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sutero choice sound selection

Arto Lindsay / Salt

298.gif アート=リンゼイ、2年ぶりの2004年の今のところ最新アルバム。国内盤は先週リリースされたばかり。
 いい意味で毎回聴かなくても音を想像出来てしまうのが、彼の作品とも言える。それだけ期待を裏切ることが無いということ。フワフワでありつつ、低音はしっかり出てるという、聴いててとっても気持ちのイイアルバム。
 しかし、今作は輸入盤のリリースから9ヶ月以上経ってからの国内盤リリースと、かなり時間が空いている。前作までは国内ではエイベックスからの発売だったのが今回はビデオアーツとなってます。まあ、レーベル等の権利関係とか色々あるのだろうけれど、それにしても遅かったなぁ、と。その代わり、コーネリアスとマシュー=ハバートによるリミックスがボーナストラックとして収録されているのはよろしいかと。
 音的にはブラジルな要素が強くなっている感じがする。これまでも、もちろん、ボッサな雰囲気いっぱいな部分もあったけれど、今作はサンバ的な要素が楽曲の半分位に感じ取れる。特には太鼓の入り方。ドラム的な感じではなくて、様々なパーカッションが心地よく、そして重たく響いている。
 昔、彼本人にインタビューをした人に話を聞いたことがあるのだけれど、アート=リンゼイの音の構築の仕方って、1曲につき、まず90トラックくらいざっと色んな音を作り込んでおいて、そこから取捨選択して、とってもシンプルでキレイな曲となっていくそうである。この話を聞いてからますます好きになったことは言うまでもない(笑)。
 それから、個人的に彼の作品が凄く好きなのはそのサウンドはもちろんなのだけれど、ヴォーカリストとしての彼の声が大好きなのだなぁと最近思うようになった。

Tomita Lab / Like A Queen

297.jpg 冨田恵一のソロプロジェクトである冨田ラボの昨日リリースのニューシングル。
 今回の曲は吉田美奈子の詞にソウルヘッドとのコラボレーションで新鮮でもありつつ、サウンド的にはやっぱり冨田恵一だ!という感じの、ある意味定番ともなりつつある馴染みやすい音。
 しかし、何なんでしょうかねー…このストリングス&ホーンを絡ませたポップチューンな楽曲としてのバランスの良さは。日本のサウンドメーカーとしては大沢伸一と冨田恵一、この2人の生み出すこういう雰囲気の音作りはどの曲も似ているようであり、他の人の感じとは全く違う、一瞬でイイなぁーと思わせるものがある。
 ちょいとジャケのお話でも。とってもキレイな女性に運転中の交差点でバッタリ出くわす的な写真ですが、バリバリの合成ですね(笑)。これまでの冨田ラボ作品のジャケとしては一番好きな感じだけど、最近一眼デジで色々写真撮ってるのもあって、後ろの風景のボケ具合の不自然さが何とも目立ってしまうのでした。この同じ設定で合成でなければ鬼のように好きなような気がする。
 ともかく、当然のようにヘヴィーローテとなっております。それだけにシングルではなくて、早くアルバムの登場を!と思ってしまう。しかし、アルバムは年末位になりそうとのこと。その代わり、今年はシングルを連発するらしいので、楽しみでもある。それでもやっぱりまとめてドカッとアルバムで聴きたいよなぁ。2枚組とかでもいい。

Sam Prekop / Who's Your New Professor

296.jpg シー・アンド・ケイクのリーダーであり、画家や写真家としても活動しているサム=プレコップの6年ぶりとなる2ndソロアルバム。今月頭のリリース。
 いやー、1stから6年は長かった。ホント、待ってましたよ、この時がやって来るのを。まあ正直、思いっきり待ってた訳でもないけれど(笑)、この2ndが出てると知った時には鬼のように嬉しかったです、ハイ。この6年の間にシー・アンド・ケイクの作品は2枚出てるし、そういう意味ではいいタイミングでもあるのだけれど、なぜかシー・アンド・ケイク作品はあまり好きではないのであった。もちろん、持ってはいるのだけれど、あんまり聴いてもいなくて・・・。
 何しろ1stが大好きで当時は激聴盤だったし、ソロの方がよりアコースティック寄りというか、大人しめでフワフワ感も堪能出来るので、断然ソロ派なのでした。今作も1stと全く同じメンバーで制作されていて、1stの延長的な部分もあるけれど、大きな違いは1stはここでも紹介したジム=オルークのプロデュースだったのが、この2ndはミキシングのマジシャン的なジョン=マッケンタイアのミックスだという部分。聴いてて、凄く気持ちいいんです、彼のミックスした音というのは。この作品、是非ヘッドフォンで聴いてみて頂きたい。抜群のステレオサウンドでございます。
 あと、シー・アンド・ケイクよりもソロが好きってのはリズム隊が違うってのが個人的にはすごくデカイんだと思う。ソロというか、1つのバンドサウンドとして、とっても完成されてます。
 この2nd、ここのところ激ヘヴィーローテな訳だけれども、合間にシー・アンド・ケイクの6thを聴いたりもしてみたら、意外と心地よく聴けたのでビックリした。しかし、ソロがやっぱり好きです。全曲好きだけれど、特にと言うと、唯一のインストである2曲目の「Magic Step」、そして、じわっと嬉し泣きな感じの4曲目「Two Dedications」かな。

John Patton / Let 'em Roll

295.jpg オルガンプレーヤー、ジョン=パットンの65年の作品。ブルーノートNo.4239。音的にもジャケ的にもパットンの作品で1番好きなアルバム。
 カルテット編成なのだけれど、ベースレスのオルガン、ギター、ヴィブラフォン、ドラムという構成で、ギターはグラント=グリーンだし、ヴィブラフォンはボビー=ハッチャーソンという、好きなメンツで構成されているから、尚更好きというのもある。
 最近、ブルーノートばかり紹介していますが、これはレコード棚の同じ一角にあったんではなくて、ちょっと別の棚のブルーノートも聴いてみようと、色んな場所を眺めていたところに、飛び込んできたアルバム。偶然にも前回紹介した「Lou Donaldson / Mr. Shing-A-Ling」と同じくスタンダードの「The Shadow Of Your Smile」が収録されていて、聴き比べたりもしてみたのだけれど、これがまた面白い。こちらはモロにオルガンジャズな雰囲気プラス、ヴィブラフォンがとてつもなく効果的にサイドで鳴ってて心地よさ倍増な音です。
 ジャズにしてもその他いろんなサウンドを聴く時にリズム隊をメインにして聴くタイプだってことはこのブログでも何度も言っているのだけれど、このベースレスな作品について、「ドラムだけでどうなの!?」って思う方もいらっしゃるかもしれないんで、一応触れておくと、ベースレスだけれども、ベースラインはきちんとあるんです。何で鳴らしてるかというと、オルガンジャズ好きな人には当たり前なことですが、そう、オルガンのペダル部分がベースラインを奏でてます。
 パットンさんは両手足4本を巧みに使いこなして演奏しておるということです。とにかく、オルガンジャズ作品としてもかなり好きな作品です。

Let 'Em Roll

Lou Donaldson / Mr. Shing-A-Ling

294.jpg アルトサックス奏者、ルー=ドナルドソンの67年録音作品。ブルーノートNo.4271。
 つい先日も1500番台の彼の作品を紹介したばかりではあるけれど、ここのところ、レコード棚の60年代後半から70年代前半にかけてのブルーノート作品が固まってある一角からばかり聴いていたりするので、最近もブルーノートばかり紹介したりということになってます。
 この作品は彼の代表作である、「アリゲーター・ブーガルー」のちょうど半年後に録音されてて、メンバーも大体一緒で、サウンド的にも続編のような感じ。こっちの方がちょっと上品な感じがあるかなーって具合かな。
 ルー=ドナのサックスはもちろんなのだけれど、ロニー=スミスのオルガンが「アリゲーター・ブーガルー」と同じくとっても印象的な作品。スタンダードナンバーである「The Shadow Of Your Smile」も収録されているのだけれど、ビートがちょっぴりボッサ調でこれまたなかなかよろし。
 4000番台黄金期と言われる4200番台までのギリギリラインの作品だけれど、ここ数日で紹介している、それ以降の作品と比べると明らかにジャズしているなぁと感じとれます。個人的には68年という年がジャズにしてもロックやソウル、もっというとアメリカの歴史的に変革期の頂点で、それ以前と以後では様々な意味で音が違うって思うのだけれど、そういう視点から見ても、健全なジャズという感じさえする(笑)。まあ、68年が変革の年とはいえ、それ以前にも以後にも、それぞれ好きであり、もちろん素晴らしい作品はたくさんある。でも、この年をポイントにアメリカ現代史を読み取りながら音を聴くというのもなかなか面白いことである。

Jimmy McGriff / Electric Funk

293.jpg オルガンプレーヤー、ジミー=マクグリフの69年の作品。ブルーノートNo.4350。
 前回紹介したバードのアルバム同様にブルーノートの末期というか、低迷な時代の作品。かろうじて4000番台ですが、このジャケの雰囲気といい、メンバーもunknownがあったりと、かなり大ざっぱなリリースだったことが想像される1枚。しかし、こういうジャケもまた好きですが(笑)。
 さて、この作品、オルガンジャズとして聴くにはリズムもアレンジも全然そういう感じがしないし、実際、ジャズファンには不評な作品であったりもする。しかし、この作品の良さはタイトル通りファンクなんだーって聴いてもらうと実感できると、個人的には思う。
 全体の雰囲気としては70年代の日本の刑事・探偵モノなドラマでよくかかってそうなサウンド。インストだけど、歌が乗るとするなら、デビューしたてな頃の和田アキ子がこの音をバックに歌ってても全然違和感が無さそう、って感じでもある。
 要はこの頃のブルーノート作品の大抵のモノに言えることでもあるのだけれど、低迷しているジャズシーンから、よりマスな方面へ向けて、少しでもセールスを上げる為にロックやファンク、ソウルやフュージョンなど、何でもアリなサウンドにしてとにかく録って売ってしまえ!的な部分がかなりあるのは否めない。しかし、その何でもアリってごった煮感がとっても面白いサウンドを生んでたりもするし、特に70年代初期〜中期のソウルはこんな感じの延長のラインが一部あったりするんで、やっぱり腐ってもブルーノートだとも思ったり。
 好きなのはこの作品唯一の自分達以外の曲であり、今となってはある意味定番な「Spinning Wheel」。久々に聴いたけど、カラダは覚えてました。

Electric Funk

Donald Byrd / Street Lady

292.jpg トランペッター、ドナルド=バードの73年の作品。
 ブルーノート作品です。しかし、年代からもわかるように、70年代になってジャズ自体が益々低迷していく中、当然のようにブルーノートもそういう流れの真っ只中にいた訳で、この当時は「そんな作品あったの?」程度な扱いだったりするんですなぁ。しかし、だからこそ、こういうジャズともフュージョンともソウルとも言えるようなユニークな作品が生み出されたのだろうなぁ、とも思えたりする。
 この作品はバードの弟子というか教え子でもあったLarryとFonceのMizell兄弟による制作で、モータウンでも活躍した彼らが絡んでいるからこその、とってもグルーヴィーなサウンドが堪能できる作品であります。
 思いっきり注目され始めたのは90年代になってからのことで、クラブでのレア・グルーヴなブームの中の代表曲的な「Lansana's Priestess」が入っております。国内盤はMuro監修ってことでリリースもされてましたな。最近ではこの「Lansana's Priestess」はここでも紹介したブルーノートなコンピ「Blue Note Revisited」にも入ってますね。
 ホント久々にアナログを聴いてみたのだけれど、色んなテイストが詰め込まれてて、面白いアルバムです。久々で全体の雰囲気を忘れていたのだけれど、いい意味で思いっきり裏切ってくれました。飛び道具のように、オモチャ箱のようにこれでもか!って具合に色んな音色とリズムが飛び込んで来ます。しかし、バードのペットはバード!ってモロな感じで嬉しくもなれて。

Marco Di Marco / At the Living Room

291.jpg イタリアのピアニスト、マルコ=ジ=マルコのトリオによる73年のパリでの録音作品。
 つい先日、試聴機ツアーを試みた時に偶然聴いたのがきっかけで購入。なんと言っても1曲目の「I Miei Ricordi」が大好きなエレピで奏でられていて、この曲だけで買ったようなもんです。イントロはベースがとってもカッコよく、伴奏なエレピが「ストールン・モメンツ」を連想させてくれるのもデカい。
 で、エレピばっかりな音となっているのかと思って楽しみに買って帰ったのではあるけれど、2曲目以降は全面ピアノであった。実はちょっとガッカリもしたのだけれど、よくよく聴いていくうちに、ピアノはピアノで素晴らしいし、ハードな曲からバラードまで、とっても美しい音色が詰まった全8曲だなぁ、と。
 大体、そのハードめな曲とバラードっぽいしっとり系の曲が交互にある感じでバランスもとってもイイ。ピアノの方で好きな曲は「Valse」かな。しっとりしていながら、淡々と地味な曲なようでありつつ、ピアノのアドリブ的なメロディがとっても気持ちいい。これに大きく関わってるのが、ベースライン。結構な部分でかなりの高音なベースが展開されていて、ウッドベースの高音というのがまたたまらなく心地よいのである。曲として、ちょっと短いのが残念な位もっと聴いていたいナンバーだ。
 やはり、最初のエレピの印象がとてつもなく強いけれど、ピアノトリオの作品として、ゆったり、そして長い間聴いていられそうな作品。ホント気持ちイイですよ。

Thelonious Monk / Solo Monk

290.jpg ピアニストであり、作曲家でもあるジャズマン、セロニアス=モンクの64年から66年にかけてレコーディングされた、アルバムタイトル通りのソロ作品。
 このソロ、アルバムとしてはそんなに評価された作品ではなかったと思うんだけれど、個人的にはとっても好きなモンクの1枚、と言っていいと思う。まず、モンクのスタイルとして、他の楽器と全くぶつかることのないソロというのは一番合っているのではないか、と。もちろん色んなコンボでの傑作とも言える演奏も多々あるけれど、やっぱりソロだ。
 メロディの難解さというか、リズムの不規則性とか、色々とモンク独特の奏法として、確立されてはいるのだけれど、ソロでじっくり聴くと、ホント単純な音の組み合わせでいたってシンプルだなって思う。しかし、その組み合わせ方こそがモンクのそれ、独特さを生んでいるのも確かなんだけれど。そこがとてつもなく聴いてて気持ちがイイんである。
 元々、ディキシーランドやラグタイム系の20年代頃の音が好きというのもあるんで、モンクのスタイルにはそういう部分が多々見受けられるからより惹きつけられているような気もする。
 ちょっと聴いてると、自分でも弾けそうな気にもなってしまうから面白い。そんな簡単に弾けてしまう訳は絶対ないのだけれど・・・。軽快なテンポの曲からしっとりバラード系まで、どれをとってもやっぱりモンクなテイストで溢れているこのソロ、夜中にしっとり聴くには最適でございます。そして、ますますモンク好きになっていくのであった。