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sutero choice sound selection

Albert Ayler / Greenwich Village

 サックス奏者、アルバート=アイラーの67年インパルス第一弾となる作品。
 アイラーといえば、64年の「Spiritual Unity」がやはり素晴らしいし名盤だ。それと並んで名盤なのがこの「グリニッチ・ヴィレッジのアイラー」である。この作品で1番のお気に入りは実はジャケットなのであるが・・・。サイケ系ジャケの個人的ベスト2の1つ。もうひとつは13th Floor Elevatorsの1枚
 音であるが、テクニック云々よりも魂を聴けという感じ。1曲目はコルトレーンに捧げたナンバー。ちょっとミニマム的に聴ける部分もある。2から4曲目は繋がってはいないけれど、アメリカ南部を連想させる音だ。
 しかし、フリー系を聴いたことのない方にはススメにくいのも事実。メロディっていうより魂の叫びだからね。でもフリーの中では聴きやすい作品でもあると思う。
 アイラー初心者さんには上にあげた「Spiritual Unity」か、「Goin' Home」という黒人霊歌作品がいいと思う。
Live In Greenwich Village: The Complete Impulse Recordings

Sadao Watanabe / The Girl From Ipanema

 渡辺貞夫の67年のセクステットによるボッサ作品。
 彼の名前はよく知っていても、その細かい初期の活動まではそれほど知らない方が多いのではと思う。まずはチャーリー=パーカーの再来と言われ、そのサックスプレイの凄さで世界を魅了する。この頃の彼のアルバムのジャケ写の顔はとっても鋭い。で、渡米して音楽観が広がり南米、特にブラジル、ボッサに魅せられていく。
 日本に最初にボッサを紹介したのはナベサダです。60年代後半から70年代にかけて、結構ボッサアルバムをリリースしている。何度もブラジルを訪れて録音も。
 で、この作品だけど、アルトサックスとフルートでとってもクールなボッサを聴かせてくれている。タイトルである「イパネマの娘」では口笛にスキャットも披露しているし。あと、「男と女」のボッサヴァージョンもキレイだ。
 現在も現役で活動を続けているし、最近は文章や写真をやったりもしている。ナベサダを見ると元気になれるし、演奏を聴くと心地よくて爽やかな一時を過ごせる。

Todd Rundgren / A Wizard, A True Star

 トッド=ラングレン、73年リリースの4thアルバム。
 元祖、宅録の帝王だけあって、1人でこれだけの音の作り込み、しかも今から30年前の作品なのである。アルバム前半はノンストップで一気に12曲が続く。ホントにさまざまなスタイルのサウンドがちりばめられていながら、そのどれもがポップであるという、このセンスも凄い。1曲目の「インターナショナル・フィール」って曲がまず、この作品を凝縮して聴かせてくれている。2分51秒の中でめまぐるしく展開する。
 邦題がまんまの訳で「魔法使いは真実のスター」ってなってるんだけれど、この日本語の感じがまた好きだ。トッドはまさに音の魔法使いと言えるし。
 ホント、いろんな音を一気に聴けるし、面白い1枚だけれど、トッドの弾くピアノが物凄く好きだ。
 それまでスカ、レゲエ、ロック中心で聴いていた高校生の頃に、ポップさの革命をもたらしてくれた至極の1枚。

Nusrat Fateh Ali Khan / The Last Prophet

 パキスタンのカッワーリーの巨匠、今は亡きヌスラット=ファテ=アリ=ハーンの94年の作品。
 カッワーリーとは南アジアで成立したイスラム神秘主義系スーフィズムの音楽。これだけ聞くと、ちょっと怪しい宗教音楽!?って思う方もいるかも知れないが、ともかく彼の声を聴いて頂きたい。
 アコーディオンとパーカッションに、ヌスラットを中心とする男達のハーモニーにヤられてしまう。高音で魔術的でもある歌声はホント独特で初めて聴いた瞬間に大好きになってしまった。
 何枚か彼の作品をもっているけれど、このアルバムの1曲目である「Maki Madni」が1番のお気に入りだ。ホントに現地では宗教儀式などで歌い踊っているらしいけれど、音だけでも充分に迫力があるし、素晴らしい。
 彼はかなりイイ体格をしておられるが、この声量を聴けば納得してしまう。ホント97年に急逝してしまったのが残念でならない。
 余談だが、タモリもフェイバリットなアーティストの1人として彼を絶賛している。

L. Subramaniam / Global Fusion

 インド人バイオリニストであり博士でもある、ラクシュミナラヤーナ=サブラマニアムの99年の作品。
 胡弓や琴、スパニッシュギターにパーカッションなど、世界のさまざまな楽器や音楽と彼のバイオリン、そしてインド音楽を融合させて楽曲を作ろうという、実験的なアルバム。
 さすが博士号取得者だけにとても考えられた作品だとも思うし、単に研究材料としての音楽に留まっている訳ではなく、音楽家として素晴らしい楽曲を作り、バイオリニストとしてプレイするという、何とも深いアルバムである。
 これまで、音楽ジャンルとしての「フュージョン」という部分には曖昧な見解だったけれど、この作品ではタイトルにもなっているし、本当の融合というのはこういうことだな、と納得できる音である。
 弓で弾く弦楽器系と声のフワフワした音に、ピックや指で弾く歯切れの良い音、そしてパーカッションなどの打楽器のリズミカルな部分が何とも心地よい音色となって流れてくる。久々に聴いたけれど、ハマるわ。

Jaco Pastorius / Jaco Pastorius

 ジャコ=パストリアス、76年の1stリーダー作。No.67のメセニーのアルバムでジャコがイイ!って言ってたんで、彼の1stであり、大好きなアルバムを。
 これだけベースという楽器の存在感に溢れている音はない!ってくらいにベースを感じ取れる作品だ。1曲目の「Donna Lee」っていうバードの曲なんかはよくベースで弾いているとは思えない、なんてコメントを目にするけれど、逆にこれが本来のベースの音色なんだと主張している音だと思う。
 これ聴くとハードロックなんかの単調で早いだけの音はつまらなくてしょうがない。元々ジャコを知る前からうねるベースラインが大好きだったから、まさにド真ん中のストレートって感じに耳に飛び込んでくる。うねりだけではなくて、スピーディーだし、メロディアスでもある。
 ベース好きならば定番中の定番だと思うんで、ここはリズム隊系の音をあまり意識したことのない方々に聴いて頂きたい。間もなく意識改革がなされること間違いないでしょう。

Pat Metheny / Bright Size Life

 パット=メセニー、75年の1stアルバム。
 元々、メセニー的なギターサウンドはあんまり好きではなくて、オッサン御用達的なマイナスイメージを持っていた。それが変わっていったのが、タイトル忘れたけれど、グラミー賞を受賞した映像作品のヤツ。とにかくすさまじいパワーをその映像から感じ取って、これは聴かにゃいけん!と思った。
 で、これまたメセニーも作品が沢山あるから1stから聴けってことで、この作品。この作品の凄いところはメセニーもなんだけれど、やっぱりベーシストが大好きなジャコ=パストリアスってことかな。あとは好きなレーベルであるECMだしね。すぐ前に紹介しているNo.6266もECMです。
 音だけど、リズム系がいい。ジャコのうねるベースもECMっぽくもありつつ。もちろんメセニーギターも最初から相当キている。頭を振りながら必死に弾く様が想像できるようなプレイだ。
 ジャズじゃないな・・・。フュージョンでもなし。メセニーの音をしてる。聴きやすさでいうと、最近の作品の方がいいと思う。モロジャズな作品もあったりするんだけどね。個人的にはこの1stがイチ押しでございます。

Chick Corea / Return To Forever

 チック=コリア、72年のアルバム。
 フュージョンとして扱われることの多いこの作品。だけど、そうは思ってない。フュージョンという定義が自分の中では曖昧だし、ジャズの人の次のステップみたいな扱われ方が初期にはあるような気もするし。
 なんとなくだけどアバンギャルド的かな。自分の言葉で言えば「エレピが凄くカッコよくて鋭いが気持ちいい系」というような感じになる。
 エレピ・フルート・うた、この3つが心地よく絡んでいる。ブラジルの歌姫、フローラ=プリムの歌やコーラスがまた素晴らしいし。フリージャズのような即興的にいい意味で狂ったようなフレーズがあったりでそんな部分はまさにツボだ。
 やっぱりチック=コリアは演奏が上手いね。この作品が彼のアルバムの中で一番好きだけれど、スタンダードなナンバーを弾いてもとってもいい感じだし、キレイだ。

Solomon Ilori / African High Life

 ブルーノート4136番となる63年のソロモン=イロリのリーダー作。
 ここでブルーノート作品を紹介するのは初めてだけど、ジャズといえばブルーノートっていう位有名であるし、大好きなレーベルだ。しかし、ある意味1番ブルーノートらしくない作品を最初に持ってきた。ざっくり言うとこの作品はジャズではないからだ。
 アフリカンである。それも濃いよ!だけどフワフワもしている。A面が歌モノでB面が楽器サイドに別れてる。特にA面の歌がイイ。ソロモンの呪文の様で儀式!?みたいな歌声がクセになるし心地良くさえ感じられる。「Ise Oluwa」という曲がフェイバリット。DJ時代の御用達の1曲でもある。
 4100番台といえばブルーノートの第2黄金期で有名なジャズマンの名盤が溢れるラインナップなんだが、こんな異色を放つ作品もあるんである。だからこそ、逆に最高の名盤であり、最もジャズな1枚と言いたい。世間では珍盤扱いでほとんどのお店には在庫してなかったりするんだけど。そんな影に隠れてる具合も好きだったりするんだけどね。

Don Drummond / 100 Years After

 ジャマイカのトロンボーン奏者、ドン=ドラモンドの死後にリリースされた、アンソロジー的アルバム。彼の死が69年だから70年代初め頃にリリースされていると思う。詳しいことはよく知らないのであるが。
 No.20でも紹介したジャッキー=ミットゥと共にスカの元祖であるスカタライツのメンバーである。実はスカタライツ関連で初めて買ったレコードがこの作品。新品なのにジャケットはヨレヨレ、盤の中心の穴もずれてるし、盤面も砂でザラザラという、いかにもこれがジャマイカ盤!という最初の洗礼を受けた作品だ。
 しかし、この版画のようなジャケに思いっきりこもってる音にはシビれた。確か高校1年生の時だ。レコ屋の店員に「お兄ちゃん、若いのに渋いとこつくね〜。」と嬉しそうな顔で言われたのを覚えている。
 音は悪いんだけれど、彼のトロンボーンはすこぶる上手い。ブロウしてるところはホント震える!サラ=ヴォーン曰く、「世界一のトロンボーン奏者」とは納得だ。
 アルバムタイトル通り、100年後に聴いても素晴らしさは変わらないだろう。

Nona Reeves / Animation

 ノーナ・リーヴス99年のメジャー最初となる3rdアルバム。
 最初に彼らのPVを観た時に「小さいオッサンが歌ってる」という感想だった。失礼な話だけれど、ヴィジュアル的には少々ツライ気がしてしまった・・・。
 だけど、サウンド的にはとってもポップでキャッチーだし、聴きやすい。リリースされてから4年ちょっと経っているけれど、常によく聴くリストの中に入っている。
 元々、英語詞の曲がほとんどだったけれど、このアルバムから日本語の曲が半分以上になっている。1番好きなのは11曲目の「フォーティー・パイ」。このアルバム中一番古い曲で英語の歌詞でとってもフォーキーなナンバー。CM曲としても使われてたことがある。
 ライヴは観たことがないのだけれど、3ピースバンドの元気の良さというか、勢いがイイらしいんで、観てみたい。アルバムではホーンやシンセ、その他プログラミングなども使用されていて勢いがあるのと共に、スケール感もある。聴いていると飽きないし、元気になれる、そんな1枚。

Keith Jarrett / Facing You

 キース=ジャレット、71年の1stアルバム。
 彼のアルバムは大量にあって、ちょっと聴いてみたいなぁと思った場合、どれを聴けばいいの?ってなると思う。そういう場合は大抵75年の「ケルン・コンサート」なんかをススメられる。しかし、「迷ったら1stから聴け!」を勝手に信条としている身として、この「フェイシング・ユー」を彼の作品として最初にちゃんと聴いてみた。
 ピアノソロの作品としては全てのアーティストを含めて1番好きなアルバムだ。最初にレコードに針を落として音が飛び出して来た時の衝撃は今も忘れられない。メロディ、リズムと今までに聴いたことのない音だった。ビックリするのと同時にカッコよくて仕方がなかった。
 このアルバムはスタジオレコーディング。キースの作品と言えば、上記のケルンをはじめとするライヴの即興演奏の素晴らしさが語られるが、こやつはスタジオでの、ライヴに比べるとある種予定調和ともいえる雰囲気の中で、それを打開すべく思いっきりプレイしているように感じられる。
 それと、個人的にライヴ作品よりも普通のレコーディング作品が好きだというのもある。ライヴはその場で体感したいし、できない場合ならば映像が欲しくなる。
 彼は元々マイルス=デイヴィスのコンボで注目を集め、満を持して発表されたのがこのアルバム。当時も注目されていたし、名盤だとの声の多い作品でもある。

Funkadelic / Let's Take It To The Stage

 ファンカデリック、75年の7thアルバム。
 ファンカといえば誰しもが1stをあげるのだけれど、今回はあえて、7枚目のこの作品をオススメする。もちろん1stは当り前のように名盤である。しかし、どファンクという観点からするとこの作品は外せない。
 1曲目からゴリゴリです。とにかくすんげえ気持ちいい。特にギターですな。普段は高音気味のカッティングとかが好きなのだが、ファンカサウンドでは中・低域が強調されたリフやカッティングが恐ろしくカッコイイ。
 DJやってた頃のマストアイテムでもあった。ファンクと言えば1にも2にもこやつの登場無くしてはあり得な〜い、ニャニャニャナーイ、トゥモロー・ネバー・ダイ、なのだ!!
 P-ファンク的には、ほぼ同じメンバーであるパーラメントの方が好きなんだけれどもね。ファンカデリックはファンク!で、パーラメントは静寂のグルーヴ!っていう感じで。
 しかし、どっちもイイのは確かである。

Ben Folds Five / Ben Folds Five

 ベン=フォールズ=ファイブ、95年の1stアルバム。
 確か、ドラマのロンバケの中でキムタクか山口智子がライヴに行くのか曲を聴いてるシーンがあって日本で大ブレイクしたんだと思う。このドラマ観てないから知らないんだけど。レコード屋にいた時に「ロンバケでかかってたバンドの曲ありますか?」って毎日のように聞かれてたから知ってるんである。
 さて、ブレイクした経緯はともかく、ギターレスでピアノメインの3ピースバンドとして極上にカッコイイ音であるのは確か。またベンの飛び跳ねるようにピアノを弾くライヴでのパフォーマンスとサウンドがピッタリだし。激しいんだけどキュンと来る切なさというか泣ける感じもあってとってもいいのだ。
 最近CMで1曲目の「ジャクソン・カナリー」が流れてて、久々に聴いて、やっぱりカッコよくてアナログを引っ張り出して聴いてみた。アナログで聴く音をしておる。イイ。
 名曲である6曲目の「アンダーグラウンド」でまた泣けた。

Stevie Wonder / Talking Book

 スティーヴィー=ワンダー、72年の作品。彼の黄金時代とも言える、70年代のスティーヴィーソウルの幕開け的1枚。
 全曲イイです。それでもやはり思い入れが強いのは「You Are The Sunshine Of My Life」ですな。邦題で「サンシャイン」。いろんなところで流れてたり使われたりしてて、聴いたことある方も多いはず。しかし、大部分で使われてるのはシングルヴァージョン。ホーンが絡んでるヤツ。このアルバムヴァージョンはホーンが無い分、シンプルでエレピとパーカッションの音がハッキリしてて好き。
 ともかくアルバム通して素晴らしいんで全部聴いて欲しいというのが本音。
 ちょっと話がそれるけれど、「ハイ・フィデリティ」というシカゴの中古レコード屋を舞台にした恋愛映画があるんだが、これがレコード屋出身の人間には本題以外の部分で共感できる部分が多々あって面白い。で、エンディングがこのアルバムでもラスト曲である「I Believe」でジンと来る。まあ、この映画がかなり面白いっていう部類の人はかなりの音楽オタク系でもあるが・・・。
 是非、アルバムとセットで映画も観てみて欲しい。
Talking Book

Sly & The Family Stone / There's a Riot Goin'On

 スライ&ザ・ファミリー・ストーンの71年の名盤。
 ジャケがアメリカで発禁になったり、タイトル曲の「暴動」が6秒の無音だったりと話題性もありつつ、サウンドも彼らの最高傑作といわれるアルバム。ファンクといえば、この作品といわれたりもするけれど、個人的にはこれだけクールなソウルは他に無いと思う。
 特に「Runnin' Away」は最高に心地よいナンバー。初めて聴いた高校生の時から変わることのないベスト1な曲。
 スライやPファンク系やスカなんかの繰り返されるギターのカッティングが気持ちいいし、自分で弾く場合においても根本にあるのがわかる。
 このアルバムはタイトル曲であり無音である「暴動」を挟んで前半と後半でグルーヴ感がほんのちょっと違うのだけれど、最初の頃は前半がとっても好きだった。しかし、今は後半部分、特に「Runnin' Away」のある最後あたりの感じがイイ。
 どんな音楽が好きな人でも聴いておいて損はないアルバム。