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sutero choice sound selection

Jim O'Rourke / Insignificance

347.jpg ジム=オルーク、2001年リリースのソロ名義のフルアルバムとしては2作目に当たる作品。
 このアルバムもリリースされた頃から持ってるにもかかわらず、あんまり聴いていなかった作品。その当時、やっぱり彼のソロであれば、ここでも紹介している前作の「ユリイカ」の流れをくんだポップなエレクトロニカを期待していたのもあり、1曲目の「All Downhill From」のギュインギュインなギターを聴いて、おや違う!?な気分になってしまってたんで、そんなに聴いて来なかったのであった。
 で、最近このブログで紹介している少々古い作品と同じく、久々にじっくり聴いてみて改めてエエなぁーと思ったモノの1つという訳であります。
 60年代、いや70年代っぽいエッジの効いたギターのディストーション具合が鬼のようなロックを感じさせてくれ、そんな中にもちょっとしたフレーズではジムらしいというか、繊細で美しいメロディが見え隠れするそのバランスはやっぱりジム=オルークの音なんだ!って実感出来ます。
 アルバムの後半に差し掛かってくると、フォーキーになりギターもアコギでアルペジオのフワフワ&キラキラした音がとっても心地良く聴けてしまいます〜。
 ロックな感じとフォークな感じがあるアルバムですが、基本はポップ。さっきも書いた、繊細で美しいメロディが凄くイイというのと、ジムの作品ってソロ以外でもリズムの刻み具合がまさにマジックだ、と。間だったりタイミングだったりも微妙にずらしてたりしてあるのが、心地良さを倍増させてくれたり、単純なビートの部分でも良く聴くとそれはそれは細かい音作りがされているのには感心してしまいます。
 ジム=オルークって人の作品は聴く度に新たな発見をもたらしてくれて嬉しいですな。

Jack Johnson / In Between Dreams

321.jpg ジャック=ジョンソンの今年リリースの3rdアルバム。先月、来日記念スペシャルプライス盤が出てたので買ってみる。
 単刀直入に言うならば、とっても好きな音。アコースティック具合と脱力感っぽい飾らないフワフワ感溢れる音である。そんな好きならば、1stの頃から聴いてたのか!?という問いに対しての答えは「ノー」。この3rdで初めて聴きました。
 だって、輸入系のレコ屋で2002年の始め頃の店頭はジャック=ジョンソン一色!まではいかなくとも、ガンガンに展開してあったのを見て、こんなメインストリームなCDは買ってはイカン!って勝手に防護柵を張ってしまったのでありました(笑)。
 あとは、サーファー系ってのが、何とも自分と対極の世界だし〜とか思ってたのもある。この感じはスケーター系だし〜と、最初にこれまた拒否反応を示していたトミー=ゲレロの時とそっくりで。。。ゲレロの時の拒否反応は当時レコ屋の兄ちゃんだったこともあるんで、ごく僅かだったけれど、今回のジャックさんに関しては、3年も聴かず嫌いやってました〜ってことになるかな。
 で、とっても好きなラインではあるけれど、そんな突っ込んで聴いてもいなかったりする。最近、iPod shuffleの中身のごく一部を入れ替えたのだけれど、その中にこのアルバムからも入れてはあります。「Good People」って曲。能天気なギターのメロで始まる感じが何とも好きで、シャッフル中に流れて来るとなぜだかホッとする具合が良いです。
 アルバム通してはそこまで聴いてないとはいえ、この作品、もっと大好きになれるとすれば、それは歌詞を理解出来れば!とは思う。そう、スラスラ英語が話せて歌えて、ヒアリングもバッチリならば、この作品はもっとありがたい音となってくれそうな気がとってもするんであった。英語圏の音全てに言えるのかも知れないけれど、このアルバムでは特にそれを思ってしまった。
 まあ、日本語、特に広島弁ネイティブな人間にとって、スラスラ詞や言葉として耳に飛び込んでくるモノに対して即座に一喜一憂出来るのはやはり日本語な訳だけれど、よー分からんからこそ、より音の響きだったり具合に注意深くなれるということもあるんだわなぁー。どっちにしても音好きってのはイイもんです。だって、こんなこととか考えたり出来るんだしね。

In Between Dreams

Sam Prekop / Who's Your New Professor

296.jpg シー・アンド・ケイクのリーダーであり、画家や写真家としても活動しているサム=プレコップの6年ぶりとなる2ndソロアルバム。今月頭のリリース。
 いやー、1stから6年は長かった。ホント、待ってましたよ、この時がやって来るのを。まあ正直、思いっきり待ってた訳でもないけれど(笑)、この2ndが出てると知った時には鬼のように嬉しかったです、ハイ。この6年の間にシー・アンド・ケイクの作品は2枚出てるし、そういう意味ではいいタイミングでもあるのだけれど、なぜかシー・アンド・ケイク作品はあまり好きではないのであった。もちろん、持ってはいるのだけれど、あんまり聴いてもいなくて・・・。
 何しろ1stが大好きで当時は激聴盤だったし、ソロの方がよりアコースティック寄りというか、大人しめでフワフワ感も堪能出来るので、断然ソロ派なのでした。今作も1stと全く同じメンバーで制作されていて、1stの延長的な部分もあるけれど、大きな違いは1stはここでも紹介したジム=オルークのプロデュースだったのが、この2ndはミキシングのマジシャン的なジョン=マッケンタイアのミックスだという部分。聴いてて、凄く気持ちいいんです、彼のミックスした音というのは。この作品、是非ヘッドフォンで聴いてみて頂きたい。抜群のステレオサウンドでございます。
 あと、シー・アンド・ケイクよりもソロが好きってのはリズム隊が違うってのが個人的にはすごくデカイんだと思う。ソロというか、1つのバンドサウンドとして、とっても完成されてます。
 この2nd、ここのところ激ヘヴィーローテな訳だけれども、合間にシー・アンド・ケイクの6thを聴いたりもしてみたら、意外と心地よく聴けたのでビックリした。しかし、ソロがやっぱり好きです。全曲好きだけれど、特にと言うと、唯一のインストである2曲目の「Magic Step」、そして、じわっと嬉し泣きな感じの4曲目「Two Dedications」かな。

V.A. / Make The Style "drivin' slow"

 先月末にリリースされた、大沢伸一選曲による、ドライブがテーマのコンピレーション。
 大沢モノ大好きとして、発売日に一度手に取っていたのだけれど、「またコンピかぁ」って買わずにいた。それでもやっぱり気になったので先日購入。
 で、聴いてみて、嬉しさ、楽しさ、懐かしさ、新たな発見など、様々な気分になれた。もちろんというか、知ってる曲がかなりを占めているのだけれど、こうしてコンピになってるものを聴くと「もっと音聴かにゃあいかんね〜」という思いが強くなる。
 それから、フロア系コンピではないというのもイイ。ドライブにもピッタリだとは思うけれど、ゆったりくつろぎながら聴いていたい全31曲。
 一番「良い!」と再発見できたのはここでも紹介した、アメール=ラリューが歌う、モンドグロッソの「Now You Know Better」。せっかくのコンピなのにそれでもやっぱり大沢モノかい!?って声も聞こえてきそうだけれど、ホント、この並びの中から鳴ってくるこの曲はメチャメチャ聴いていたにもかかわらず、鳥肌が立った。
 普段はここでの紹介をオリジナルアルバムをメインに考えているし、オリジナルの持つ、作品性も含めて紹介したいという気持ちが強いのだけれど、久々にこのコンピを聴いて衝撃が走った。コンピももっと聴こうって思う。
 というか、コンピはかなり持ってたりするんですが。まあ、こんなに色々考えなくても、素直に楽しめる作品。オススメ。
 協賛のトヨタのこのサイトで試聴もできるので是非。

Misty Oldland / Supernatural

 U.K.のヴォーカリスト、ミスティ=オールドランドの94年の1stソロアルバム。
 いやー、当時は流行りましたなー。特に2曲目である「A Fair Affair」はジュ・テームがサンプリングしてあることもあってか、当時はいろんな所で流れていた記憶がある。
 時の流れと同じように、全然聴かなくなっていたアルバムの1枚だったのだけれど、去年頃、久々に聴きたくなって、聴いてみたところ、やっぱり良くて、最近ではたまに聴くようになった。
 やはり、ミスティの声はキレイだし、歌い方がカワイイ。ポップスなサウンドなので、楽曲的というか、楽器の音の鳴りって部分ではさすがに少し古いって感じは否めないけれど、彼女の声はとっても素晴らしい。
 特に好きなのはラストの「Groove Eternity」。ゆったりレゲエ調で優しい曲だ。声ももちろんだけれど、ラストのラストに流れてくるミュートペットの音がとてつもなくツボなのである。
 この曲だけ聴きたい時もある位なのだけれど、このアルバムは、最初からゆっくり聴いて、ラスト曲の気持ち良さをたっぷり味わうって感じで、聴き終わる直前が楽しみでしょうがない1枚だ。
 残念ながら、現在製造中止です。しかし、この作品は必ず再発すると思う。

Beck / Mellow Gold

 ベック、94年のデビューアルバム。
 このアルバムでも1曲目となっててデビュー曲でもある「Loser」はやっぱりスゲエ!と当時思ったものだ。しかし、ベックの作品で一番よく聴いたのは実は2ndの「Odelay」。ポップさと聴きやすさは5枚のアルバム中2ndが一番だと今も思う。
 で、この作品だけれども、リリースされた時にちょこっと聴いたくらいで終わってたのが、自分の中でガラッと変わったのがちょうど5年位前のこと。友達のイベントに行ってて、ダンス系の曲が続く中で、急に「Loser」がかかり、「ぶちエエわ!」とそこでカッコ良さを再認識。それで家に戻ってからじっくりと1stアルバムを聴き直してみると、フォーキーでブルージーなギターの音がしびれる!って感じになってしまい、大好きになったという次第。
 このアルバムのほとんどの曲は最初は8トラのMTRで作ったという凄さというか、勢いも改めて感心したし。今やポップスターな感のある彼だからこそ、この1stの雰囲気がより渋い!って思えてしまうんである。
 もちろん最近の作品も好きだし、いつも彼のPVは楽しみでしょうがない。映像もとても遊び心があってハイクオリティなナンセンスが大好きだ。
Mellow Gold

Brian Auger & Julie Tippetts / Encore

 元々ピアニストであり、オルガン弾きとして有名なブライアン=オーガーの78年の作品。
 トリニティ、オブリヴィオン・エクスプレスとジャズやR&B的要素の強いバンドで活躍した後のソロ第一弾がこのアルバム。ヴォーカリストとして、トリニティ時代の盟友、ジュリー=ティペッツを大々的に起用。アルバムタイトルの邦題が「想い出にアンコール」ってなるのがちょっと好きかも。
 音的にはいわゆるAORと言われるジャズテイストなポップス、さわやかサウンド全開な雰囲気。アル=ジャロウやアニマルズの曲なんかやってます。カヴァーもいいのだけれど、この作品では彼のオリジナル曲「Git Up」が好き。オリジナルはこの1曲なのだけれど。ソウルフルなロックって感じ。タイコの刻みが70年代してて気持ちいい。
 全体的にやはり、ハモンドオルガンの音がいい。あの、回転スピーカーから飛び出すうねった音はデジタルではマネできないウォーム感がある。いかにもAOR的なものから、ロック全開や超ジャジー&ソウルフルなものなで、オーガーのオルガンサウンドは変幻自在である。
 AOR系で括られてる音は実はあんまり好きではなかったのだけれど、よく聴くとイイ音たくさんありますな。自分の中ではマイケル=フランクスがちょいとロックテイストになった感じって捉え方なのかもなと思ってしまった。

Sun / Sun

 オーストラリアのオーレン=アンバーチとクリス=タウンドによるデュオ、サンの2003年のデビュー作品。
 黄色と赤のレコード屋のアンビエントコーナーにて入手したのであるが、最初ジャケの雰囲気からシカゴ音響系のスリルジョッキーレーベルの作品だと思い込んでいた。全然違うんであるが、サウンド的にはそれなりに近い感じ。エレキとリズムと歌がとってもフワフワブレンドで心地よい。
 店頭コメントにはアコギと打ち込みなエレクトロなんて書いてあったけれど、エレキだし、ポップなフォークって感じだ。コメント書いた人、ちゃんと聴けよ!とここで突っ込みを入れておこう。
 しかし、個人的にはこのフワフワなバンドサウンドは大好きだ。特に2曲目の「Reach for the sky」はフェイバリット。全体的にもウダウダしてるのではない脱力感があってイイ。オーストラリアという地域的な特色というのは個人的にはあまりイメージないけれど、この作品を聴く限りではアメリカ系というよりもヨーロッパな感じがする。オーレンの方はソロではドイツのレーベルから何枚か作品をリリースしているらしく、このヨーロッパ感にも納得。
 この日本盤にはアルバム曲全部のリミックスバージョンも入っててお得だし、じっくりとオリジナルとリミックスを聴き比べてみるというのも楽しいと思う。

Nina Simone / To Love Somebody

 ニーナ=シモン69年の作品。
 シンガーであり、ピアニストでもある彼女は一般的にはジャズの人というイメージがある。でも、歌の側面から観るとジャズとは言いきれない、かなり独特なシンガーだと思う。
 そんな彼女のこの作品はこの当時のポピュラーな楽曲ばかりを歌ったカヴァーアルバム。タイトルになってるのはビージーズの曲だし、ディランにピート=シーガーなど、フォークやロックを歌っている。
 ほとんどの曲の原曲をよく知ってるし、聴いてもいたのだけれど、やはりニーナが歌うと彼女の歌になっているところが素晴らしい。
 ジャズ的であり、ゴスペルでもあり、もちろんフォーキーだったり、ロックンロールだったりする。自分の歌や声をよく理解しているが故の彼女流アレンジがとっても粋だ。
 これぞカヴァー!って感じの作品。人の曲をどれだけ自分なりのフィルタを通して消化し、自分のものとして表現するかを分からせてくれる。

Todd Rundgren / A Wizard, A True Star

 トッド=ラングレン、73年リリースの4thアルバム。
 元祖、宅録の帝王だけあって、1人でこれだけの音の作り込み、しかも今から30年前の作品なのである。アルバム前半はノンストップで一気に12曲が続く。ホントにさまざまなスタイルのサウンドがちりばめられていながら、そのどれもがポップであるという、このセンスも凄い。1曲目の「インターナショナル・フィール」って曲がまず、この作品を凝縮して聴かせてくれている。2分51秒の中でめまぐるしく展開する。
 邦題がまんまの訳で「魔法使いは真実のスター」ってなってるんだけれど、この日本語の感じがまた好きだ。トッドはまさに音の魔法使いと言えるし。
 ホント、いろんな音を一気に聴けるし、面白い1枚だけれど、トッドの弾くピアノが物凄く好きだ。
 それまでスカ、レゲエ、ロック中心で聴いていた高校生の頃に、ポップさの革命をもたらしてくれた至極の1枚。

Robert Wyatt / Shleep

 ロバート=ワイアット、97年のアルバム。
 ソフト・マシーンやマッチング・モウル、そしてソロやいろいろなミュージシャンとの共演などを聴いているけれど、彼の作品ではこのアルバムが1番好きだ。
 何よりも声、そしてサウンドが童謡を聴いているかのごとく、優しい。フワフワの芝生の上に寝転がっている気分になれる。
 とてもたくさんの豪華なミュージシャンがこの作品に参加しているのだけれど、中でもブライアン=イーノとの1曲目は自分の中でのフワフワの定番曲となっている。あと、大好きなポール=ウェラーもヴォーカル、そしてギタリストとして参加し楽曲も提供している。
 全体的にワイアットなワールド!という表現がピッタリである。ジャジーだったり現代音楽だったりのアプローチも随所に見られるけれど、そんなことは考えずにただただ特にワイアットさんの心地よい高音な声に耳を傾けてのほほんと聴いていたくなるすばらしい1枚だ。

Museum Of Plate / Offer

 ピアニスト、塚本サイコのユニットである、ミュージアム=オブ=プレートの96年の1stアルバム。
 この1stの頃はまだバンド形式で6人編成。ピアノとホーンのシンプルで美しい音色がとっても心地よい。特に4曲目の「Sunny Day」が大好きだ。ギターのカッティングのミニマムな上にホーンが壮大な感じで重なってるのがいいし、ピアノソロがまたいい。あと、ヴォーカルの高音で細い声が素敵だ。
 アルバム全体でとてもフワフワしてるし、かなり聴き込んだ作品でもある。塚本サイコの演奏はピアノだけを聴いていると、重たいというか、結構派手に激しく弾いてたりするのだけれど、それを感じさせない楽曲全体の雰囲気がある。プロデュースも彼女自身なので、その辺りも考えられているみたい。
 この1st以降はピアニスト的な作品が多い。クラシック的というか、現代音楽的というか。それはそれですごくいい。彼女は以前表参道でカフェやってたりもした。

Jim O'Rourke / Eureka

 ジム=オルーク、99年のソロアルバム。俗にシカゴ音響系なんて言われてる中の中心人物だということであるが、確かにやってることは幅広いし、音も大好きだ。
 結構彼の作品は聴いているけれど、やはりこの「ユリイカ」が1番好き。フワフワ度、ポップ度と聴きやすいし、ジム自身が初めてヴォーカルをとった作品なのだけれど、歌が渋い。
 ジャケットの友沢ミミヨの絵は「なんじゃこりゃ!?」的だけれど、これもジムの遊び心故の演出で今となってはしっくりきてると思う。
 泣きたい位の嬉しさに襲われる、聴いててとっても心地よい作品だ。この表現がホントにピッタリ。