい。

Toyono / Ginga mais

 ブラジリアンなテイストをふんだんに聴かせてくれるシンガー、トヨノの3年ぶりとなる2ndアルバム。先月のリリース。
 ブラジルでアリーニ=カブラウ、マルコス=スザーノに師事していたことがあるだけに、本格的というか、ブラジルらしさに加えて、自分らしさが現れている作品。
 1stは聴いてなくて、その他の活動についても最近までほとんど知らなかったのであるが、どこかで聴いたことのある声だなーって思ってたら、須永辰緒の「Double Standard」に参加してたから覚えがあったのであった。
 さて、この2ndだけど、まず、ほとんどの楽曲がオリジナルであるということに驚かされる。プラス、完璧なまでのポルトガル語。声質的には大好き!ってラインではないのだけれど、ポルトガル語のスムーズさに全く違和感なく聴けてしまう。
 ブラジリアンなサウンドだからボッサだ!と思いがちであるけれど、このアルバムはサンバだ。それも、とっても軽やかで爽やか。この辺りが日本人だからこそのテイストだとも思うし。マルコス=スザーノ好きならば確実に気に入ってしまう音であると思う。
 ほとんどがオリジナルであるけれど、好きなのはバーデン=パウエルのカヴァーである「Berimbau」。打ち込みが入ってたりするのだけれど、途中のリズムと楽曲を通してのギターがジャズしててツボだ。
 こういう心地よいサウンドでいいなーって系はいつもインディーズなんだなぁ。もちろんこのアルバムも。メジャーからでもよろしいのではないだろうか!?とはいえ、最近はあまりそういうのも関係なくなって来てるけれど。

Carlos Lyra / Bossa Nova

 シンガー&ギタリスト、そしてコンポーザーである、カルロス=リラの60年と61年発表の1stと2ndが一緒になった2in1アルバム。ここに掲載しているジャケットは1stの「Bosa Nova」のもの。
 ジルベルトやジョビンに続いてボッサの中核を支えた人物。1stのタイトルがモロなのも納得です。ボサノヴァという言葉を商標登録しようとしていたっていう、有名な逸話もあったりする。
 で、歌、ギターもとってもイイ感じなのですが、やはりリラといえば、その曲ですな。このアルバムはもちろん全て彼の曲です。とっても優しいというか、ソフトでムーディー。楽器の使い方がキレイ。クラシック的というかジャズ的というか、シャンソンのような雰囲気もあったりと、とにかく爽やかキレイ系なボッサとなっております。
 曲の尺も長くて3分半以内で、ラジオ向きな感じ。それはまあ時代的なものもあるのでしょうがないけれど、そんな短さでもとっても素敵にまとまっているっていう、コンポーザーとしての技も垣間見ることが出来たり。
 好きなのは1stの最初の曲である、「Chora Tua Tristeza」。邦題は「お前の悲しみが泣く」。タイトルは悲しいけれど、とってもポップでこのアルバムの全26曲の中で1番ボッサ的な楽しいテンポの曲。
 この作品の後のリラは、やはり、作曲家としての活動がメインとなって、自身のアルバムというものはそんなに多くないので、ブラジル好きな方であれば、この最初の2作品がまとまってる盤は押さえておくべきでしょう。

Monday Michiru / New Beginnings

 ここでの紹介も200アイテムを超えたので、そろそろ同じアーティストの別の作品もということで行きます。
 で、最初の方はマンディ満ちるさんで、2000年3月リリースのマキシ・シングルをご紹介。
 彼女のナンバーで超好きな「Something To Believe In」が収録されております。そりゃこの後のアルバムにも収録されておりますが、このシングル、四季をテーマにリリースされた4部作の最初の1枚で春ヴァージョンです。そういう流れがあるので、まとまってるアルバムではなく、シングルがイイんです。もちろんアルバムも持ってますが。
 この大好きである「Something To Believe In」を一言で表すならば、やはり涙が出そうな位の嬉しさに襲われる曲です。ブラジルフレーバーたっぷりでゆるやかなサンバ。両手を広げて踊り出したくなる雰囲気。
 他の曲も含めて、全部好き。春というテーマのシングルだけれど、この初夏の時期が結構しっくり来るかも。それはやはりブラジルフレーバーだからこそかも知れない。
 アルバムでは聴けない、色んなヴァージョンも入ってるからこれはこれでマストな作品。ともかく、そういう説明はどうでもよくて、フワッと聴きながら酔いしれていたいサウンド。心地よい。

Cuva Cuva / Stars & Wave

 三辺貴生の1人ユニットである、Cuva Cuvaの2001年の1stアルバム。
 ソングライティングから演奏、プログラミング、そして歌まで歌う、マルチなアーティストさんです。この作品では女性ヴォーカルのゲストを迎え、曲ごとにストーリーがあって、彼自身を含め歌い手が次々に変わって行く感じのコンセプトアルバム。
 やはり、ゲストの中で注目すべきは畠山美由紀でしょう。というか、彼女が参加してたから、この作品の存在を知って発売日に買ったって記憶している。
 で、畠山美由紀の歌う「Tao Longe Sempre Perto」が一番好きかな。ギターと歌だけのそれはシンプルでスローなボッサ。
 全体的にもゆったりとした時が流れて行く作品である。のんびり、ゆったり、構える事無く気持ち良く聴けるアルバム。
 2曲目の「Verb」のラストとか大好きな虫の声とか入ってて、前半のサンプリングなキラキラループと全く正反対な感じで余韻を残してたりするのもイイ感じだし。続く3曲目のタイトル曲でもある「Stars & Wave」にも虫の声、鳥のさえずりなんかが微妙に聴こえててやはり良い。
 せっかく、コンセプトアルバムということで、ブックレットに各曲の物語のような解説が書いてあったのに、無くなってしまって、読みながら、イメージを膨らませて、じっくり聴くってことが出来ないのが残念でならない。しかし、サラっと聴いてもとっても気持ちいいです。

Laurindo Almeida / Guitar From Ipanema

 先日もMJQとの共演作品を紹介したギタリスト、ローリンド=アルメイダ、64年の作品。
 多分、この作品で個人的にはボッサっぽいものを最初に聴いたんだと思う。もちろん、このアルバムでも1曲目である定番曲「イパネマの娘」は知ってたが、この口笛がメインメロディなのには、一瞬にしてハマってしまったのであった。ジャケットもとってもカワイイし、ホントはアナログで持っていたい。
 これを聴いて以後、ブラジル作品も大好きになり大量に聴くようになったのであるけれど、改めて今、またじっくりと聴いてみると、他のブラジル系、ボッサ系作品とは音質的に違うなーって思った。64年作品で古いのだけれど、とってもクリアな音だなーって思う。スタジオ録音てき臨場感が凄いって感じ!?って言うのだろうか、上手く表現できないけれど、そういう感じに取れる。
 とっても高音系でキレイなアルバムで、大好きなフルートも多用されてて、聴くとゴキゲンになれるほんわかワクワク系。でもギターをよく聴くと結構低音部分がしっかり出ててリズム楽器的にきっちり鳴っている。これがフルートをはじめ、歌や口笛のメロディを引き立たせているんだねぇ。
 好きで、思い入れもとってもある作品なので、何かと上手く表現できない事だらけになってしまって残念ではあるけれど、このカワイイジャケを手に取ったりしながら、ゆったり楽しく聴いて欲しい作品だ。

Lenine / O Dia Em Que Faremos Contato

 ブラジルのアーティストである、レニーニの97年の作品。3rdアルバム。
 まずはジャケ。このハヤカワSF文庫の装丁かのような宇宙艦隊チックな絵に非常に魅かれて購入したようなものだ。タイトルも邦題で「未知との遭遇の日」で、未来系にそそられる人間ならばチェックせずにはいられなかったし。
 レニーニはブラジルの北東部の出身でモロなボッサやサンバ系ではなく、アメリカのロックやポップスに陶酔した幼少期だったそうだ。この作品もロックやヒップホップな感じのサウンドも詰まっている。
 それでもやはり、ブラジルの音をしている。ポルトガル語の響きもだし、パーカッショニスト、マルコム=スザーノの叩きがよりブラジルらしくしているんだと思う。レニーニもブレイクしたのはスザーノとコンビを組んで活動を始めてからだし。ちなみにスザーノはリオ出身で、バリバリにボッサ&サンバな環境で育っている。
 あと、ギターの音がとっても面白い。リズム的にガットギターがジャカジャカリズムをブラジルらしくとっている後ろで、思いっきりエフェクトのかかったエレキがキュイーン!と鳴っていたりする。
 全体的に結構激しいサウンドが続くのだけれど、なぜか心温まる、やっぱりブラジルだなーと思える音で楽しい。
 レニーニの名前の由来はレーニンからで、確かにアルファベットでは確かにレーニンと読める。彼のお父さんがブラジル共産党の創設者だったということで、納得。

Moreno+2 / Maquina De Escrever Musica

 カエターノ=ヴェローゾの息子である、モレーノ=ヴェローゾのトリオユニットでの2000年の1stアルバム。
 やはり話題はカエターノの息子という部分に集中してしまうけれど、それはそれでイイのだ。とにかく、モレーノの弱々しい声が大好きだ。最初にサンプル盤で聴いた時には、ハッキリ言ってカエターノを初めて聴いた時よりもゾクゾクしたのだった。
 1曲目の「Sertao」なんて、涙が出そうな位の嬉しさに襲われる名曲ベスト3にここ数年はランクインしっぱなしだし。ガットギターが静かに響いてて途中から弦楽系とピアノが鳴ってくる部分で号泣。タイコレスなのも泣ける要因の一つ。
 全体的に静かでキレイな楽曲にモレーノの弱い感じの声な音であるが、打ち込みもあるし、ちょいと激しい感じの曲もある。幅が広くて、なおかつ心に染みる音。
 こういうサウンド作れるというのは、ブラジルならではであり、カエターノの息子だからこそだと思う。ホント、モレーノが息子で良かったね、カエターノさん!って言ってあげたい感じだ。そして、この作品をじっくり聴く事の出来る自分が幸せだ。ホント、そんな嬉し過ぎる気分にさせてくれる、極上の1枚なのだ。

Paulo Moura / Mistura E Manda

 ブラジリアンジャズ界では有名なサックス奏者、パウロ=モウラの83年のカルテット作品。
 元々はクラリネット奏者としてのキャリアスタートであるけれど、パウロといえばアルトサックス。Azymuthへの参加なども有名。で、この作品ではソプラノサックスで奏でられていて、ソプラノサックスマニアにはたまらない1枚。
 アルバムタイトルでもある「Mistura E Manda」はブラジルでは定番曲。これがイイ。このアルバムの中でも大好きな1曲。
 やはりサックスといえども、ソプラノサックスは高音もキレイなのだけれど、アルトでも出る位の低い音階を吹いた時の音が、たまらなく好きだ。管が直線だし、クラリネットに近い音色ともいえるけれど、そこは金属のクールさがお気に入り。
 しかし、クラリネットにアルトにソプラノと、パウロの器用さもお見事。詳しく調べてないので、知らないけれど、フルートも吹けばいいのにとも思う。
 全体的にはジャズというよりサンバっぽいサウンドが多い。ブラジル盤しかないので、入手は専門店でないと難しいかも。他のカルテット作品であれば日本盤もあり。ジャケ画像のリンク先で試聴できるので、是非堪能あれ!

Wilson Das Neves / Samba-Tropi

 ウルグアイ出身でブラジルで50年代から現在も活躍するドラマー、ウィルソン=ダス=ネヴィスの70年のリーダー作。
 サンバのビッグバンド的なメンバー構成で10人以上のホーンやギターも含めたとてもパワフルなサンバを聴かせてくれる。ピアノが大好きなサルバドールっていうのも聴きどころの一つ。
 結構、ポピュラー曲のカバーが多くて、プロレスのWWEで「とっとと帰れ!」みたいなシーンで「ナナナーナ〜」と歌われる「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye」だとか、「Venus」、「雨に歌えば」や「Come Together」まである。もちろん、どれもサンバテイスト全開。
 しかし、何なんでしょうかねー。ブラジルのアーティストのサウンドっていうのは、サンバはもちろん、ボッサやショーロまでもホントに独特で魅力的である。メロディもだけれど、リズムに特に魅かれるものがある。いわゆるドラムセットじゃなくて、パーカッション的なものが上手くメロディに絡んで来る具合というか。
 そう言っておきながらだけれど、このウィルソンはドラマーで、この作品はもちろんドラムセットで演奏されている。それでもロックとかそういうのにはない、独特なブラジルの、いや、ウィルソンのドラムワークのサンバ感があって素晴らしい。

Sergio Mendes / Brasileiro

 セルジオ=メンデス、92年の作品。
 セル=メンと言えば、ブラジル'66時代の活動、そして「マシュ・ケ・ナダ」だとブラジル音楽の好きな方達ならばまず連想すると思う。しかし、世界的に見ると、この92年の作品が1番のヒット作品なのである。この年のグラミー賞を受賞しているアルバム。
 初期のピアニストの時代からアレンジやプロデュースの頭角を現していたけれど、今作は完全にプロデューサーとしての作品となっている。カルリーニョス=ブラウン、ギンガ、イヴァン=リンス、ジョアン=ボスコ等の作品をセル=メン流の90年代アレンジ満載。
 60年代の上記のポップなボッサとは全く違うサウンドだけれど、この時代のブラジルの今!って感じが詰まっている。アルバムの最初と最後が100人位のゴージャスなサンバで人力感も凄い。
 時代と共に自分なりの音の表現を素晴らしくまとめあげるセル=メンはやっぱり凄い人だなぁーと感心するばかり。

Arto Lindsay / Prize

 アート=リンゼイ、99年の作品。
 70年代からパンク、ニューウェーヴなど、時代時代の音のエッセンスを取り込みながら活動してきているけれど、ソロになってからの彼、90年代後半からの音が大好きだ。
 アメリカ生まれだけど、ブラジル人。この辺りが彼独特の音のキレイさを生み出す部分でもあるし、坂本龍一との関わりが今のソロサウンドと深く関わってて、教授の1番好きな作品で86年の「未来派野郎」、これに参加してて、この頃から関わっている。
 で、このアルバムだが、打ち込みとアコースティック楽器が心地よく混じってて実に素晴らしい。ブラジル的であり、アンビエントな雰囲気もありで。彼の作品の中では1番のお気に入りである。
 エイベックスから発売されているんだけど、リリース当時はファンはこのエイベックスからリリースということに皆ビックリしていたけれど、サウンドを聴いて一安心していた。
 レーベル色のイメージってあるとは思うけれど、今後どこからリリースされてもアート=リンゼイの音は彼独特なものだろう。

Sadao Watanabe / The Girl From Ipanema

 渡辺貞夫の67年のセクステットによるボッサ作品。
 彼の名前はよく知っていても、その細かい初期の活動まではそれほど知らない方が多いのではと思う。まずはチャーリー=パーカーの再来と言われ、そのサックスプレイの凄さで世界を魅了する。この頃の彼のアルバムのジャケ写の顔はとっても鋭い。で、渡米して音楽観が広がり南米、特にブラジル、ボッサに魅せられていく。
 日本に最初にボッサを紹介したのはナベサダです。60年代後半から70年代にかけて、結構ボッサアルバムをリリースしている。何度もブラジルを訪れて録音も。
 で、この作品だけど、アルトサックスとフルートでとってもクールなボッサを聴かせてくれている。タイトルである「イパネマの娘」では口笛にスキャットも披露しているし。あと、「男と女」のボッサヴァージョンもキレイだ。
 現在も現役で活動を続けているし、最近は文章や写真をやったりもしている。ナベサダを見ると元気になれるし、演奏を聴くと心地よくて爽やかな一時を過ごせる。

Francis Albert Sinatra / Sinatra & Jobim

 フランク=シナトラとアントニオ=カルロス=ジョビン共演の67年の作品。
 ジョビン絡みの作品なら結構持っているけれど、シナトラの作品というのは多分、これしか持ってないと思う。シナトラの声は大好きだし、50〜60年代のゴージャスな彼の作品もムーディーでいい。でも、これ!っていうのはこのアルバムくらいだった。何せシナトラの作品数は鬼のようにある。で、売れるのは「マイ・ウェイ」の入ったベスト盤。この売場にいた実体験が他の作品に手を出さなかった理由かもしれない。聴くのは聴いていたんだけどね。
 さて、この作品だけれど、一言で表すと、ゴージャスムーディーボッサ。完全にシナトラワールドな1枚。ボッサをやらせてもさすがはエンターティナーシナトラ!ってところかな。しかし、ジョビンの良さもきっちり出ている。この辺りもさすがだ。
 「イパネマの娘」って曲はそれはもう数えきれない位のアーティストによって演奏されているが、1番聴いたのはこのシナトラの歌うヴァージョンだ。その次がローリンド=アルメイダというギタリストのインストヴァージョン。

Bossa Pianikita / In Cielo

 ピアニカ前田のバンド、Bossa Pianikitaの2001年の1stアルバム。
 ピラニアンズ、ソロとずっと聴いてきてるし、ピアニカの上手さと言ったらもうそりゃ凄い。このバンドでは名前にボッサってついてるように、ボッサチックなリズム、ガットギターにピアニカの音色が恐ろしいくらいにピッタリでフワフワだ。
 ピアニカって小学生の音楽教育用くらいにしか思ってない人がほとんどだと思うけれど、実際はとっても深い楽器だと思う。特にピアニカ前田の演奏をナマで聴いたならば絶対にそう思うはず。ビブラートやサスティーンなど、実に繊細な演奏が可能なのだ。
 実際に昔、本人に尋ねたことがある。体調も演奏に大きく左右するそうだ。3本の音階の違うピアニカを使っていたのだけれど、2〜3曲ごとにキーの違う曲をするのは何故?との問いかけに、そのくらいのペースでピアニカを替えないとつばが溜まっていい音が出なくなるからと教えて頂いた。
 ホント、イイ人でその人柄も音に表れている。心地よい音だ。
Il Cielo - EP

Quarteto Em Cy / Vinicius Em Cy

 ブラジルのコーラスグループ、クアルテート=エン=シーのヴィニシウス=ヂ=モライス作品を中心に収めた93年の作品。
 最初にブラジル系、主にボッサを聴くようになった頃は彼女達の声はフワフワし過ぎてボッサぽくないからと、あまり好きではなかったんであるが、今は何しろ個人的フワフワブームな時期なんで、とっても気持ち良く聴いている。
 ヴィニシウスといえば、ジョビンとの共作で、それこそこれがボッサだっていう、今ではボッサのスタンダードって曲を多数生み出した有名人。「おいしい水」や「イパネマの娘」等、有名曲が目白押しで収録されてる。
 だけど、彼女達が歌うと、上にフワフワと書いた通り、ボッサでも一種独特な雰囲気があっていい。ボッサ以前の曲も入ってる。
 酒はめっぽう弱いけれど、雰囲気のいい場所でゆっくりグラス片手に聴くなんてのが似合いそうなアルバム。
 ジャケットは日本盤のオリジナルデザイン。

Toninho Horta / Durango Kid 2

 ブラジルのギタリスト、トニーニョ=オルタの95年のソロアルバム。
 クラシックギターと歌だけ。ホントにシンプル。とにかく彼のギターは上手い。ブラジルらしくボッサなフレーズやクラシック、ジャズといろんな奏法を組み合わせ、彼オリジナルのギターの音色がここにはある。
 歌声も微妙に高音な彼の声は、上手いというか味がある。自分で弾きながら歌っているんで、ギターと声のマッチングがピッタリ。スキャットが多用されているんだけれど、そこがとってもいい。2つの楽器で演奏されているかのようで。
 熱いモノも伝わってくるし、クールな音でもある。それでいてフワフワもしている。
 日本にもよく来日していて、ライヴは定評がある。矢野顕子のサポートメンバーとして一緒にツアー回ってたりもするんで、テレビでお目にかかった方もいるかも。
 ともかく、玄人好みではあるが、とってもいいアルバムです。

Bebe / Bossa Nossa

 No.11でも紹介したJazztronikの初期にヴォーカリストとして参加していたbebeの2000年のソロデビューアルバムからセレクトした、6曲入りのアナログ限定ミニアルバム。2001年発売。サウンド&プロデュースは野崎良太が手がけ、詩は彼女自身によるもの。
 声の不思議な感じとアコースティックと打ち込みが絶妙なバランスで絡み合ったこの感じは、実に新鮮であり、懐かしくもある。日本語、英語、ポルトガル語それぞれの詩の曲が混じっているのだけれど、全く違和感なくスムーズに耳に入ってくる。
 音はこれからの季節にピッタリだし、言うことはないのは当然として、実際にはこのレコードはジャケ買いです。発売当時、渋谷のレコード屋をウロウロしていてこのジャケットを目にして「可愛いジャケだ!」ということで即手に取ってた。レコードは音はもちろん重要だと思うけれど、ジャケットデザインも同じくらい重要だと思う。なによりCDと比べサイズも大きいし。
 さて、彼女は最近ニューアルバムをリリースしてまして、ジャズ仕様でアルバムのジャケ写は篠山紀信撮影。

Bola Sete / Bossa Nova

 ブラジルのギタリスト、Bola Seteの62年のファーストアルバム。タイトルはまんまのボサノヴァなんだけれど、62年という年代的にもサンバ要素もふんだんにありつつ、ジャズ系の奏法でも聴かせてくれる。
 彼のアルバムのほとんどはFantasyというアメリカのジャズメインのレーベルから出てて、のにちトリオやコンボでの作品も発表していくんですけれど。
 1番影響を受けたのは20年代に活躍したジャンゴ=ラインハルトだそうで、なるほど!という感じもあるのだけれど、そこはやはりブラジル出身だけに、このメロディアスなフレーズは彼独特なものがある。
 それにクラシックギターのナイロン弦の柔らかな響き、ここに個人的には惹かれるモノがあるんでブラジル系の音は大好き。他のアルバムではショーロをプレイしてたりします。